第127話 時代の変化に適応出来ない者達、出来る者達
『英雄(ヒーロー)』とは何だろうか?
『英雄(ヒーロー)』とは、神話や物語などの主人公の事。
『英雄(ヒーロー)』の多くは、普通の人を超える力・知識・技術を持ち、それらを用いて一般社会にとって有益とされる行為、所謂救世主としての行為を行う。
多くの物語では、これを阻止しようとする悪役・敵役が現れる事がある。
また、突出した能力を持っていない場合でも、何らかの形で英雄的行為をすることがある。
その主人公が女性の場合は、ヒロインと呼ばれる。(某百科事典より抜粋)
また、歴史上の偉人達も、『英雄(ヒーロー)』と評される事がある。
ぶっちゃけて言うと、歴史上の偉人達は自身の野心や野望の為に邁進したに過ぎないが、それが一般社会にとっても有益だった場合は、そう祭り上げられる事があるのだ。
まぁ、そうした歴史上の偉人達本人、あるいは周囲の者達が、所謂『プロパガンダ』として意図的にそう喧伝・吹聴して回る事も多いが。
イメージ戦略も立派な戦術の一つであるから、それに関しては仕方のない部分もあるだろうが。
ただし、これは味方の勢力に限った称号だったりする。
敵対勢力からしたら、逆にそうした者は自分達を苦しめる存在となる訳で、場合によっては『悪魔』とも『大悪党』とも評される事がある。
ここら辺も、それぞれの立場や文化、社会情勢によっても、『正義』なんてモノはコロコロと変わる事の裏返しでもあった。
更には、もっと平和的な、文化的『英雄(ヒーロー)』なんかも存在する。
例えば、スポーツや芸術などの分野で功績を上げた者達だ。
こちらは、武人的な『英雄(ヒーロー)』達よりも、血生臭くない事からも、より身近に愛される事も多い。
さて、では、アキトはどんなタイプの『英雄(ヒーロー)』なんだろうか?
アキトも、
もっとも、彼自身はそれを自身の都合に基づくモノであると自覚しているので、自らを『正義』と名乗る事はないが。
だが、彼の特筆すべき点はそこではなく、アキトの場合は彼だけでなく彼の周囲の者達も、無意識の内にその『
まぁ、これは、彼の周囲の者達が、彼の考え方の影響を受けている事もあるのだが、やはり一番の要因は、彼の持つ『英雄の因子』、その中でもとりわけ『
もっとも、そうした特徴は、他の偉人達にも度々見られる特徴であるが、アキトの場合は、その数やレベルが極めて異常なのである。
例えば、一番顕著な例はアキトに非常に近いアイシャ達であろう。
彼女達は、アキトに関わった事で、
もし、彼女達がアキトに出会わなければ、その高みに到達する事は、いくら彼女達が元々それなりに素養を持っていたとしてもありえない事態だったであろう。
才能を開花される事は、その人本人の努力だけでなく、周囲の者達の理解やサポートが必須だからである。
しかし、アイシャ達は、『人間族』より遥かに優れた素養を持っていた為、まだそれでもそうなる可能性はあったが、レイナード達、アキトの幼馴染み達は良くも悪くも普通の子供達で
だが、アキトの影響や、特に旧・『ルダ村』を襲った『
まぁ、彼らに関しては詳しく何処かで語る事とするが、今現在の彼らは、ユストゥスを中心としたアキトらの指導を受けて、齢15歳にして、
しかし、もし仮に、レイナード達がアキトと言う存在と関わりがなければ、それほどの人物になる事はまずありえなかった事だろう。
それなりに人並みの人生を送り、その生涯を終えていた事だろう。
と、この様に、彼らだけでなく、アキトと関わりを持った者達は、大なり小なりそうしたそれまでは考えられない
※※※
ちなみに、一応補足しておくと、アキトの“見捨てる”発言の真意は、“チーム”に貢献せず、ただただ助けてもらおうとか甘い汁を啜ろうとする者達に対する牽制の発言である。
ここら辺は、彼が『前世』で嗜んでいた『サッカー』と言う競技の影響が大きい。
『サッカー』は、『集団競技』である。
1“チーム”が11人の、計2“チーム”の間で行われるスポーツ競技である。
つまり、当然ながら、1“チーム”11人は、ある程度のレベルに達した者達でなければ、相手“チーム”に打ち勝つ事は出来ない。
ここら辺は、他の競技も同様であるが。
もちろん、『
それに、『ポジション』によって求められる能力も変わってくる。
故に、『スター選手』・『スタープレイヤー』や、“チーム”の中心となる『
もちろん、そうした『ワンマンチーム』も存在するが、ハイレベルになると、そんな“チーム”では勝ち残れないのである。
もっとも、若い内は、そうした“エース”に憧れがちであるし、“チームプレー”の本質に気付かない事も往々にしてある。
どれほど強力な
故に、“チームメイト”を信頼し、任せられる事は任せる必要があるのである。
一人で戦況をひっくり返すのはカッコいいが、あまり現実的ではないし、長時間使える手でもないのである(対策を打たれてしまえば終わりだからである)。
ここまでは、フィールドで実際に活躍する『
例えば、“チーム”の運営上の責任者である“監督”。
“監督”と混合される事もあるが、より技術に特化した指導をする“コーチ”。
また、プロならば競技以外の事を手配(宿泊施設や移動手段、食事など)を取り仕切る“チームスタッフ”、アマチュアならば『
そして、忘れてはならないのが“サポーター”である。
プロの場合は、興行としての貴重な収入源の一部でもあり、また、“チーム”に声援を送ってくれる頼もしい味方である。
アマチュアの場合も、やはり“チーム”を鼓舞してくれる心強い味方である。
一方で、過激かつ暴力的な“フーリガン”の様な、“チーム”にとってはマイナスの存在もいる。
“
まぁ、ここら辺も、比較的文化的要素の強いスポーツと言えど、ある種“社会の縮図”であるかの様で、興味深い点であるが・・・。
その他にも、“スポンサー”などの資金的に重要な存在もいるが、それらを説明するとキリがないのでここらで割愛するが、この様に、1“チーム”の裏には、それほどの人々の協力があるのである。
まぁ、ここら辺は、企業や団体、社会の組織においては当たり前の話であるが。
それら一人一人の協力があって、初めて“チーム”があるのである。
で、アキトが言及しているのは、この“フーリガン”の様な存在や、後からやって来て、何もせずに利権だけ求めて来た連中に協力しない、と言う事なのである。
『等価交換』などと言うつもりはないが、何もしていない者達までをも助けたりする義理はない。
その事をハッキリ明言したのであったーーー。
◇◆◇
「さて、では、私のスタンス、
「ち、ちょっと待ってくれ、アキトっ!そ、その『三国同盟』とは何なのだっ!!??」
半ば冷たくも聞こえる僕の言葉に、マルク王は怒りを通り越して、焦りの色を見せ始める。
まぁ、それも仕方ない事だろう。
僕は、元・オッサンとして、事前準備や段取り、人脈の重要性を理解している。
故に、様々な方法で各所に(秘密裏に)パイプを張り巡らせていた。
アイシャさんを通して『鬼人族』(『アスラ族』)とも独自に関係を築いているし、ティーネ達を介して『エルフ族の国』とも同様だ。
また、『リベラシオン同盟』の活動を通して、『トロニア共和国』とも関係を築いているし、先の件を通して『ヒーバラエウス公国』とも独自の関係を築いてきたばかりだ。
これらは、この『三国同盟(仮)』の為の布石であった。
客観的な戦力差(国力や影響力などを含めた総合的な
では、一国で無理ならば、複数の国と『連合』・『同盟』を組んで対抗するのがもっとも現実的であろう。
まぁ、本来はこれはかなりハードルが高かったが。
何故ならば、『
『トロニア共和国』に関しては、これは『エルフ族の国』も同様だが、『奴隷』の件によって、非常に仲が悪かった。
何故ならば、『エルフ族の国』は、ある種の当事者であるから当然としても、『トロニア共和国』のスタンスとしては、『他種族』との融和・協調を謳っている訳だから、『
それが解決しない事には、仲良く出来ない、と言う訳である。
『ヒーバラエウス公国』はもっと身内寄りの話で、以前にも言及したが、『ヒーバラエウス公国』の『大公家』は、元は『ロマリア王家』の分家筋に当たる訳だから、その『
『ロマリア王国』側からしたら、その歴史的背景は別としても、『ロマリア王家』の分家筋な訳だから、『ヒーバラエウス公国』は『
まぁ、その末で、この間の『
まぁ、それも御存知の通り、僕らで何とか食い止めた訳だが・・・。
っつか、今更だけど、僕らって、何だか『ロマリア王国』がやらかした事の尻拭いばっかだなぁ~。
まぁ、こちらにも都合がある訳だから、それも仕方のない事だけれど、何だか腹が立ってくるわ。
それも、この場にいる者達の先代とか先々代、場合によっては数世代前が原因かもしれんが、そんな者達の子孫が、更に自分の為に働けとか、どの口が言っとるんだろーか?(^ω^#)
まぁ、僕は大人なので、ちょっと
「『三国同盟(仮)』と言うのは、
「こ、今度こそホラ話だろうっ!?そんな事が、一団体に過ぎないお前達に出来る筈がっ・・・!!!」
「その話は本当やでぇ~。ウチが証明したりますわ。」
「私達、ですぞ、ヴィーシャ殿?さらっと私の存在を無視しないで頂きたい。」
「あ、こりゃ失礼、グレンはん。」
またまたマイレンさんが噛み付いてきたタイミングで、その場に新たな登場人物が現れた。
何を隠そう、ヴィーシャさんと、グレンさんである。
っつか、何でおんねんっ!
「な、何だ、貴様らはっ!この場は神聖な場所であるぞっ!!おい、衛兵っ!こやつらを即刻追い返せっ!!!」
「いやいや、その必要はありません。お二方を呼んだのは他ならぬ私なのですから。」
「マルセルム公・・・?」
・・・ふむ、どうやら僕ですら知らなかった段取りではあるが、どうやらこれはマルセルムさんが仕組んだ事らしい。
まぁ、しかし、ある意味助かった。
存外、説得に難儀していたからなぁ~。
いや、別に強引に事を進めても良かったのだが・・・。
「勝手な真似をして申し訳ありません、マルク王。それに、アキト殿。しかし、皆様の説得をするには、やはり手が弱いと感じましてな・・・。」
「う、うむ・・・?」
「いえ、正直助かりました。案外、人は感情的に動いてしまうモノなのだと改めて実感していたところでしたからね・・・。」
「いやはやお恥ずかしい。これは、アキト殿の手を煩わせた我々の責任ですよ。本来ならば、これらの事は、我等だけで片付けたかったところですが・・・。」
「な、何の話をしておるのですか、マルセルム公!?もしや、貴方も『
「その通りだよ、マイレン卿。と、言うよりも、すでに『
「「「「「なっ・・・!!!???」」」」」
「・・・詳しい話を聞こうか、マルセルム公。」
鋭い目付きになったマルク王が、咎める様な口調でマルセルムさんに水を向けた。
「ええ、もちろんです。ここからは、アキト殿の話と重複する部分がありますが、平に御容赦を。さて、そもそも本来は、これら一連の流れは、アキト殿や『リベラシオン同盟』の手を煩わせる事なく、我等の手で成し遂げるべき事でした。『貴族派閥』から政権を奪還する事も、隣国との関係を改善する事も、ね。しかし、残念ながら我等『王派閥』は、長年それを成し遂げられずに来た。これは、恥ずべき事ですし、同時に危うい事態でもありました。何故ならば、アキト殿がおっしゃった通り、アキト殿と『リベラシオン同盟』の存在がなければ、『
「し、しかし、それはあくまで可能性に過ぎずっ・・・!」
「感情ではなく、理論的に考えてみたまえ、マイレン卿。私が、もし隣国の指導者で、かつ『
「「「「「っ!!!」」」」」
マルセルムさんの言葉に、皆さん思い当たる節があるのか、今更ながら衝撃を受けていた。
まぁ、ある程度事情を把握した今ならば、かつての『
まぁ、僕も似たようなニュアンスで言っていた事なのだが、やはり同じ発言でも、誰が発言したかによって、人によってはその重みは変わるものだ。
「しかし、そうはならなかった。アキト殿と『リベラシオン同盟』が動いたからです。私自身恥ずかしい話、それは回避された後で知った事実でした。それどころか、アキト殿や『リベラシオン同盟』は、『王派閥』にとっての最大の政敵であったフロレンツ候の排除すら実現してみせました。これらは全て、『
「いえいえ、別にこちらにも思惑があっての事ですし・・・。」
「だとしても、ですよ、アキト殿。しかも、それだけに留まらず、あなた方は、『トロニア共和国』や『エルフ族の国』との間をも取り持って下さいました。それに、政治的背景だけでなく、血筋の話でもややこしくなっていた『ヒーバラエウス公国』とも、貴方は見事に仲介してみせた。ケントから報告を受けていますよ、アキト殿。『大公家』の人々は、『
「あ、いやぁ~、この場で語ると長くなってしまいますし・・・。」
「そ、それは誠か、マルセルム公っ!?」
「ええ、間違いなく。実は、私がマルク王に上申していた『
「「「「「っ!!!」」」」」
その新たなる情報に、今度こそ皆さんの僕の見る目が変わった様に感じていた。
「ウチらも似た様なもんですわ。」
「うむ。」
「・・・失礼だが、あなた方は何者ですかな?」
「これは申し遅れました。ウチ、いえ、私は『トロニア共和国』からの『外交使節団』、その代表を務めております、ヴィーシャ・フックスと申します。」
「同じく、私は『エルフ族の国』からの『外交使節団』の代表を務めております、グレンフォード・ナート・ブーケネイアと申す者。僭越ながら、本国では『十賢者』の一席を
「で、では、あなた方がっ・・・!!!」
「お、お二方は、マルク王との謁見を望んでおられたのですが、今回の『
慌てて、ダールトンさんがそう説明を付け加える。
流石に身内の事ならばもとかく、他国の要人をも巻き込んで揉められると、ダールトンさんとしては立つ瀬がないからな。
「いや、それに関してはこちらの都合に巻き込んで申し訳なかった。それと、今回の件では、そのお知恵を御借りしたとも報告を受けております。そちらに関しても、重ねて御礼を申し上げる。」
「そんなん、構いまへんよぉ~。けど、何や、けったいな事で揉めとりますなぁ~?」
ニヤリと、ヴィーシャさんは、軽く先制パンチをかました。
あ、ダールトンさんが真っ青な顔をしている・・・。( ̄▽ ̄;)
「と、申しますと?」
それが、ある種の挑発であると気付きながらも、マルク王は務めて冷静に言葉を返した。
「だってそうでっしゃろ?アンタはんらは、自分等が誰に救われていたのかも分からんと、更にはその御方を無理矢理従えようとする面の皮の厚さや。旦那はんもビシッと言うたら良いモンを。まぁ、あんまり波風を立てたくなかったんやろうけど・・・。」
「はて、何の事でしょうか・・・?」
「とぼけなくともよろしいですよ、アキト殿。ティーネ達におおよその事は聞きました。」
「ああ~・・・。」
「いやぁ~、しかし、改めてとんでもない御仁ですわ、旦那はんは。武力だけやのうて、超がつくほどの資産家でもあり、権謀術数においても飛び抜けているとは。こんな事せんでも、何とかなったんやないですか?」
「いやいや、あんまり上から申し上げるのは、僕の信条に反するんですよ。それに、無理矢理従えても、お互いに良い事はありません。ですから、御説明をした上で、御自身で判断を下された方が良いと考えました。まぁ、その結果、そもそも聞く耳を持たなくとも、それはそれで良かったのですよ。それならそれで、つまりはそこまで、って事ですからね。」
「うわぁ~、こわぁ~。聞きましたか、アンタはん方?王様は、マルセルムはんの機転に感謝した方が良いですわ。この御仁は、
「い、一体、さっきから何の話なんだっ!?」
「アキト殿の頭の中では、すでに『
「なっ!?」
「「「「「っ!!!???」」」」」
まぁ、別にこれを『
一応当初は、どうにか『
『
つまりは、すでに起きていた(っつか、僕が仕掛けた事でもあるが)新たなる
古い
それに、歴史的にも、新たなる
まぁ、もっとも、それも個人差はある。
『ノヴェール家』を始めとして、『リベラシオン同盟』に賛同してくれた貴族家の皆さんは、もちろんそれぞれ思惑もあるのだろうが、そうした旧態依然とした
まぁ、この『三国同盟(仮)』設立計画は、これまでの『国』と言う
『三国同盟(仮)』は、発想としては
いや、『ロンベリダム帝国』や『ライアド教(ハイドラス派)』の勢力に対抗する都合上、一種の『軍事同盟』と言った方が適切か。
まぁ、いずれにせよ、『強国』や『大国』に対抗する為には、一国で無理ならば複数の国と協力しよう、ってのが発想の基になっている。
これならば、
まぁ、一種の“抑止力”ってヤツだ。
で、先程も言及したが、最終的には、この『軍事同盟』に、
その手始めとして、『
『ノヴェール家』や貴族家の橋渡しもあった為に、比較的容易であると考えていたからだ。
しかし、その目算は外れてしまった。
『
自分の血縁上の親をつかまえてそんな事を言うのも何だが、もちろんマルク王もである。
まぁ、仕方ない面ももちろんあるのだが、腰は重いし、頭が固くて難儀していたところであったのだ。
身も蓋もない事を言うと、フロレンツ候を排除したのに、その
まぁ、フロレンツ候に好き勝手やられているのも関わらず、何の具体的な成果も挙げられなかった事からも分かりきってはいた事なのだが、まさかここまでとはねぇ~。
どちらかと言うと、まぁ、もちろん歴史的背景もあるのだが、『
故に、僕の中では、無理に『
当初の予定とは違ったが、『
まぁ、その僕の思惑を察知したからこそ、マルセルムさんは、慌てて手を打ったのだろうが、はたして・・・。
とりあえず成り行きを見守ってみる事としようかーーー。
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