第110話 ドワーフと言う種族
さて、ファーラシア王家に各勇者子爵家とその嫁の実家。
ついでにマウントホーク辺境白家がやきもきしているレッドサンド王国との交渉だが、実はアッサリと終わっていた。
賠償金は占拠した街の年収1年分と戦争に際して使用した兵糧の分でそれらを支払えば、国境を戻して今まで通りの付き合いをしてくれると。
何故戦争の処理でこんなにアッサリと決まったか。
まず、終戦交渉の責任者が西部閥でレッドサンド王国の外交官とも親交のあるウエイ伯爵にオブザーバーで付いたジューナス公爵もいることが1つ。
次いでファーラシア国内の事情を当事者である外交省の役人から聞くことが出来た点。
ドワーフ達に怪我人が一切いない点も大きい。
開戦と同時期にレンター生存を聞いた西部閥は西部独立部隊と称して、レッドサンド王国に降伏。
ファーラシア王国軍との戦いで先陣を切ったのだ。
それにより結構な被害を出したが、レッドサンド王国軍への被害を未然に防いだ。
彼らは命懸けでドワーフから信頼を勝ち取っていたのだ。
最後に数の少ないドワーフとしては占拠している街の管理に人手を割くのが惜しかった。
彼らは鍛冶を好み、生涯自分の腕を磨いて死後に彼らが崇める鍛冶神ビルドの館へ招かれることを目標にしている種族なのだ。
…統治などと無駄な作業はストレスでしかない。
王族ですら、必要最低限の仕事しかせずに工房に篭っている。
今回、最も怒った原因とて、鍛冶の腕を磨くための材料費を抑えようとされたからだ。
彼らは酒と鉱石さえ与えておけば、陽気な良い隣人である。
では終戦が決まったのに一向に戦時下の状況が解かれないのは何故か?
相変わらずの主人公のやらかしである。
ユーリスが少しでも心証を良くしようとして渡した竜気充填済みのファーラシア王城の剣。
それを受け取ったドワーフ達はそれに大いに驚いて、終戦交渉の最後でゴネだした。
曰く、制作者に会わせろと。
「じゃから! これを魔剣に変えた相手に会ったらすぐ引き上げてやるっと言っとるだが!」
「「「「そうじゃ! そうじゃ!」」」」
今日も調停会議用のテントではレッドサンド国王とその腹心達が会わせろコールに明け暮れている。
「ですから、その剣を魔剣化したユーリス・マウントホーク辺境伯に後日レッドサンド王国を外遊するように依頼しますので…」
汗をかきながら必死に説得するウエイ伯爵だが、
「そいつはいつだぎゃ?
辺境伯っちゅうことは何処かの国との国境にはっつくでしょうぅ?」
ドワーフ王にそう言われては確約も出来ない。
「…出来るだけ早く実現するように依頼しますので」
「じゃから!
戦争を終わらせたかったら、そのマウントホークっちゅう辺境伯を連れてきんさいちゅうのや!
未来の戦争より今ん戦争だぎゃ?」
「陛下。私の顔に免じて後日と言うのは無理でしょうか?」
ジューナス公爵も説得を続けるが、
「こればかりはジューナス公爵の頼みでも聞けんでしょぅようぅ。
ええか?
これんと同じもん造るんは儂らでも出来るんだぎゃあ。
だっどもそれを造ったろ、思ったら飛竜だら地竜を数十殺らんにゃならんだぎゃ?
そんなん人が使ったら、竜どもん怨みで頭が吹っ飛ぶでよぅ。
比べてこっだら剣じゃ。
飛竜程度比べれんくらいの竜の力が入っちょるでしょうぅ?
だきゃ、どげんしたか訊いてみたいんだぎゃ!」
頑固で有名なドワーフが絶対に譲れないといっている以上はどうしょうもない。
「分かりました。
マウントホーク卿に来ていただけるように手紙を出します。
ですから軍を退いて、一部護衛だけ近くの街で…」
「無理言いなや!
こげん不可思議なもんみせられて、はいそうですかと帰れるドワーフはドワーフでなかよ?
この技法を頼めんなら、じぶんたぁの傑作にやってほしい思うんが当然だぎゃ?」
「無理を言わないでください。
マウントホーク卿が怒れば、いくらドワーフ軍が精強でも!」
顔を青ざめて否定するウエイ伯に手を前に出して制止を掛けるドワーフ王。
「わあっとるがね。
マウントホークちゅうんは竜のたぐいやろ?
機嫌を損ねる真似はせんがな。
マウントホークが気に入ったやるだけ、竜気を注いでや。
儂らはそれが見れれば満足だぎゃ!」
…こうして、ユーリスが訪れるまでドワーフ軍が居座った。
それは領地開発が進まなかったことに激怒したユーリスが王都からドラゴンになって飛んでくるまで続くのだった。
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