第二二一食 家森夕と揺れ動く気持ち①
その後、俺たちはなんだか微妙な空気のまま、
あれから微妙に口数が少なくなった少女はと言えば、変わらず
しかしながらやはり怖いものは怖いようで、途中俺がトイレに立とうとしただけでも泣きそうな顔で
そしてもうすぐ日も変わろうかという頃になり、ようやく真昼は自分の部屋へ戻ることを決心したのだが――
『お、お兄さん、ちゃんとそこにいますか!? 布団の場所、動かしてませんか!?』
「はいはい。ちゃんといるし、布団も動かしてないから……」
いくらなんでも俺の部屋で一夜を共に過ごすわけにはいかないし、真昼もそれを言い出すほど常識知らずではない。
さらに今日は布団まで、彼女の部屋寄りの壁にぴったりとくっつけられていた。ちょうど壁を挟んだ真反対側に真昼のベッドが置かれているからだろう、通話口の声と二重になって、隣室から彼女の声が薄く聞こえてくる。
『ぜ、絶対朝までそこにいてくださいね!? 絶対ですよ!?』
「分かった分かった。というか電話まで繋いでるのに、布団の位置まで指定する意味あるのか?」
『す、少しでもお兄さんが近くに居てくれたら安心できるじゃないですか! 私を雷から守ってくれそうですし!』
「もしそんなことが出来るとしたら俺凄すぎるだろ。相手は
そんなことを考えながら布団に転がっていると、電話の向こうからゴソゴソと
『――よし、と……お、お兄さん、ちゃんといますか?』
「! お、おう、いるぞ。ほら、もう早く寝よう。明日からまた学校だろ?」
『はい……う、うう、雷怖い……』
そんな少女の呟きを最後に、俺たちの会話が途切れる。もちろん互いの携帯電話が拾う呼吸や布団の音は流れてくるが、それ以外は静かなものだ。心なしか
真昼は頭の上まで布団を
『……お兄さん?』
「ん? ああ、いるぞ?」
『いえ、そうじゃなくて……その、さっきのことなんですけど……』
「さっきのこと?」
聞き返すと、隣室の少女はやや
『さっきは雷でうやむやになっちゃいましたけど……私が「誰でもいいわけじゃない」って言った後、お兄さんは何を言おうとしたんですか?』
「!」
少女の問い掛けに、俺は思わず言葉を詰まらせた。出来れば聞いてほしくなかったのだが……あの時の俺の態度は彼女から見ても不自然だったということなのだろう。
今になって
「……」
俺は一度、静かに
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