第448話 アスカ依存症は進む
二回目の出仕でもリリアナ殿下と昼食をご一緒したのだが、このぶんでいくと毎週ご一緒することになりそうだ。ありがたいことではあるが、今回も殿下と廊下で分かれたのは午後一時半だった。
よくは分からないが、組織図を見るかぎり俺も特別職の公務員のようにみえるので、そのあたりは適当でいいのだと思っておこう。
アスカと二人、部屋に戻って席に着き、さて午後から何をしようかなどと考えていたら、扉がノックされ、また朝の秘書の人が書類を抱えてやってきた。
「朝方お渡しした資料には目を通していただけたと思いますので、次の資料をお持ちしました」
そう言って、朝と同じように図面と厚めの本だか冊子が俺の机の上に置かれた。
「こちらの図面が、わが国周辺の地図になります。冊子の方には地図に記載された周辺国の現状を記したものになります。今回の資料は機密資料ですので、この部屋のキャビネットにでも厳重に保管しておいてください。鍵は机の引き出しに入っています。
それでは、失礼します」
そう言って秘書の人は部屋を出ていった。
最新の外交関係の資料となれば機密だろうからな。
「俺の場合は収納庫に入れていた方が安全なのだろうが、俺がここにいないときに、誰かが必要になって取りに来た場合困るだろうから、ちゃんとキャビネットに入れておいた方がいいよな?」
「マスター。マスターの収納庫以上に安全な保管場所はありませんから、見終わったものはマスターの収納庫に収納していた方がいいと思います。先ほどの秘書の人も『この部屋のキャビネットに
マスターにもしものことが起これば収納の中身がそこらに全部投げ出されるのでしょうが、そのようなことは私が決して起こさせませんから、安心してください」
「ありがとう。ここに置いていて誰かに盗まれたとなると、だれの責任になるのかはわからないけれど、かなり国としてはマズいよな。それに王宮関係のちゃんとした人なら、俺に断りもなくこの部屋から物品を持ちだすことはないだろうから、アスカの言う通り俺が収納しておくよ。そもそも、この部屋の鍵ももらっていないし、大事なものは置いておけないよな」
「王宮内の部屋ですから、空いている時間には掃除の人もこの部屋に入っているのでしょう。そういった人のために部屋は解放して、貴重品などを保管するためキャビネットや机の引き出しには鍵がかかるようにしているのだと思います。ただ机もキャビネットも
「さすがに机なんかを壊してまで中のものを取ろうというような賊が王宮内には出入りしないと思うがな。あとドラマなんかでよくある展開は、大切なものがなくなったからと言って探したら、思いもよらない場所から出てきて冤罪を着せられるとかかな」
「マスターが罪を着せられたとして、私がいる以上、逮捕されるようなことはありませんから安心してください」
「恨みを買うようなことはしていないつもりでも、何を逆恨みされるかわからないから用心は必要だと思うけど、そういったことを起こす者がいたとして、ある意味その人物が
「相手の実力を見誤ることは闘争においては致命傷です。仕掛けてくるときは自信を持って仕掛けてくるのでしょうが、最後に物を言うのは純粋な力だけですから」
「警察はおろか、一国の軍隊でも簡単に蹴散らすアスカをどうこうできる国もないしな」
「そういうことです。ということで過度に用心する必要はありません」
「さて、そろそろ
「はい」
俺は地図をぼーと眺めているだけだが、横目でアスカを見ると、文字の並んだ厚めの本だか冊子をすごい速さでめくっている。アスカは俺の持つ地図を最初に一目見ただけで記憶したと言っていた。優秀、最強、便利。ますますアスカ依存症が強くなるが、アスカは俺が死ぬまで一緒にいてくれると言ってくれているので、いくら依存しても問題ないのだ。
「そう言えば、この地図に出ているパルゴール帝国だけど、地図の色が二色になっているのはどういう意味なのかな?」
「帝都ハムネアを含んで赤く塗ってある部分が、いまアリシアさんの影響力の及んでいる範囲で薄く赤く塗ってあるのは、まだアリシアさんに恭順していない旧パルゴール帝国の
「ということは、この地図は最新のもの?」
「パルゴール帝国については九月一日現在と記されています。騎士団の飛空艇で情報が随時もたらされているのでしょう」
「すごいな。騎士団というか、この国は飛空艇を有効活用しているよな」
「そうですね。現在建造中の飛空艇を含め今後のために教育も実地で行っているようですから見事なものです」
「俺たちというか主に俺のせいだけど、行き当たりばったりじゃなくて、計画性があるものな。やはり組織というものはちゃんと動けばちゃんとした成果が生まれるんだな」
「マスターは行き当たりばったりかも知れませんが、成果だけは出しているので問題ありません」
「それは、アスカのおかげだから」
「私が何かしらの成果を出したというならば、その指示を出したマスターの実績です」
「ありがとう。これからも頼りにしてるよ」
「任せて下さい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます