第二三八食 クリスマスイヴと男たち①
★
最近になって、ようやく気付いたことがある。
俺は彼女――
初めは、これは恋心ではないのだと思っていた。俺の知る限り、彼女の周りにいる人間は皆彼女のことが好きだったから。時に春の
だが――気付いた。気付いてしまった。俺が彼女に対して
そうだ、俺が彼女を想う気持ちは〝本物〟なのだ。俺以上に彼女のことを想っている男などいるはずがない。そしてそれはつまるところ、俺以上に彼女を愛せる――幸せに出来る男はいないということではないだろうか。
繰り返そう。俺は旭日真昼のことが好きだ。
「なあ、自分の世界に
「……」
自分で染めているせいでいつもどこかくすんだ色味になってしまうらしい金髪の友人にそう言われ、俺――
場所は学校からそう遠くない位置にある少し大きな商店街。普段以上の活気で
言われるがままに現実を直視した俺は、これでもかと言うほど密着して腕を組む同年代の男女が脇を抜けていったのを背中で見送りつつ、呟いた。
「どうせいつの日か核戦争が起こるなら、今ここで起きればいいのに」
「なに
ぎょっとしたように声を上げた友人・
「なにが『最近になって気付いたことがある』だよ、中坊の頃から旭日のこと好きだったくせに」
「なっ……!? なぜそれを知っているんだ、リョウ……!?」
「なんで
「なん、だと……? で、ではなぜ旭日本人は気付かないんだ……!?」
「いや、それは
リョウは「まあそれはお前に限った話じゃなさそうだけどな」と言って、先ほど立ち寄ったファーストフード店で購入した飲み残しをずるずる
「つーか、そんな現実逃避するくらいならやっぱダメ元で誘ってみればよかったんじゃねえか? クリスマスデートとか」
「ぐ……し、仕方ないだろうが、旭日は
「それってたしか今日だろ? だったら当日は
「おいリョウ、お前今なにを察した?」
途端に申し訳なさそうな
「そうだよな、当日はあの人――
「ぐはあっ!?」
「あれから結構
「やめろ、それ以上言うんじゃないっ!?」
俺が耳を
「お前の前でする話じゃなかったよな、ごめん……でも実際、当日を空けてるのはあの人のためなんじゃないか?」
「そ、そうとも限らんだろう……ほら、たとえば
「あー、たしかにそれはあるかもな。それに話を聞いた限り旭日ってまだ片想いらしいし、本人がどうあれ
「なんだとっ!? あの男、旭日以上に優先すべき事柄があるとでも言うのか!? おのれ、そんな半端な気持ちで旭日から好かれやがって……許すまじッ!」
「お、落ち着けって、ただの想像の話だから」
激情を爆発させる俺と、そんな俺をどうどうと
「あれ? リョウくんと……ユズルくん?」
そんな声が横合いから聞こえてきたような気がした。「え?」と二人声を揃えて振り向くと、そこに立っていたのは太陽のような笑顔を咲かせる一人の少女――すなわち旭日真昼。
「こんなところで会うなんて偶然だねー! 今日は二人でお出掛け?」
そう
脳がショートを起こした俺に、旭日がきょとんと首を傾けたような気がした。
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