014

いや、違う。

まだだ、まだやることがあるんだった。


キッチンのシンクに置かれた大量の洗い物と、洗濯かごにぎゅうぎゅうに押し込まれた大量の洗濯物を見て、思わず大きなため息が出た。

それから明日もまたお弁当がいる。


「嘘でしょ…。」


漏れ出た言葉は虚しくも空を切った。


毎日こんな生活は無理がある。

そもそもなぜ私がすずの母親をやらなくてはいけないのだ。

姉はどこへ消えたんだ。

ていうか、父親は誰だよ。


ムカムカした想いの中、ハタと思い当たる節があった。

そういえば姉から聞いたことがある。

すずの父親はイベントコンパニオンで知り合ったベンチャーIT企業の社長だって。だから養育費はしっかりもらえると言っていた。


ん?待てよ?


私はすずのスーツケースに入っていた通帳を取り出し、パラパラと捲った。

毎月同じ額で振り込まれている欄に書かれた振り込み人の名前。


【シバハラケイスケ】


もしかしてこれがすずの父親なんだろうか。

私はすぐにパソコンを起動させる。

この名前とベンチャーIT企業ということだけを手がかりに、私は意地ですずの父親を探しだした。

というか、後で冷静になってすずの戸籍謄本を取ると、父親の欄にはしっかりと【柴原圭佑】と書かれていた。

姉が結婚していたのは本当だったらしい。

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