第一九六食 家森夕と自炊少女(?)②
改めて
そしてそれらを確認し終えたところで、俺たちはもう一度困惑の視線を
「なんで突然、こんなものを……?」
「わ、私にも分かりません……」
どうやら真昼自身、特に送り主――すなわち彼女の母親である
たしかに今の真昼は以前までのように自炊を――厳密には火や包丁を使う料理全般を――禁止されているわけではない。夏休みの
しかし、それはあくまでも
「なんだこれ……『真昼へ』って書いてあるな。お母さんからの手紙じゃないか?」
「あ、本当だ。ちょっと読んでみますね」
「ああ」
そういえば俺も一人暮らしを始めたばかりの頃、最初の仕送りに手紙が入っていたなあ、と一年半ほど前のことを思い返して目を細める。やはり親としては、離れた地で一人暮らしをする我が子を心配して送ってしまうものなのかもしれない――もっとも俺の場合は『一人暮らしだからって大学の授業サボるんじゃねえぞ』という
再度三つ目の段ボール箱の中身をちらりと見てみると、ネット通販で注文したものと
包丁は刃先が丸みを
俺の部屋に来たばかりの頃、自分の指の皮を
「……要約すると、お母さんから色々聞いたお父さんが『
「やっぱりそうなのか……な、なんでそんな怖い顔になってるんだ?」
「だって!?」
クシャッと紙の端っこを握り締めた真昼は、その内容をキッと睨み付けながら声を大にして言った。
「お父さんったら、まだお兄さんのことを疑ってるんですよ! 帰省した時に『お兄さんはそんな人じゃない』ってちゃんとお話したのに、お兄さんが私に――て、手を出すんじゃないかって思ってるんです!?」
「ぶっ!?」
「そんなことあるわけないじゃないですか! 失礼しちゃいますよ! そもそもお兄さんがそんな普通の男の人だったら、私はこんなに大変な思いをしなくて済んだんですからね、もうっ!?」
「はい、ごめんなさい……ってあれ? なんで途中から俺が怒られてるんだろう……と、とりあえず落ち着けよ、真昼」
客観的に見れば真昼の父親はなにも間違ったことはしていないし、むしろ人の親としては――たとえ男女云々の話を脇に置いたとしても――正しい判断をしていると思うが……しかし怒っている時のこの少女が
「まあ、いいんじゃないか? ないよりはあった方がいいに決まってるし……別に
「それはそうですけど……私はお兄さんの――す、好きな人のことを悪く言われてるみたいなところが嫌なんですっ」
「ア、ハイ」
こうも真正面から「好き」と言われてしまった場合、どういう反応をすればいいか分からないのは相変わらずだった。俺は「こほんっ!」とわざとらしい咳払いで照れを
「で、でもほら、俺が夜バイトの日も、自分の部屋なら好きなように料理出来るし……それにあの電子レンジがあればお菓子も色々作れると思うぞ? クッキーとかケーキとか、プリンとか」
「い、いくら私が甘い物大好きだからって、そんな簡単な誘惑に引っ掛かるわけが――って、あ」
「え?」
突然なにかを思い出したかのように怒りを
「そ、そうだ……ここでいっぱいお料理の練習をすれば……もっと……っぽく……」
なにやら
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