第465話 姉妹


 社会科見学を終えて、屋敷の戻り、風呂に入ってゴーメイさんが一人で用意してくれた夕食を食べ、そのあとはいつもと変わらず、めいめい好きなことをしてその日は終わった。


 翌日。増築部分の工事が始まるので、敷地内に杭が打たれ、糸が張られていった。


 シャーリーたちは学校に行き、六人はアスカの講義を受けている。俺はしばらく工事の様子を見てから、屋敷に戻って寛いでいたら、来客があった。


 誰かと思えば、ベルガーさんと姉のアデラさんの姉妹だった。二人を応接に通して、


「おはようございます」とお互いあいさつした後、


「昨日は姉がお世話になり、本当にありがとうございました」


「ありがとうございました。あの部屋の惨状からいって、大学の警備員が駆けつけてくるまで放っておかれていれば、どうなっていたか分かりません。しかも高価というか、値段の無いような『万能薬』まで使っていただいたようで今ではこの通り元気いっぱいです。本当にありがとうございました」


「気にしないでください。外には出していませんが、いま『万能薬』はうちでかなりの数を作っていますのでそこまで高価ではないんですよ。しかも、その万能薬はちょっと前にベルガーさんに作っていただいた、魔力放出器で作ったものですから」


「あれですね。

 いろいろ偶然が重なって、お姉さんは運よく助かったのよ。これからは無茶はしないでね」


「もう、無茶はしないというよりできないと思うわよ。今日は休みを取っているけれど、明日あした大学にいったら首になっている可能性も高いから」


 まあ、あれだけの爆発事故を起こした手前、なにがしかの処分はあるだろう。それでもあれは、騎士団からの委託研究中の事故だったそうだから、そこらへんは考慮されるかもな。


 三人で話していたら、ソフィアがワゴンにお茶を用意して持ってきてくれた。


 お茶を飲みながら、


「そう言えば、昨日きのうアスカが『砲身自身の強度が足りなかったため、あのような事故が起きたのでしょう』とか言っていました。あと『十分な強度のある砲身ならば、あの実験は成功していたでしょう』かな」


「アスカさんは魔導砲にも詳しいのですか?」


「魔導砲という訳ではないのでしょうが、砲そのものや、そういった物の材質などには詳しいようです。ただ、砲と言っても数を揃えなければならないでしょうから、鋼鉄製の砲身などは加工も難しいでしょうし高価になりすぎて実戦向きではないのでしょうね」


 なんとなく俺も知ったかぶりで鋼鉄製の砲身などと言ってみた。深く突っ込まれるとボロが出るのでそこはスルー推奨だ。


「そうですね。どうしても、そのあたりの知識がわたしの場合不足していますので、魔法陣から魔導具への実用化で問題がよく起きます。魔導加速器はたまたま周辺材料の強度が足りていたため成功したのでしょう」


 あの魔導加速器はアデラさんがオリジナルを作っていたのか。なるほど。そういった意味ではこの人は天才なのだろう。


「そう言えば、妹に聞いたんですが、こちらで、魔法陣技術とは違う原理が働いている動く絵を使って『科学』という物の本質も理解するための学問をご教授されているそうですが、わたしもその教室に参加させていただけませんでしょうか?」


 アデラさんは積極的な人だな。もちろん俺は構わないが、講師はマーサなのでとりあえず確認しないといけない。


「私は構いませんが、いちおう講師のマーサに確認してきますので、しばらくお待ちください」


 そう言って部屋を出て、マーサを見つけて確認したところ、あと四、五人までならディスプレイを近くで見ることができるので問題ないと言われた。



 応接に戻って、


「マーサに確認したところ全く問題はないそうなので、よかったら今日からでも参加してください。午後から教室は始まりますが、これからいったん戻られてまたここに来るのは大変でしょうから、昼食をここでご一緒して、それから教室に参加してください」


「遠慮してても始まりませんので、そのようにさせていただきます」


「それじゃあ、せっかくだから、うちの中を案内しましょう」


 昼食まで間が持つほどの物がうちにあるわけではないが、屋敷の中を案内してまわった。やはりガラス張りの温室には驚いていた。あとは、ブラッキーとホワイティーだな。今日も高いところを飛んでいたが、俺がお客さんを連れて来たのが上空から見えたらしく、すぐに二羽とも舞い降りてきた。


「この二羽がグリフォンのブラッキーとホワイティーです。かわいいでしょ?」


「ソ、ソウデスネ。カワイイデスネ」


 少し顔が引きつっていたので、そんなにかわいく見えなかったようだ。小さい時のことを覚えていればすごくかわいく見えるのだが、いきなりこの大きさの二羽を見せられたら、引いてしまっても仕方がないのかもしれない。


 案内の途中、ソフィアがいたので、今日の昼食は二人分。すでにベルガーさんは夕食の員数に入っているので、夕食はいつもより一人分多くしてもらうようにゴーメイさんに伝えるように頼んでおいた。


 案内が終わって、昼食にも間があったので、居間でマーサも交えて四人で雑談をしていたら、午前中生徒たちの面倒を見ていたアスカが授業を終えたようで俺たちのところにやってきた。


 アスカが現れたので、またベルガーさん姉妹が立ち上がって昨日のお礼をアスカに言っていた。


「アスカご苦労さん。ベルガーさんとお姉さんのアデラさんが昨日のことでお礼にいらっしゃった。あと、アデラさんもマーサの授業に出ることになったので、ついでに今日は昼食をご一緒にするから」


「分かりました」


 そのあと、アスカも交えて雑談をしていたら、昼食の準備ができたそうなので、食堂にいった。今日はシャーリーとラッティーが学校で今は不在なので二人が普段座っている席にベルガー姉妹には座ってもらい昼食をとった。


 そのあと少し休憩してからの午後からのマーサの授業では、ベルガーさんの最初の時と同じ感じで姉さんも凄い凄いの連発だったそうだ。




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