第446話 模擬戦2
俺とアスカが
その生徒たちの前で、アスカの木刀、
俺は両手に八角棒を持って構えを取っているが、アスカは二本の刀をそれぞれに持った左右の手をだらりと下げて俺に
普通なら、何の構えを取っていなければ、出足で一拍遅れてしまうので、圧倒的に不利な状況なのだが、溜めなど一切必要のないアスカにかかれば、どこに刀の位置が有ろうと、
こうなってくるとなかなかこちらから撃って出るには勇気がいる。だからと言ってアスカの攻撃を待っていれば
アスカの持つ
それには、やはり横合いからの全力の払いだろう。それで受ければ確実に洞爺湖は壊れるし、流したとしてもある程度のダメージは入るはずだ。考えは決まった。
「ペラ」
アスカがペラに試合開始の合図を
「は、はい。
それでは、始め!」
アスカはペラの試合開始の合図に対して何も反応せずそのまま突っ立ている。俺たちを取り巻く生徒たちもしんと静まってしまった。
アスカが動かないのはいつものように俺に先に撃ち込んで来いといっているわけだ。
ここは、誘いに乗らざるをえない。やや強く八角棒を握り、振りかぶりつつ思い切り踏み込んで、アスカの腰の辺りを狙って八角棒を右から左に振り抜く。
「エイッ!」
普段声など出さないのだが、自然と気合の入った声が出てしまった。もちろん、アスカによって迎撃されれば振り抜くことはできないのだが、振り抜いてしまい、体が左にねじれてしまった。流れてしまわなかったのは良かったのだが、それだけだった。
ザッ!
アスカが地面を蹴る音が聞こえたと同時にアスカの洞爺湖1号と二号がそれぞれ俺の首筋とみぞおちに添えられていた。その後わずかに遅れて風圧を感じた。
「それまで!」
地面を蹴る音は聞こえたものアスカの動きは全く俺には見えなかった。アスカの立っていた地面が足の形に凹んでいたので超加速っぽいことをアスカがやったのだろうということが辛うじてわかる。
さっきのペラの動きは普通に認識できた俺だが、アスカの動きは認識できなかった。上を見ればきりがないという言葉があるが、それは自分より上の者が無数にいるということを指すだけではないようだ。トップとの距離が無限に離れているんだということにも当てはまるということがよくわかった。
アスカの洞爺湖二本を受け取り八角棒と一緒に収納して、アスカの講評を聞く。
「マスター、今の一撃は、かなりの気迫がこもった一撃でこれまで一番の攻撃でした」
「当たらなければ意味はないがな」
「今の回避に私も本気を出さざるを得ませんでした」
「本気と言っても、十パーセントも出していないだろ?」
「そんなところでしょうか。何であれマスターは確実に強くなっています。安心してください」
十パーセントは盛りすぎだったな。いつぞや『魔界ゲート』をアスカがぶったたいたとき、たしか、二、三割の力と言っていたけれど、あの時発生した衝撃波は爆発なみだったものな。
でもいいや、ほんの少しでもアスカが本気を出したのなら、かなり進歩しているということなのだろう。『人類最強』の
とか考えていたら、周りがやけに静かだ。
見回すと、コーチを含めた生徒たちが半分口を開けたまま俺たちを見ていた。
『あれが、アスカさん。最強のSランク冒険者』
『武術大会優勝者が一瞬で。ランクがあるなら、SSSになるのか』
『瞬間移動?』
『瞬間移動って初めて聞いた言葉だけど、言い得て
『わたしもいま思いついた言葉なの』
『アスカさんを目指すのは無謀だな。俺は教官を目指す!』
『私も!』
どうしてここで俺を目指すという言葉が出てこないの? ねえ、おかしくないか?
ペラは俺の気持ちを知ってか知らずか、多分知らないのだろうが、元気に教官モードに移行して、
「よーし、模擬試合も終わったことだし、みんな五分で防具を着けて校舎前に整列、準備体操をしてから午後からの実習を始めるぞ」
「はい!」
俺たちの試合を見学していたコーチ四人と生徒たちは、返事と一緒に校舎の玄関に向かって駆けて行った。
ペラにはすでに袋に詰めた金貨は渡してあるのでここでの用事も無くなった。
「アスカ、そろそろ帰るか。いったん冒険者ギルドに寄って素材を
それじゃあペラ、後はよろしく」
「はい、マスター」
「ペラ、よろしく」
「はい」
アスカと二人冒険者学校からトンネルを通って王都に戻り、冒険者ギルドにやってきた。
いつものように、入り口近くに立っていたスミスさんに、冒険者学校の次の3期生の件を確認した後、裏にある所定の空き地に鉄鉱石と石炭をそれぞれ置いてきた。
あとはギルドの方で重さを計って、代金が振り込まれる。俺だから簡単に石炭と鉄鉱石を分別できるので今は問題ないが、いつまでも俺がこういったことを続けるわけにはいかないので、何か仕組みを作る必要がある。
石炭そのものはそんなに重い鉱物ではないので、鉄鉱石との比重差を利用して選別することができるような気がする。魔道具的なものになるのか、マーサに頼んで電気的なものになるのかは分からないが、来年の今頃には何とかなっていると思う。
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