第293話 旋盤とレッドドラゴン
ベルガーさんからいただいてきた魔導モーターで、その日のうちにアスカが
ベルガーさんの工房を後にして、必要な部品を購入するため、さっそく例の魔道具屋さんを訪れ、
いままで、魔道具の内部構造などを見たことがなかったので、なんとなく魔石や魔素貯留器から魔道具へは電気の配線のように二本の配線で繋がっているものと思っていたのだが、そうではなく配線コードは見た目は一本の針金だった。
結局、魔素そのものは電気のようなものではなく、燃料のようなものと考えた方がいいようだ。魔石などから魔素を導線(ミスリルや銅、またはそれらの合金、ミスリルは高価なため使っても合金としてわずかに使われるだけ)などで魔法陣につなげると、魔法陣に応じて魔素が消費されてしかるべき効果が
屋敷に帰り着き、アスカがまず行ったことは、魔導モーターにさきほど魔道具屋から買って来た魔素貯留器を魔力配線コードでつなげて、軸に自分の手をあてたまま魔導モーターを回し始めた。
「アスカ、何してんの?」
「魔素の流入量と回転数、回転数とトルクの関係を確認していました。これでギアボックスの
だそうです。
そのあと、アスカが
アスカはそのインゴットを使って、すぐに旋盤の製作を始め、結局1時間もかからず横長の机くらいの大きさの本体ができ上った。動力はもちろん魔導モーターで、本体脇に取り付けられた魔素貯留器から供給される魔素で魔導モーターが回転する。
アスカによると、魔導モーターからの動力伝達は、一度ベルトを
「アスカ、ベルト素材だったら、ウロコをとったドラゴンの革なんかどうだろう?」
「マスター、なかなかいいところに気が付かれましたね。今は、直接ギアボックスに魔導モーターをはめ込んでいる関係で、ギアに
「それじゃあ、いつぞやのレッドドラゴンの皮を使うか。ちょっと待ってくれ、一度、収納庫の中で血を抜いておくから」
黒龍の血を抜いて以来収納庫の中で血抜きができるようになったので、今回も適当なレッドドラゴンの血を抜いてやった。黒龍に比べれば、かなり小さなドラゴンだったがそれでも相当量の血が抜き取れた。いまは黒龍の血と同様、入れ物に入らず、液体の
「よし、血を抜いたから、そこの
「お願いします。皮をはいだらあとで解体してしまいましょう。ドラゴンステーキがどんなものか楽しみです」
だれでも、ドラゴンステーキには興味があると思うが、ドラゴンの内臓はどんなだろう? ホルモン焼きでもできれば
草原の上に、血抜きをしたばかりのレッドドラゴンを出してやる。
血抜きをしても表面はちゃんと蒼白くならずに赤いままだった。赤い血の色で赤かったわけではなかったようだ。
鼻の先から尻尾の先までだいたい20メートル。体に似合わぬ小ぶりな翼が背中に折りたたまれたいる。頭の左右に太い角が各三本、頭の真ん中から尻尾にかけて三角形の
「まずは、
アスカが言ってるはしから、翼が二枚背中からずり落ちてきたのであわてて収納した。
「次は、頭と両手、両足を切り取ります」
これも、言っている端からドラゴンは切断されて、頭と胴体、両手に両足にバラバラになった。ドラゴンの骨といったらかなり硬いものを想像していたのだが、アスカにかかれば簡単に切断できるようだ。
「胴体だけを残して後は収納お願いします。そういえば、このドラゴンの頭をはく製にして玄関に飾ってもよさそうですね」
アスカにとっては、
はく製は今後の検討課題としても、
何て表現していいのか分からないドラゴンの赤い丸太のようなものができ上った。先に血を全部抜き取っているので、巨大な肉の塊はそれほどグロいものでもない。
「背中の上の背骨に沿った三角の
ドラゴンの背骨から生えていたと思われる三角形の突起はアスカの髪の毛で払われてそこらに転がった。それもアスカに言われる前に収納。
「いま、切り離したところからドラゴンの外皮を髪の毛で肉から切り離しながら
砂虫の皮をはぐときのような感じで、ドラゴンの胴体が回転し、それに合わせて、ドラゴンの外皮がはがれていく。厚さは5センチくらいのものだった。
ドラゴンの胴体が一回転し、外皮が
皮をむかれたドラゴンの胴体は、白茶けて、皮の付いた鶏のもも肉のように見える。
「マスター、いったん胴体を収納してください」
皮を残して胴体を収納。
[あとがき]
少し長くなったので、二分割しました。
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