005

すずと大きなスーツケースを私に押し付けた姉は、あっという間にその場から消え去ってしまった。

追いかけようにもすずを置いていけないし、どうにもできなくて私は頭を抱える。


とりあえず、すずを家に入れてからスーツケースの中身を確認すると、すずの服やおむつ、おもちゃや絵本がぎっしりと詰まっていた。

そして傍らには銀行のカードと通帳。

恐る恐る中を開いて確認してみると、想像以上に大きな金額が入っていた。


これで私にすずを育てろと?


あまりの用意周到さに開いた口が塞がらない。

すずはスーツケースから絵本を取り出すと、

無邪気な笑顔で言った。


「ねえね。よんで。」


「うん、ちょっと待って。」


「よんでー。」


まとわりつくすずを軽くいなしながら、私は姉に電話をかけた。

けれどその電話は繋がることはなかった。


【お客様のおかけになった番号は現在使われておりません】


何度試してみても同じだった。

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