第一八〇食 うたたねハイツと変わりゆく関係①
★
寝起き特有のしぼしぼとした視界に、この一年半見続けている飾り気のない天井が映る。カーテンの隙間から覗く太陽の光と、ベランダかどこかでチュンチュン
「……朝か」
老人のように
そんな
「……」
「……? ……。……うわあああああっ!?」
――フローリングの上に
「まっ、ままっ――
昨日一悶着あったばかりの少女と寝起きから
「――って、あれ? 真昼じゃ……ない、ですよね?」
「あら……うふふっ、やっぱり分かっちゃうかあ。流石ね、〝お兄さん〟は」
瞳を
「これでも旦那から『黙って並んでるとたまにどっちか分からなくなる』って言われるくらいなんだけれど……ふふ、お見事よ、
「いや一一〇番ですけど。『不法侵入のお姉さんを逮捕してください』って」
「や、やだ夕くんったら、こんなおばさんに『お姉さん』だなんて口が
「その鍵はあなたの娘さんに預けてるんであって、あなたに使用権はないはずなんですけどね? えーっと住居不法侵入の刑罰はたしか、三年以下の
「そういえばこの子法学部だったわ!? や、やめてやめて!? この歳にもなって前科持ちなんて嫌ぁっ!?」
普段それほど熱心に講義を聞いているわけでもないくせに、ここぞとばかりに法律の知識を利用する汚い大学生。ならびにいい歳をしてわりと
「……それで、本当になにしてるんですか、お母さん」
「いえね、
「実の娘をパシリにするのはやめてあげてくださいよ……それで?」
「そしたらあの子、鍵を閉めずに出て行ったみたいだったから、『不用心ねえ』って思いながら玄関のところに置いておった
「はあ」
「あの子が夕くんの部屋の合鍵を持ってるのは知ってたから『ははあん?』と思って、せっかくだから
「つまり完全に
「せっかくだから」なんて軽い気持ちで犯罪を
昨日の昼の一件といい、謎の行動力がある真昼母に俺が引いていると、我が家のインターフォンがピンポーン、と来訪者を
「お母さんッッッ!! なに勝手にお兄さんの部屋に上がり込んでるのッッッ!?」
「はいぃ、ごめんなさいぃ……」
その後、母が娘から超特大のカミナリを落とされたことは言うまでもない。
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