第295話 アンドロメイドー湊ー

「まったく!

 道が分からないなら最初にそう言え!」

「分からなくって当然だろうが!

 俺の持つ情報なんて、ここがゲームを元にした世界ってだけだぞ!

 テイファの方が探知能力は上だろうに!」


 コンテナの建ち並ぶ港湾倉庫エリアで、俺は赤いショートヘアの女性と口論混じりにロボットを壊して回っていた。

 病院のあった繁華街エリアから、自信満々で突き進んだテイファ。


「止めなかっただろ!

 私はユーリスが止めないから、道が合ってるんだろうなっと思っていた!」


 迫ってくる5体程度のストーカーをメイスで吹き飛ばしながら叫ぶテイファ。


「じゃあ自信を漲らせて突き進むな!」


 こちらも負けじとストーカーを斜めに両断して、破壊しながら文句を返した。


「鬱陶しいな。

 大して強くないのにワラワラと!」

「まったくだ。

 テイファは広範囲攻撃能力はないのか?」

「ない!

 私の特性が一点突破形だと知っているだろう?」

「知ってた!

 ダメ元!」

「なら良い!」


 会わない間に広範囲攻撃を習得していないかと期待したが無駄だった。


「そっちは!」

「ない!

 ……相性が悪い!」


 ハウリングを含めれば攻撃手段はあるが、相手は全身鎧を着たオーガクラスの相手だ。

 効果は見込めないし蜘蛛型で重心が低いので、ノックバックも期待出来ないだろうと推測出来る。

 なら大きく声を出すハウリングは、反って身を危険に晒すのみ。

 しかも、


「時々飛んでくる光が鬱陶しい!」


 テイファが自分の顔を目掛けて飛んでくる光をメイスで弾く。

 実際の所は、レーザーじゃなくて、熱線ビームだから、理屈としては可能なのは分かるが、非常識な身体能力と勘である。


「この領域に潜伏する射撃特化の人形ゴーレムみなとの攻撃だ。

 ……第一章でも屈指の鬼畜ゾーンだからな」


 自身に飛んでくるビームを、拒絶効果を持つ浮遊盾で反射し、近くのストーカーに当てながら応える。


「なるほど!

 納得だ!」

「……ヒロインを近接設定にすると、この湊がいるかいないかで難易度が格段に変わるんだが。

 その湊獲得も高難度。

 ……鬼畜ゲームだな」

「そうか。

 ちなみにどう攻略するんだ?」


 現状打開の糸口か?

 しかし、


「ヒントにはならんぞ?

 先程の病院付近にいる回復型のゴーレム可憐かれんで回復しながら追い詰める。

 ただし、近接設定で可憐獲得も難しいので、低難易度の射撃型を先に入手するのが基本だ」

「……そんなゲームを良くやる気になったな?」

「だから言ってるだろ?

 キャラクターゲームの皮を被った鬼畜ゲームだと。

 更に二章になるともっとヤバイがその情報は要らんだろ?」


 まさか、助けたヒトキャラクターの順番と構成が影響するとかふざけるなってレベルだった。


「そうだな。

 今必要なのは高い戦闘力だけだ!」

「ちょっ!

 危ないだろ!」


 メイスを地面に叩き付けて隆起。

 ストーカーの動きを阻害するテイファに、巻き込まれ掛けた抗議を投げる。


「ユーリスなら大丈夫だと踏んだが、問題なかったな!」

「そういう問題か?

 ……けどお陰で俺も思い付いた」


 視界の左右一杯に拒絶防壁を配置し、一気に挟み潰す。


「……おお!

 良い感じに視界が開いたな!」

「名付けて、如来合掌って感じかな?」


 感心するテイファ相手に、孫悟空を握って掴まえた如来の逸話から名を取りつつ、胸を張る俺。


「さて、湊とやらを探すか……。

 ……ユーリス。

 拒絶と拒絶がぶつかるとその間の空間はどうなる?」

「うん?

 高重力場になって……。

 ……なあ、テイファ。

 俺を運んでゆっくり逃げよう」

「大馬鹿者ーー!!」


 如来合掌の中心部に青白い球体が渦巻く。

 斥力場を解除しないように維持する俺を俵のように抱えて走り出す前世妹。

 扱いに文句はあれど、今は集中が大事で……。

 ……げ!

 テイファが先程巻き上げた石に気を取られた。


「ティーの馬鹿ぁぁ!」


 意図せず発生させた核爆発から、竜化して逃げる。

 並走して2竜が飛翔さまは、紅白で目出度いかもしれんが、やってることは無様ぶざまであった。

 ……今、俺黒竜だっけ?

 って! 今が使い時だろう!


「拒絶障壁フルパワー!」

「!

 助かる!」


 直ぐ様人化して俺の後ろに隠れるテイファを横目にただ抑え込む事に集中するしかない俺であった。

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