第三〇八食 恋人たちとデートの終わり
★
「それじゃあ母さん、もう行くよ」
「はいはい。気を付けて帰りなさいよ。まだ薄暗い時間だし、
「分かってるよ、普段から安全運転してるって」
午前六時半過ぎ。実家のリビングでエプロン姿の
昨晩の睡眠時間が短かった割に、青年のコンディションはいつも以上に良い。息子たちに合わせて早起きし、しっかりした朝食を用意してくれた母のおかげか、それとも下宿先で使っている安物と比較して上等な布団で眠ったからだろうか。あるいは――
「(真昼に抱き枕にされて寝たのが良かった、とか……? い、いやいや、まさかな……)」
電気ストーブの前でバイク用プロテクターの装着に
夕がそんな
「お母様、本当にお世話になりましたっ! 今度是非、私とお兄さんのアパートにも遊びに来てくださいね、たっくさんご馳走しますからっ!」
「あらあら、真昼ちゃんがお料理してくれるなら行かなきゃ損ね。じゃあその時こそは、うちの主人もご一緒させていただくわ」
「はいっ! ……あ、あの、本当に大丈夫ですか? お父様にご挨拶しないまま帰ってしまって……」
少女が気遣わしげな表情を浮かべたのも無理はない。というのも彼女は今回、夕の父・
真昼としては恋人の父親というのはもちろん、突然泊めてもらった身で
「気にしなくていいのよ。うちの人が真昼ちゃんに会いたがってたのは事実だけど、仕事で疲れてるみたいだから寝かせてあげて頂戴」
夕の父は昨日、日も変わる直前に帰宅し、
「こっちこそごめんなさいね、真昼ちゃん。せっかくわざわざ来てくれたのに、会えず
「そんな、
「は? 仕事で疲れてる俺を起こすかどうかで迷った……って?」
「い、いえ、こっちの話です。お兄さんのお父様とお会いするのは、次の機会までのお楽しみにしておきますね」
「ふふ、そうね。起きてきたらそう伝えておくわ。さあ、もう行きなさい。学校、遅刻しちゃうわよ」
日菜子に背を押され、階段を
「夕、くれぐれも
「その高校生と俺を同じ布団で寝させた人の言葉とは思えないんだが」
「真昼ちゃん、夕のことをどうか……どうか、お願いね。あなたに捨てられちゃったらこの子、もう二度と恋人なんて出来ないだろうから……」
「情けないことを切実に願うな」
「安心してください、お母様。私が息子さんのこと、一生幸せにしてみせますから」
「
自らの
「それじゃあ二人とも、またいつでも帰ってらっしゃい。風邪なんて引かないようにね?」
「……ああ」
「はいっ! お母様もお元気で! お父様にもよろしくお伝えください!」
真昼のその言葉を最後に、二人を乗せたバイクがゆっくりと動き出した。サイドミラー越しに見える日菜子が、最後まで後ろから手を振ってくれている。
「素敵なお母様ですね、お兄さん!」
「……そうかよ」
「はいっ!」
最初の曲がり
最高の初デートを終え、
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