第二九二食 旭日真昼と行きたいところ①
★
「っはあーっ! やっと終わったーっ! いやー、ありがとーまひるん、おかげで今年は冬休み明け一発目から先生に怒られなくて済むよー」
「もう、
「あははー、まーまー」
長い苦行から解放されたことにより
「ってかごめんねー、まひるん。せっかくのお休みに押し掛けて時間とらせちゃってさー」
「ううん、気にしないで。どっちにしても今日はなにも予定なかったから」
「そうなのー? あー、そういえば来た時も『寝てた』とか言ってたねー。んふふー、さてはおにーさんが居ないから寂しくてふて寝してたんだー?」
「そ、そんなことっ……なくもないけど……」
朝のことを思い出し、もごもごと言葉を
自分のだらしない寝顔を想像してしまった真昼は微妙に頬を染めると、「そ、そうだ!」とあからさまに話題を変える。
「亜紀ちゃん、お夕飯はどうするの? 良ければ私がなにか作ろうか?」
「え? いいよいいよ、私お
「それどういう意味さっ!? わ、私だってお兄さんに負けないくらいお料理上手になったんだからね!?」
「はは、そんなまさかー。
「そ、そんなのもう昔の話だもんっ!?」
「あははー、冗談だってば、冗談ー。お昼もご
「あ、うん。たぶん今日も九時過ぎまでお仕事だろうし、ご飯作って待ってるよ」
「そっかー。なんか〝恋人〟って感じだねー」
「そ、そうかな、えへへ……」
照れ照れと後頭部に手を当ててはにかむ少女。夕がアルバイトの日に真昼が夕食の用意を担当しているのは随分前からそうなのだが、それでも恋人らしいと言ってもらえるのは彼女にとって嬉しいことなのだろう。
「恋人と言えばまひるん、今朝『まだちゃんとしたデートは出来てない』みたいなこと言ってたよねー? 冬休みももう終わっちゃうけど、お兄さんとどこか行ったりしないのー?」
「うん、実はこないだお兄さんにも同じようなこと聞かれてね? それで最後の日曜日、二人でお出かけしようかって話になってるんだ。私の行きたいところに連れていってくれるんだって」
「へー、そうなんだー? どこどこ、どこ行くのー?」
「えへへ、まだお兄さんにも伝えてないんだけどね――」
そう言うと真昼は、亜紀の耳元で何事かをごにょごにょと
「えっ……それおにーさん、『いいよ』って言うかなー?」
「あはは、どうだろうね? たしかにお兄さんはちょっと嫌がるかもしれないけど」
意外そうに見開かれた亜紀のまん丸な瞳を見返しながら、真昼が続ける。
「でも私は、ずっと前から一度行ってみたいって思ってたから」
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