第27話
「廸子、正直に答えてほしい。お前の直感が頼りなんだ」
「……はぁ」
「こっちの縦じまのトランクスと、こっちの紅色のボクサーパンツ、どっちがパンツとして強そうだと思う? どっちがより、攻撃力が高いと思う?」
「ぱんつにこうげきりょくをもとめるのはまちがっているとおもうの」
パンツマンにはパンツしか武器がない。
だから仕方ないじゃないか。
下半身防衛戦隊パンツマン。
彼らには、パンツしか武器が許されていないからしかたないじゃないか。
お前、パンツマン見たことないのか。
どのご家庭でも、お父さんが子供のために一度は変身する、下半身防衛戦隊パンツマンをご存知ないのか。
お前それ、人生の半分を損しているぞ。
GOGOパンツマン。いけいけパンツマン。
セクシーだぞラグジュアリーレッド。
汚れが目立たないブルートランクス。
生きてる証さブリーフイエロー。
見たことないぜシマパングリーン。
かっこつけるなよボクサーブラック。
いけいけパンツマン。みんなの股間を守るんだ。
GOGOパンツマン。はけはけパンツマン。
だぞ。
まぁ、即興で俺が造った歌なんですがね。
この名作詞感。玉椿町のキダタローとは俺のことかもしれませんね。ふふっ。
恒例のおふざけはともかく。
「親父がさ、風呂上がりにパンツ一丁でぶらついてたら、ちぃちゃんがそれを見ちゃってさ。パンツマンって誤魔化したら、それがまた受けちゃって」
「こどもはざんこくだなぁ」
「パンツマンシルバーはそろそろ体調的に限界なので、俺が二代目パンツマンにならなくちゃいけない流れになったんですよ。それで、まぁ、新しいパンツをね」
「けど、アタシにえらばせるひつようなくねぇ」
女の子の感性を信じてみたくって。
廸子の感性を信じてみたくって。
お前なら、きっと、最高のパンツマンを選んでくれる。
そう思ったんだよ。
うん、いつものセクハラなんだけれどね。
おとなしく、ユニクロとかで無難なパンツ選んでおけってもんだ。
こんなものはさ。
はーもうホント。うちの家族には困ったもんだよ。
ちぃちゃんもどんどん下品になっていくし。いったい誰が悪いんだか。
ぷんすか。
ぷんすかだよ、もう。
セクハラはいい加減にしないとだよ。
はい。ごめんなさい。(自戒)
「しっかし、最近のコンビニはあれね。パンツとかシャツとか靴下とか、すっげえなんでも揃ってるのね」
「まぁなぁ。あってよかったってものを売ってるのがコンビニだから。けど、昔の雑貨屋とかも、パンツとかシャツとか売ってなかったか?」
「んー、言われてみりゃそんな気もするけれどさ。けど、こんな今どきのデザインではなかったよな」
「それはな」
普通にスーパーとかで売っているのと遜色ないよな。
値段的には、向こうの方が割安感があるのは仕方ないとして、買うことにまったく抵抗のない仕上がりだよ。
むしろ、積極的に買っていきたい。
そんな感じさえするパンツだよ。
どうしてここまで、コンビニパンツ文化が発達したのか。
おそらく、日本社会の闇――ブラック――が関係しているのだろうな。
そう、ブラック。
ブラック社会が、悪いのだろうな。
悪の秘密結社、残業第二定時団の仕業なんだろうな。
許せん!!
「家にも帰れず、風呂にも入れず、仕方なく下着だけ着替えて次の日も仕事とか、なんかそういうの思い出しちゃうから、コンビニパンツってちょっと嫌だわ」
「……男はいいじゃん、そういうの、すぐに調達できて」
「……あっ」
そう言って暗い顔をする廸子さん。
彼女もまた、割と重労働の部類に属する、看護婦の仕事に従事していたのだった。
それこそ、夜勤なんて当たり前。
二十四時間働けるタフさを求められる。
そういう類の仕事をしている人間だった。
替えのパンツが必要になるようなピンチだって、仕事をしていた頃にはあったろう。しかし、彼女が嘆いた通り、コンビニで女物のパンツは売られていない。
何故だか知らないが、女物のパンツは、売られていないのだ。
くっ、なんてことだ。
こんな所にもまだ、女性の社会進出を妨げる、見えない障壁があっただなんて。
女性の社会参画を推し進めるためにも、議会は可及的速やかに、コンビニでの女性向けパンツの販売について、法案を可決する必要がある。
かもしれない。
「まぁ、ぶっちゃけ、本当にヤバかったら、男物を穿いたりするんだけどね」
「ゆめのないこといわないでゆずこちゃん。おんなのこのぱんつはせくしーなのかきゅーとなのか、どっちかじゃないとやだやだやなのぉ」
「気持ち悪いこと言ってんじゃねえよ。これが現実だよ。目を背けんなよ」
「分かった、つまりだ、女性が安心してパンツを買えるシステム。それを考えたならば、ノーベルパンツ賞ってことだな。よっしゃ、いっちょ、元システムエンジニアとしての知啓をお見せしようじゃないのよ」
「おみせしなくてよろしい」
女性のパンツを守るため。
彼女たちのビジネスシーンを守るため。
今こそ、このピンク色の脳細胞を活性化させる時だ。豊田陽介。
世界の女性の股間とパンツを守るんだ。豊田陽介。
お前なら、できる。
「整いました!!」
「いやなよかんしかしない」
「女性向けのパンツ自販機を用意します。それにより、人の目を気にすることなく、女物のパンツを買うことが可能。画期的なアイデア。特許取れる」
「とれねえ」
「さらに、生産者の写真を添付します。このパンツは私が使いました。これにより、男性でも女性でも、安心して気に入ったパンツを買えます」
「かえねえ」
なんでや。
割とメンズネットカフェでは人気のシステムなのに、なんであかんのや。
ちっくしょう、奥が深すぎるぜ、パンツ道。
パンツの道は険しすぎるぜ。
けど、千里の道も一歩から。
「とりあえず、このコンビニで試しにパンツ自販機置いてみない? 廸子の写真をつけてさ? 俺、二千円までなら出すよ?」
「ぼろいしょうばいだけどぜったいにいや。ふうえいほうにひっかかかるから」
ダメか。
◇ ◇ ◇ ◇
「パンツマンレディ参上!!」
「きゃっきゃ!!」
「……なにやってんだババアー!!」
いえにかえると、あねがぱんつまんれでぃー(とっぷれす)になっていた。
あねがぱんつまんれでぃーになっていた。
「千寿が、千寿がちぃちゃんが喜ぶなら、私がパンツマンになるって!! 親の私が、責任を持ってパンツマンになるって!!」
「そういことだ陽介!! あとはこの私に任せろ!!」
「任せられるか!! 人の親が、未亡人が、いい歳してなにやってんだ!!」
わがやのへいわはまもまれらた。
ありがとうぱんつまんれでぃー。
ありがとういちじのはは。
ははのあいはつよし。
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