激戦! 聖騎士団との死闘

第23話 黒刀との初陣

 神殿の外へと駆けていく。

 そして、欲望都市の様子が見えると俺は言葉を失った。

 空から降ってくるのは白銀の輝き。

 それが人が身に纏った鎧の輝きだとは一瞬気付かなかった。


「空からか。奇襲には打って付けなんだろうが……」


 忌々しそうに師匠が告げる間にも、蝙蝠の羽が付いた巨大な蟻みたいな怪物に抱きかかえられた白銀の騎士がまた一人欲望都市に降り立つ。

 あんな羽根で良く空を飛べると思ったが、羽ばたいていないので飛んでいる理由が良く分からない怪物だった。


 騎士を地上におろすと、怪物はすぐに飛び去って行くが、問題は白銀の鎧を纏った騎士の方だ。

 八名の騎士達は迫りくる戦士や兵士の攻撃を避けながら、剣を振い欲望都市を赤く染める。

 だが、以下に手錬であってもたった八名ではどうする事も出来ない筈だった。

 現に何人かは既に傷を負い、致命傷を負っている者もいた。


「あれは聖天教に選ばれた戦士、死なずの戦士、聖騎士……」

「……癒着が早い。私が見た連中より何倍も速い」


 師匠は唸るように呟く。

 そして、有無を言わさず赤刀を抜き放った。

 致命傷ではなかったけれど、傷を負っているのに何のためらいも感じられない。


「――垣間見えませんでしたが、過去に会っているのですね」

「黄衣の兵士がいただろう、あいつらがそうだった」


 師匠が斬り殺したかに見えた連中も死ななかったのか……。

 芦屋あしやって奴はそんなを研究をしていたのか……。


 白銀の鎧を着て銀色の髪を持つ、若い騎士が数人目を切り殺し、吹き飛んだはずの腕を再生させながら、俺達の方へとやって来る。


「色付きの刃……お前が顧問の探している戦士か」

「顧問? 矢面には立たないのが奴の主義か」

「ほざけ!」


 駆け寄ってくる合間にも腕の傷をすっかり再生させた銀髪の騎士が、怒りを露に駆け寄ってくる。

 師匠はいつもの構えを取り、迫る騎士を見据えたかと思えば、騎士に迫った。

 

「連中、くるぞ!」

「狙いは何だ! 邪神か! それとも……」


 赤い髪の女戦士、確かスクトの言葉にロズワグンが何処に向かうか迷うような発言をした。

 彼女にしてみれば、親も大事なんだろうが、俺が行く先は決まっている。

 間合いに入った瞬間に振り下ろされる師匠の一撃は、雷光のような速さだ。

 騎士は避けられないとでも判断したのか、上半身を防ぐ様に再生したばかりの腕が持つ盾を引き寄せた。

 一瞬火花が散ったかと思えば、赤い刀は騎士の身体を盾もろとも両断した。


 が、俺はそれに喜んでいる時間は無かった。

 既に二人目の騎士が、金髪の中年の騎士が迫っていたのだ。


「抜け! 黒の力を見してやれ!」

「そうは言うけども!」


 相対しただけで、レベルが違うと感じられる。

 所謂レベルじゃない、相手が何レベルでも関係ない、そう言う凄味が中年の騎士にはあった。

 だけども、やるしかない!

 俺が黒刀こくとうを抜き放つと、中年騎士の値踏みする様な視線ががらりと変わる。

 吐き気がしそうな程の殺気が、俺に向けられた。


「黒刀の使い手だと! 赤だけじゃなかったか!」


 怒気を孕むその声に気圧されそうだ……。


「まだ未熟、ここで殺して禍根を断つ!」


 はっきり言えば、俺は聖天教と直接敵対関係にあった訳じゃない。

 だが、黒刀を引き継いだ以上は、敵対せざる得ないだろう。

 何より、こんな所で殺されてたまるか!


「お前らの因縁など知るか! だけど、俺も死ぬ訳には行かない!」


 告げて、構えようとして迷う。

 刀って盾構えて片手で振って良いんだろうか?

 いや、師匠は片手でも切れるんだろうけど、ロングソードとかとは使い方が違うみたいだし……。

 

 迷う最中には、相手の中年騎士は既に構えていた。

 武器はいわゆるレイピアって奴か。

 細くて軽そうに見えるけど、結構重い武器を片手で振り回せるようだ。

 いや、まあ、精鋭なんだから当然か。

 突きが危険なのはもちろんだけど、実はあれが斬れるとはアビスワールドを遊ぶまで知らなかった。


「威勢は良いが経験不足だな!」


 構えを迷うなんて馬鹿な事をしてしまった俺の隙を見逃すはずもなく、騎士は一つ吼える。

 そして飛んできたのは吼え声ばかりじゃなくて、恐ろしい勢いの突きが俺の胸目掛けて放たれていた。


「おい! どうにかしろ! コイツを振る前に死ぬんじゃねぇ!」


 頭の中で黒刀が騒ぐが、俺はそれを冷静に聞いていた。

 恐ろしい勢いの突きだが、師匠の斬撃と較べれば、まだ遅い。

 トンボの構えから繰り出される一撃を見ようと師匠の修行を盗み見ていた俺は、大分色々と見える様になっていた。

 だから、胸を守るように盾を体に引き寄せたが、その先にも対応できた。

 俺の首元ギリギリで黒刀とレイピアがぶつかり合い火花を散らす。


「まさか! いや、色付きを振るうだけの腕はあるか!」


(危なかった……)


 冷や汗が背中を伝う。

 突きの筈が突然切っ先が跳ね上がり首筋を薙ぎに来た。

 胸狙いと感じて盾で胸から下を守っていたから、がら空きの首狙いの一撃に切り替えたのか?

 いや、切り替えたと言うよりは、最初から狙ってやがったな。

 レベル差がいくらあっても関係ないと言う様な凄味は、こう言う駆け引きを何度となく繰り返し勝ってきているからあるのか。

 アビスワールドよりも深く、それを考えて実行できることが凄味に繋がる。

 剣はただ振れば良いんじゃない、考えなきゃいけないって言うのは、こう言うことかと、死に直面して怖い筈なのに俺は妙に納得していた。

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