第一五三食 家森夕と旭日明①
★
「んぅ~っ! なによ、
「わ、『
「(
真昼が文化祭の当番を終えるまで待ってから、俺と真昼と
時折その中から「ねえねえ、あの二人って
「――あ、あの、それでお兄さん」
「ん? な、なんだ?」
口の周りにソースを付けた母親にティッシュを差し出しながら、真昼が俺に聞いてくる。
「お、お兄さんはどう思いましたか?」
「え……そりゃあ、めちゃくちゃ若いし美人だし、俺もお姉さんなんじゃないかって思ったけど」
「お母さんの話じゃなくて!? わ、私たちが作ったたこ焼きの味ですよっ!」
「あ、そ、そっちか。うん、
「語彙力! お母さんと比べて端的過ぎませんか!?」
「ねえ真昼、聞いた聞いた? 『めちゃくちゃ若くて美人で素敵』ですって! もう
「お母さんはちょっと黙ってて! あとさりげなく褒め言葉を二割増しで受け取らないで!」
「(
実際に真昼の母親だと知らされた今でも、この二人が
俺が並んで座る二人を交互に見比べていると、真昼母がなにやらニヤニヤ笑いながら見返してきた。
「だけど真昼を見つけるよりも先に噂の〝お兄さん〟を見つけられるとは思わなかったわ。想像していたよりもずっと大人っぽい人ね、夕くん」
「はあ……ど、どうも」
「さっきから気になってたけど『夕くん』なんて気安く呼ばないでよ。わ、私だってまだなのに……」
なにやら真昼が小声でぶつぶつ言っているのをスルーし、続けて真昼母は俺の隣で肩肘をついている千歳に目を向ける。
「それに
「ぶーーーっ!? げほっ、ごほっ!? ななっ、なに聞いてるのお母さんっ!?」
「ハッ、あり得ねェっすね。誰がこんなドスケベ野郎と……」
「お前さっきの話根に持ってやがんな……? あのお母さん、さっき自己紹介した時も言いましたけど、俺と
「ふふ、冗談よ冗談。あんまりお似合いだったからつい。ね、真昼?」
「なんでそこで私に振るの!? ……で、でもお兄さん、今朝は『一人で行くよ』って言ってたのに、本当は千鶴さんと一緒に来てたんですね……」
「い、いや違うんだよ真昼、これには色々事情があってだな……」
なぜか浮気がバレた男のような釈明をさせられる俺。真昼はそんな俺のことを半眼で見ながらもぐもぐとたこ焼きを頬張り、お母さんはその隣でクスクスと口元に手を当てて笑っていらっしゃった。……なんとなく彼女からは
「でも夕くん、モテるでしょう? 大学の方には彼女がいるのかしら?」
「まったくモテませんし、彼女もいませんよ……そもそも大学に女の子の知り合いなんて、それこそ
「
「逆に聞くけど、お前は普段から青葉を〝女の子〟だと思って接してるか?」
「……ごめん」
「お二人ともひどいですよねっ!?」
この場にいないイケメン女子大生のことを気遣い、真昼が俺と千歳にツッコミを入れてくるが……そもそも普段から〝女の子〟として振る舞ってないからこそ、
すると真昼母は、たこ焼きのついでに買っていたペットボトルのお茶を一口含んでから「ふぅん、そうなの?」と
「でも大学二年生ってすごく楽しい時期でしょう? 夕くん、恋人が欲しいとは思わないのかしら?」
「ええ……? いや、欲しくないってわけじゃないんですけど……単純に相手がいないというか、出会いがないというか……」
「むっ……」
「……オイ、この無神経バカ」
「は? って
突然座っている俺の右足をなんの遠慮もなく思いっきりつねってきた千歳に抗議の声を上げるも、彼女は「うるせェよクソが」とだけ言って苛立ったように頬杖をつくばかりである。ひ、人のことを攻撃しておいてこのふてぶてしい態度、なんて凶暴な奴なんだ。肉食獣か、お前は。
そしてなんとなく千歳の視線を追ってみると、差し入れしたタピオカジュースをちゅるちゅる
「……ふふ、なるほどね」
俺がズキズキ痛む心臓を
「これはお母さん、一肌脱がなきゃいけないかしら?」
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