第一四九食 家森夕と歌種祭①
★
そんなこんなあって、あっという間に
「お、おお……うちの高校よりだいぶ
一般参加者の入場受付時刻から一時間ほど遅れて正門前にやって来た俺は、フェルトの花々やキラキラのテープで綺麗に飾り付けられたアーチを見上げながら呟きをこぼす。俺の出身高校の文化祭が大したことのない規模だったこともあり、この派手な入場門を見ただけでも少し圧倒されてしまった。
アーチの中心には〝歌 種 祭〟という大看板が掲げられ、門の奥には私服姿の学生や保護者と
「(さて……来たはいいけど、どうするかな)」
入場受付を済ませた俺は、入ってすぐの所にあった校内マップの立て看板の隣で携帯電話を取り出した。一応この後
「(いや……もしかして青葉の奴、先に
結局あれ以来、青葉が〝例の件〟について相談を持ちかけてくることはなかったのだが……おそらくアイツは
「(心配だが……でも
普段から馬鹿なことばかりするおちゃらけた女でも、それくらいは信用している。
「(どっちにしろこの人混みから探すなんて無理だし、向こうから連絡が来るのを待つしかないしな……)」
しかしその
もちろん
「(おっ、体育館で二・三年生が演劇とかやってるのか。これを
正直、文化祭で
とはいえ、文化祭の出し物にそんなことを言うこと自体が
というわけで、俺は校内マップをぱしゃりと携帯のカメラで撮影し、それを頼りに体育館の方へと歩き出して――
「ヒッ、ヒイィィィィィッ!? ごご、ごめんなさいっ、ごめんなさいィィィィィッ!?」
「!?」
――しかし、いきなり後方からひどく
「いや、こっちこそぶつかって悪かっ――」
「ほ、本当にすみませんッ!? 完全に俺たちの不注意でしたッ!」
「(な、なんだなんだ……?)」
状況的から察するに、どうやら舞い上がってふざけていた高校生たちが、誤ってあの人にぶつかってしまったようだ。俺の方からは相手の人物の後ろ姿しか見えないものの、染め抜かれた金髪にピアス、高級そうな革のジャケットを羽織っていることもあり、いかにも〝
「いや……だから別に怒ってねェ――」
「ご、ごめんなさいィっ!? お、お願いですから、命だけは、命だけは……ッ!?」
「聞けや。オレァ別に怒ってるわけじゃ――」
「ヒイッ!? こ、殺されるッ!?」
「だから怒ってねェっつってンだろうがッ!? ぶっ飛ばされてェのかテメェらッ!?」
「(いえ、今にも殺さんばかりの勢いなんですけど)」
キレながら「怒っていない」と言うその人に思わず心中でツッコミを入れる俺。
しかしたしかに、どうしてあの高校生たちはあんなに怯えているのだろうか? 相手の人は格好こそ不良のようだが、特別ガタイがいいというわけでもない……それどころか、まるで女性のように細身なくらいで――
「(……あれ? 金髪にピアスの……いかにも不良っぽい女? それに今の声……)」
まさか、と思い、改めて騒ぎの中心へと目を向ける俺。
ガリガリと金髪を
「……ったく、
「やっぱり
――楽しい文化祭には最も
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