第二〇七食 お出かけデートとお弁当②
「よし、と。それじゃあ行こうか」
「はいっ!」
いつも通り二人で朝食を
肩や腕・足首などを簡単に回して準備運動をし、少女がヘルメットとプロテクターを装着し終えてから、青年が出発前の最終確認を行う。
「こないだちょっとだけ
「はい!」
「それから走行中はなるべく
「分かりました!」
ビシッ、と元気よく敬礼のポーズをとった真昼に、夕が「よし」と満足げに頷く。
「それと走行直後はマフラー……えっと、排気ガスを出すところがめちゃくちゃ熱くなるから十分注意してくれ。ガードを
「了解です!」
「あとは……って、これ全部昨日の晩飯の時にも話したばっかりだな。試運転でもなにも問題なかったんだし、これくらいにしておこうか」
心配性な自分が恥ずかしくなったのか、青年は頬を
「まあ今日は
「お兄さん……!」
「……ところで真昼さんや。話は変わるんだが……なんだい、その大荷物は?」
「え? あ、これですか?」
真昼は背負っている大きなリュックサックを指差し、そして「ふふーん」と得意そうに胸を張った。
「これは後でのお楽しみです! きっとお兄さん、びっくりしちゃいますからね!」
「今朝、ベランダの方からやけにいい匂いがしてたけど……もしかしてそれと関係あるのか?」
「そっ!? そそそ、それはど、どうでしょうかねっ!? わわ、私にはよく分からないですけどっ!?」
「お、おう……
相変わらず嘘が吐けない少女の意思を
「じゃあ、今度こそ行こう。後ろに乗ってくれるか?」
「は、はいっ!」
運転席に座った夕にそう言われ、真昼がやや緊張した
「お、おおぅ……! や、やっぱり自転車より高いです……!」
「ははは、そりゃそうだろ」
不慣れな少女ならではの感想に青年が明るく笑う中、どうにか乗り込んだ真昼がタンデムステップに足を乗せ――そしてそのまま、夕の腰に腕を回してぎゅうっとしがみついた。瞬間、青年の全身がガチッと
「え……あ、あの……真昼、さん……?」
「は、はいっ! な、なにか間違ってましたか!?」
「い、いや、間違ってるっていうか……な、なんでそんなにしがみついておられるんですか?」
ちなみに練習の時は軽く腰に手を回し、彼の動きに連動出来るようにしていた程度だったのだが……今の真昼は互いの身体が密着するほどに強く抱きついている。当然、発育途中の胸の膨らみが青年の背中に衝突し、そして互いに厚手の衣服越しだというのに、その存在と弾性をこれでもかと主張していた。
補足しておくと、タンデム走行において安全性を考慮するなら過度な密着は厳禁である。運転者の動きを
「す、すみませんっ!? そ、その……ちゃんとした道に出るんだと思ったら、なんか怖くなっちゃって……!」
「そ、そうか」
どこか震えた声で訴える真昼に、青年が「一回道路に出ておくんだった……」と先立たぬ後悔を
「……分かった。じゃあ今はこのままでいいから、
「は、はい! ありがとうございますっ!」
「よし、じゃあゆっくり行くからな。エンジン掛けたらあんまり声聞こえなくなるから、なにか伝えたいことがあったら肩でも叩いて知らせてくれ」
「わ、分かりました!」
真昼が答えると、静かな駆動音がバイクから響いた。ブルブルと振動が下半身から伝わってくる中、少女は両腕に込めた力をほんの少しだけ強くする。
「(恥ずかしいけど……
密着した背中から、彼の体温がじんわりと真昼の体内まで染み
こんなにぴったりくっついて、青年の方はなんとも思っていないのだろうか。それとも少しくらいはドキドキしてくれているのだろうか。顔を覆うヘルメットさえなければ、背中に頬を寄せて確認することも出来たのかもしれない。
「(えへへ……)」
初めてのバイクと彼の体温。緊張と
「本当に無防備すぎる……天然怖い……」――赤い顔をした青年が口内で
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