第13話 忘れモノ

真昼の月の孤独をね

生き急ぐ僕等は過ぎていき

宵に苛む悲嘆をね

俯く僕等は見逃した

忘れモノがありますか?

それを幾つ憶えていますか?

指先の向こうが欲しくって

明日の先が知りたくて

あの日捕まえた一番星

その行方も、僕は知らない


何時かの絵本の結末を

僕が語れなくなった頃

集めた日々の宝物が

ガラクタに見えたんだ

君とつないだ手を翻し

霧散する涙、その軌跡に

世界の彩(イロ)を尋ねるよ

色合いを忘れた僕のココロ


涙も数え飽きたから

昨日を幾つ覚えていられる?

追いすがる強さを落とした頃

僕は大人になったでしょう

忘れモノはありませんか?

それも忘れてしまっていたから


澄んだ碧空の泣き声に

生き疲れた僕等は耳を閉じ

彷徨う白夜の哀切を

響かぬ僕等は拒絶したでしょう

忘れモノが見つかりましたか?

痛みを痛みと言えますか?

指先の向こうに望んだコトは

明日の先を信じたくて

たった一つの一番星

その行方を、僕はね…


子どもの愛した結末を

ホントは僕も愛したように

ガラクタと言われた日々も

こんなにも綺麗だと

好きなものを好きだって

君とつないだその手をとりたい

溢れだす涙と後悔に

僕はようやく追いすがれるから


失くしモノを数えよう

その涙を宝箱に

痛みを叫んだ極彩色の世界は

ねぇ、存外愛しくて


―嗚呼、僕は、忘れないよ

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