第三〇二食 旭日真昼と大好きな彼
★
「真昼ちゃんは白ご飯、どれくらい食べるのかしら?」
「それじゃあ大盛りでっ!」
「あらあ、元気一杯でいいわねえ! 夕、ご飯は大盛り? それとも特盛り?」
「だからなんで
「なに言ってんのあんた、そんな筋肉の足りないひょろっこい身体して! さっき真昼ちゃんがお風呂入ってる間、『俺、真昼を
「っ!?」
「そんなこと
「いいからせめて大盛りにしときなさい、年下の彼女より食べる量が少ない男なんて情けないわよ!」
「母さんはこの子の
騒がしく言い争いながら、三人は数々の料理が並んだ食卓へ。並盛りご飯が置かれた手前の一席には日菜子、大盛りご飯がどどんと置かれた奥の二席に夕と真昼が隣り合って腰掛ける。
本日の夕食はご
「でも、本当に先に食べちゃっていいんですか? お兄さんのお父様、まだ帰られてないのに」
「あー、いいのいいの。こっちこそごめんね。うちの
「そこは普通に『春が来た』って言ってくれよ……」
「だから冷めないうちにいただきましょ。遠慮しないでたっくさん食べてね」
「は、はいっ」
日菜子の優しい笑みを見てほっとしたのか、真昼はこくんと頷いて
「母さんの料理食うのも半年ぶりだよなあ。今日はやたら
「失礼ね、気取ってないわよ。普段あんたとお父さんに食べさせてたのが手抜きだっただけ」
「それはそれでどうかと思うんだけど……というかポットパイとか
「あら、あるわよ? あんたがずっと小さい頃に一度。でもその時あんたが口の中ヤケドしちゃって、それっきりね」
「えっ、そんなことあったっけ? 全然覚えてないな、俺……」
「んもっ!? ほ、ほひいはんっ! ほっ、ほほはひほひほはん、へひゃふひゃほいひいへふへっ!」
「あーはいはい。分かったから、口の中にもの入れたまま喋らない」
「真昼ちゃん、今なんて言ったの?」
「『お兄さん、この炊き込みご飯、めちゃくちゃ美味しいですね』だってさ」
「よ、よく聞き取れたわねあんた……やっぱり、曲がりなりにも恋人同士なだけあるわ」
「! んへぇへひひぃ~」
「……く、食うか笑うかどっちかにしろよ、真昼」
「なに照れてんのよ、
食べ進めながら、三人は色々な話をした。
主に夕と真昼が出会ってからの話だ。どんなきっかけで出会い、どんな経緯で仲良くなって、どんな風に交際まで至ったのか。体育祭で食べたおにぎりが美味しかったことや、みんなで海へ行ったこと。真昼が告白を決意した時のことに、直近ではクリスマスに偶然お揃いのエプロンを交換したこと、等々。
それらすべてを真昼が嬉しそうに語って、日菜子がうんうんと
「はぁーっ、すっごく美味しかったです、お母様! ごちそうさまでしたっ!」
「ふふ、お
「えへへ、そうですか? でも私はお兄さんが私の作ったごはんを食べてくれてるところを見るの、大好きですよ!」
「ええ~、どこが? だってこの子、『腹が膨れるなら石でもなんでもいい』みたいなテンションで食べるでしょう?」
母の言い草に夕が「流石にそこまで言ったことねえよ」とツッコミを
「そんなことありませんよ。お兄さんは最初、私がまだ上手く出来なくて失敗しちゃったお料理をそれでも残さず食べてくれて、一緒にどこが駄目だったのか考えてくれて……そのおかげで今はお兄さんが『美味しい』って言ってくれる料理も増えたんです」
思い出すように瞳を細め、少女は続けて言った。
「私はそんなお兄さんと一緒にごはんを食べられることが幸せだし……そんなお兄さんのことがこれからもずっと、ずーっと、大好きです」
「……そっか。……ふふっ、愛されてるわね、
「……」
流れに任せてプロポーズも
「最近はお兄さんの方が恥ずかしがり屋さんですね?」
「……うるさい」
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