第二九五食 彼の故郷と聖地巡礼②
それから二人は市内のいろんな場所を見て回った。
「ここがお兄さんの通ってた小学校ですかっ! たしかにどことなくお兄さんが通ってたような雰囲気を感じますねっ!」
「いや小学校なんかどこも似たようなもんだろ、適当言うんじゃないよ」
「お兄さんがまだこぉーんな
「よりにもよって小学校の目の前で不審者みたいな顔すんな、
「昔はここに
「残念ですね……私も。お
「へえ、良い話じゃないか」
「はい、だから私、少しでもおばちゃんにお礼がしたくて……その次の遠足の時にお友だちみんなに頼んで、クラスメイト三一人全員でその駄菓子屋までお買い物しに行きました」
「どんだけ規模のでかい恩返し? 小学生の頃からコミュ
既に空き地となっている、かつては小さなタバコ屋があった商店街の一角。
「次はお兄さんの高校……そういえばお兄さんって
「どうしてって言われても……
「むう……もしお兄さんが中等部とか高等部に居てくれたらもっと早く出会って、お兄さんのこと『先輩』って呼べてたかも知れないのに」
「どのみち学校の中じゃ会えてなかっただろ。俺と君、四つ違いなんだから」
「あ、そっか。仕方ない、この野望は私が歌種大学に進学した時まで胸に秘めておくことにします」
「君が
「がーんっ!? ……あ、留年の可能性がまだ残って」
「ねえよ。というかそんなしょうもない野望のために俺の将来を不安定にすんな」
厳密には
「ボウリングにカラオケに、バッティングセンター! なんだ、楽しそうなところ、普通にあるじゃないですか!」
「逆だよ。言ったろ、これくらいしかないんだって。でもちょっと懐かしいな。中学の頃は学校でなにかの打ち上げするってなったら大体ここのカラオケに来てたよ。少ない小遣いでやたら高いサイドメニュー注文したりしてさ」
「打ち上げ……ちなみにその時って、女の子とかも居たりしました?」
「え? そりゃ学芸会の打ち上げとかなら、女子も半分くらいは参加してたけど……」
「薄暗い個室で、私以外の女の子と、楽しくカラオケ……? はーん、ふーん、ほーん……お兄さんの浮気者」
「なんでそうなるんだよ!? 意味不明な
彼の甘酸っぱい思い出がたくさん詰まって……はいないが、楽しい時間をたくさん過ごしたであろう複合アミューズメント施設。
これら以外にも二人は様々なスポットを訪れては、当時のことを話し合った。今はもう
中には
「……さてと、なんだかんだ最初の公園まで戻って来ちゃったけど、次はどうする?」
「うーん、もう思いつくようなところは全部まわっちゃいましたもんね……あ」
「ん? まだなにかあったか?」
「あっ、いえっ!? さ、流石にちょっと、まだ勇気が出ないですし……」
「……?」
もじもじと顔を伏せてしまった恋人に夕がきょとんと疑問符を浮かべた、その時である。
「あら? そこに居るの……もしかして夕?」
「へ?」
「え?」
突然そう呼びかけられ、夕と真昼は同時に声がした方を振り向いた。
そこに立っていたのは、買い物帰りと
「か、母さん!?」
「……え?」
すぐ隣で夕が驚きの声を上げたのを聞き、真昼は改めてその女性と青年の姿を見比べた。そしてその数秒後――叫ぶ。
「ええええええええええっっっ!?」
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