第一六五食 冬島雪穂と本当の恋①
★
時を少しだけ
「あ、三人ともお疲れー」
一年一組の出し物であるたこ焼き屋の
冷房の効いた教室内には彼女以外のクラスメイトの姿はない。言うまでもなく、高等部に上がって初めての文化祭を見て回っているからだろう。おかげで貸し切り状態の教室を独占していた少女は、並べた椅子の上にゴロンと寝転がって携帯電話を
「……
そのだらけっぷりを見てひよりが疑いの目を向けると、少女改め
「ノルマのチラシなら一瞬で配り終わったしー、なんなら他の子の分もほとんど私が配ったんだよー? もうちょっと枚数増やしといても良かったかもねー」
「え、なに、アンタそんなにチラシ配りとか
「あははー、してないしてないー。それに上手いとか
「そうだった、
親友の少女と違い、〝自分が可愛いことを知っている女〟特有の小悪魔的笑みを浮かべた亜紀に、ひよりは呆れ半分で息を
「ま、そのおかげで思ったより早く売り切れになりそうだったよ。……代わりに私とか
「そんなこと言われてもー。まひるんと言えば、お兄さんたちってもう来てるのー? たこ焼き作りの練習の成果、ちゃんと見てもらえたー?」
「ああ、うん……」
「お兄さん」という単語を聞いただけでピクリとこめかみをひくつかせた眼鏡男子を無視し、ひよりは頷く。
「来てくれたは来てくれたんだけどね……でも練習の成果を見てもらえたかっていうと微妙っていうか、もっと他に衝撃的なことが起きたっていうか……」
「? なになにー、なにかあったのー?」
「……ひまのお母さんが来た」
「……なんだって?」
ひよりの口から飛び出した予想以上に予想外の言葉を受け、さしもの亜紀も思わず素に戻って聞き返した。
しかしその話を続けるより先に、突然彼女らの教室のドアがパァンッ! と勢いよく開かれ、その音に驚いた四人の意識は強制的にそちらへ奪われる。
「あっ、いた!? ちょっとあんたらどこ行ってたの!? 屋台にも体育館にもいないから探しちゃったじゃんかっ!?」
「ふ、
「
登場したのが友人の眼鏡少女だと知り、口々に文句を言う男子たち。しかし少女――冬島
「ビッグニュースよビッグニュース!
「なにその無駄に高いテンショーン……」
「いつにも増して様子がおかしいんだけど……一体なにを拾い食いしたのよ?」
「誰が拾い食いなんかするか! ――ふふんっ、でもいいわ! 今の私はとっても気分が良いから、どんな暴言だって許しましょうともさ!」
「やーい
「……」
「い、痛い痛いっ!? ど、どんな暴言も許すって言ったじゃんかー!?」
無言で亜紀にアイアンクローの制裁を加えてから、少し落ち着いたらしい雪穂はコホン、と一つ咳払いをして続けた。
「聞いて驚きなさい、モテない男どもと女ども――」
「誰がモテない男どもと女どもだ」
「
「同じ穴の
「私、少なくとも雪穂とひよりんの一〇倍はモテる自信あるんだけどー?」
「うるさいうるさーいっ!? この冬島雪穂さまはあんたら〝非モテ連合〟とは一線を画する存在へと
そう言うと、偉そうに腕を組んだ雪穂はこれでもかというほどその薄い胸を張り――そして真昼を除くいつもの
「私、冬島雪穂は――今日から
「「?」」
「……えっ」
「……はあっ!?」
それを聞いて男子二人がなんの話だと首を
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