苻丕6  揺れ動く戦況  

慕容垂ぼようすいの息子、慕容驎ぼようりんが、

博陵はくりょう王兗おうえんを包囲した。

長らくの包囲により軍資が尽きたため、

城内の官吏のひとり、張猗ちょうい

城内の人間を引き連れ、慕容驎に内応。

博陵は陥落し、王兗や苻鑒ふかんは殺された。


一方の、晋陵しんりょう

苻丕ふひ王永おうえいを司徒、錄尚書事とし、

徐義じょぎを尚書令、加右光祿大夫とした。


益州えきしゅうを守っていた王広おうこう

成都せいとから関中に引き上げ、

兄である王統おうとうのもとに合流した。


長安ちょうあんが失陷すると、王広は

枹罕ほうかんにいた毛興もうこうを攻撃した。

毛興は衛平えいへいに子飼いの部下

1700 人あまりを連れさせ、迎撃させる。

衛平は野営していた王広軍に夜襲、

大破する。


王統が、そんな王広に援軍を送った。

体制を立て直した王広軍は枹罕に迫る。

対する毛興は城の守りを固めた。

が、直後には城から打って出、

王広を強襲。打ち破る。


破れた王広は

再び兄のもとに逃れようとしたが、

途中で隴西ろうせいにいた鮮卑せんぴ匹蘭ひつらんに捕まり、

姚萇ようちょうのもとに送られた。


王広を打ち破り、調子づく毛興。

この勢いのまま、王統も倒そうと目論む。

拠点確保のため上邽じょうけいに進撃、制圧。

だが快進撃もここまでだった。

枹罕で戦ってきた兵士たちは、

ギリギリの戦いを強いられてきた。

疲労困憊となり、これ以上の戦いなど

望むべくもない。


だというのに、毛興は

さらなる戦いを強要してくる。

そのため配下将らは毛興を殺害。

衛平を盟主として立て、

苻丕のもとに使者を飛ばし、

命令を乞うのだった。




先是,慕容驎攻王兗於博陵,至是糧竭矢盡,郡功曹張猗逾城聚眾應驎。既而城陷,兗及固安侯苻鑒,並為驎所殺。丕復以王永為司徒、錄尚書事,徐義為尚書令,加右光祿大夫。初,王廣還自成都也,奔其兄秦州刺史統。及長安不守,廣攻河州牧毛興於枹罕。興遣建節將軍、臨清柏衛平率其宗人千七百夜擊廣軍,大敗之。王統復遣兵助廣,興於是嬰城固守。既而襲王廣,敗之,廣亡奔秦州,為隴西鮮卑匹蘭所執,送詣姚萇。興既敗王廣,謀伐王統,平上邽。枹罕諸氐皆窘於兵革而疲不堪命,乃殺興,推衛平為使持節、安西將軍、河州刺史,遣使請命。


是の先、慕容驎は王兗を博陵に攻め、是に至りて糧竭き矢盡かば、郡功曹の張猗は城を逾え眾を聚め驎に應ず。既にして城陷つらば、兗、及び固安侯の苻鑒は並べて驎に殺さる所と為る。丕は復た王永を以て司徒、錄尚書事と為し、徐義を尚書令、加右光祿大夫と為す。初、王廣の成都より還りたるに、其の兄の秦州刺史の統に奔る。長安の守りたらざるに及び、廣は河州牧の毛興を枹罕に攻む。興は建節將軍、臨清柏の衛平に其の宗人千七百を率い夜に廣が軍を擊わしめ、大いに之を敗る。王統は復た兵を遣りて廣を助けしめ、興は是に於いて嬰城固守す。既に王廣を襲い、之を敗り、廣は秦州に亡奔し、隴西の鮮卑の匹蘭に執わる所と為り、姚萇に送詣さる。興は既に王廣を敗り、王統を伐たんと謀りたるに、上邽を平らぐ。枹罕の諸氐は皆な兵革を窘めど、疲れ命に堪えず、乃ち興を殺し、衛平を推して使持節、安西將軍、河州刺史と為し、使を遣わせ命を請う。


(晋書115-6_仇隟)




毛興の立ち位置がやや謎。この感じだと姚萇か呂光のいずれかに内応していた感じでしょうか。ありえるのは姚萇かなあ。大怪獣呂光とマッドピエロ姚萇とか、まぁひどい二択迫られてるもんですわ……。ともあれこの辺は姚萇伝か呂光伝に載っているのかもしれません。ちなみに呂光伝は中原争覇に絡むところだけをピックアップする予定でーす。劉裕に全然絡まないところは放置でーす。

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