第三一一食 小椿ひよりと親友の話③
★
「(そんな
冬休み明けの午前八時四五分。いつもあの子と待ち合わせをしている交差点で
「(隣のお兄さんの部屋に行く、とか言い出した時はとうとう悪い男に
今年――もう去年だけど――の春、初めてあの子の口から彼・
なにせあの調理実習の日から数えて丸三年以上も
だから驚いた。そしてまず間違いなく、年上の大学生に
まあ結局のところ、それも
「(
それでも私に言わせれば、
でも夏休み前後、あるいはそれよりもっと前から
「(あの子にはなにかと手を焼かされてきた分、その成長を寂しく感じちゃうのか……もしくは単純に、大事な親友を他人に取られたような気分になってるだけか……どっちにしろ、ろくなもんじゃないな、私)」
「(だけどやっぱり、ちょっと寂しいな……)」
マフラーに鼻を
「うーっ、やばいやばいっ、遅刻しちゃう……ってあれ!? ひ、ひよりちゃん!? な、なんでここにいるの!?」
「ひま……」
息を切らしながらもきちんと左右を確認し、横断歩道を渡ってくる彼女・
「今日はもしかしたら遅くなっちゃうかもしれないから先に行ってってメールしたのに……も、もしかしてずっとここで待っててくれてたの!? わっ、ひよりちゃんの手、冷たっ!? ご、ごめんね、寒かったよね!?」
「いいよ、別に。私が勝手に待ってただけだから」
手袋を
「というかあんた、パン
「あ、あはは。実は色々あって朝ごはん食べる時間がとれなくて……そしたら
そう言って
私は食いしんぼうの親友が最後の一枚を袋から取り出す様子を眺めつつ、ふと疑問に思ったことを口にする。
「珍しいじゃない、あんたがごはんを食べ
「あ、えっと……じ、実は帰ってきたのはついさっきで――」
「!? 朝帰りってこと!? ま、まさかあんたら……!?」
「ち、違う違うっ、ひよりちゃんが考えてるようなことはなにもしてないよっ!? ……お兄さんと一緒の布団で寝たりはしたけど」
「それなにも違わないじゃない!」
「違うって!? ほ、ほら、そんなことより急がないと始業式、始まっちゃうよ!」
「あっ!? こらひま、逃げるな!?」
〝なにか〟を思い出して頬を
「待ちなさいひま! いったいどういうことか説明しなさいっ!」
「ひ、ひよりちゃん顔が怖いよっ!? 後でちゃんと説明するからあっ!?」
「今しなさいっ! 付き合って二週間でそんなことするような子に育てた覚えはないわよ!?」
「うわあんっ!? だから違うんだってばあっ!?」
周囲を
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