第127話  時代の変化に適応出来ない者達、出来る者達



『英雄(ヒーロー)』とは何だろうか?


『英雄(ヒーロー)』とは、神話や物語などの主人公の事。

『英雄(ヒーロー)』の多くは、普通の人を超える力・知識・技術を持ち、それらを用いて一般社会にとって有益とされる行為、所謂救世主としての行為を行う。

多くの物語では、これを阻止しようとする悪役・敵役が現れる事がある。

また、突出した能力を持っていない場合でも、何らかの形で英雄的行為をすることがある。

その主人公が女性の場合は、ヒロインと呼ばれる。(某百科事典より抜粋)


また、歴史上の偉人達も、『英雄(ヒーロー)』と評される事がある。

ぶっちゃけて言うと、歴史上の偉人達は自身の野心や野望の為に邁進したに過ぎないが、それが一般社会にとっても有益だった場合は、そう祭り上げられる事があるのだ。

まぁ、そうした歴史上の偉人達本人、あるいは周囲の者達が、所謂『プロパガンダ』として意図的にそう喧伝・吹聴して回る事も多いが。

イメージ戦略も立派な戦術の一つであるから、それに関しては仕方のない部分もあるだろうが。


ただし、これは味方の勢力に限った称号だったりする。

敵対勢力からしたら、逆にそうした者は自分達を苦しめる存在となる訳で、場合によっては『悪魔』とも『大悪党』とも評される事がある。

ここら辺も、それぞれの立場や文化、社会情勢によっても、『正義』なんてモノはコロコロと変わる事の裏返しでもあった。


更には、もっと平和的な、文化的『英雄(ヒーロー)』なんかも存在する。

例えば、スポーツや芸術などの分野で功績を上げた者達だ。

こちらは、武人的な『英雄(ヒーロー)』達よりも、血生臭くない事からも、より身近に愛される事も多い。


さて、では、アキトはどんなタイプの『英雄(ヒーロー)』なんだろうか?

アキトも、この世界アクエラにおける普通の人を超える力・知識・技術を持ち、それらを用いて一般社会にとって有益とされる行為、所謂救世主としての行為を行っている。

もっとも、彼自身はそれを自身の都合に基づくモノであると自覚しているので、自らを『正義』と名乗る事はないが。


だが、彼の特筆すべき点はそこではなく、アキトの場合は彼だけでなく彼の周囲の者達も、無意識の内にその『』に引き上げてしまっている点にあると言える。

まぁ、これは、彼の周囲の者達が、彼の考え方の影響を受けている事もあるのだが、やはり一番の要因は、彼の持つ『英雄の因子』、その中でもとりわけ『事象起点フラグメイカー』のチカラが影響を与えているからだと考えられる。


もっとも、そうした特徴は、他の偉人達にも度々見られる特徴であるが、アキトの場合は、その数やレベルが極めて異常なのである。

例えば、一番顕著な例はアキトに非常に近いアイシャ達であろう。

彼女達は、アキトに関わった事で、この世界アクエラの歴史的にも、ほとんど存在を確認されていなかった“レベル500カンスト”に到達していた。

もし、彼女達がアキトに出会わなければ、その高みに到達する事は、いくら彼女達が元々それなりに素養を持っていたとしてもありえない事態だったであろう。

才能を開花される事は、その人本人の努力だけでなく、周囲の者達の理解やサポートが必須だからである。


しかし、アイシャ達は、『人間族』より遥かに優れた素養を持っていた為、まだそれでもそうなる可能性はあったが、レイナード達、アキトの幼馴染み達は良くも悪くも普通の子供達で

だが、アキトの影響や、特に旧・『ルダ村』を襲った『パンデミックモンスター災害』とアキトらの活躍を目の当たりにした事で、様々な影響を受けていたのである。

まぁ、彼らに関しては詳しく何処かで語る事とするが、今現在の彼らは、ユストゥスを中心としたアキトらの指導を受けて、齢15歳にして、この世界アクエラの上位レベルの者達に肩を並べるほどの英傑に成長していた。

しかし、もし仮に、レイナード達がアキトと言う存在と関わりがなければ、それほどの人物になる事はまずありえなかった事だろう。

それなりに人並みの人生を送り、その生涯を終えていた事だろう。


と、この様に、彼らだけでなく、アキトと関わりを持った者達は、大なり小なりそうしたそれまでは考えられないを与えられていたのであったーーー。



※※※



ちなみに、一応補足しておくと、アキトの“見捨てる”発言の真意は、“チーム”に貢献せず、ただただ助けてもらおうとか甘い汁を啜ろうとする者達に対する牽制の発言である。

ここら辺は、彼が『前世』で嗜んでいた『サッカー』と言う競技の影響が大きい。


『サッカー』は、『集団競技』である。

1“チーム”が11人の、計2“チーム”の間で行われるスポーツ競技である。

つまり、当然ながら、1“チーム”11人は、ある程度のレベルに達した者達でなければ、相手“チーム”に打ち勝つ事は出来ない。

ここら辺は、他の競技も同様であるが。


もちろん、『選手プレイヤー』の技量には、個々に個人差は存在する。

それに、『ポジション』によって求められる能力も変わってくる。

故に、『スター選手』・『スタープレイヤー』や、“チーム”の中心となる『選手プレイヤー』は存在するのだが、だからと言って、その他の『選手プレイヤー』が、その“エース”におんぶにだっこな訳ではない。

もちろん、そうした『ワンマンチーム』も存在するが、ハイレベルになると、そんな“チーム”では勝ち残れないのである。


もっとも、若い内は、そうした“エース”に憧れがちであるし、“チームプレー”の本質に気付かない事も往々にしてある。

どれほど強力なチカラや天才的なテクニックを持っていようと、『選手プレイヤー』一人に出来る事には限りがある。

故に、“チームメイト”を信頼し、任せられる事は任せる必要があるのである。

一人で戦況をひっくり返すのはカッコいいが、あまり現実的ではないし、長時間使える手でもないのである(対策を打たれてしまえば終わりだからである)。


ここまでは、フィールドで実際に活躍する『選手プレイヤー』の話だが、当然ながら、それ以外にも、“チーム”の上で重要なを担う者達が存在する。

例えば、“チーム”の運営上の責任者である“監督”。

“監督”と混合される事もあるが、より技術に特化した指導をする“コーチ”。

また、プロならば競技以外の事を手配(宿泊施設や移動手段、食事など)を取り仕切る“チームスタッフ”、アマチュアならば『選手プレイヤー』の“家族”や“ボランティア(OBやOGが多い)”も“チーム”にとって必要な人材である。


そして、忘れてはならないのが“サポーター”である。

プロの場合は、興行としての貴重な収入源の一部でもあり、また、“チーム”に声援を送ってくれる頼もしい味方である。

アマチュアの場合も、やはり“チーム”を鼓舞してくれる心強い味方である。


一方で、過激かつ暴力的な“フーリガン”の様な、“チーム”にとってはマイナスの存在もいる。

フーリガン彼ら”は、“サポーター”を名乗るべきではないし、認めてはいけない存在である。

まぁ、ここら辺も、比較的文化的要素の強いスポーツと言えど、ある種“社会の縮図”であるかの様で、興味深い点であるが・・・。


その他にも、“スポンサー”などの資金的に重要な存在もいるが、それらを説明するとキリがないのでここらで割愛するが、この様に、1“チーム”の裏には、それほどの人々の協力があるのである。

まぁ、ここら辺は、企業や団体、社会の組織においては当たり前の話であるが。

それら一人一人の協力があって、初めて“チーム”があるのである。


で、アキトが言及しているのは、この“フーリガン”の様な存在や、後からやって来て、何もせずに利権だけ求めて来た連中に協力しない、と言う事なのである。

『等価交換』などと言うつもりはないが、何もしていない者達までをも助けたりする義理はない。

その事をハッキリ明言したのであったーーー。



◇◆◇



「さて、では、私のスタンス、では、“働かざる者食うべからず”ですのでね。が御理解頂けたモノとして話を続けますが、あなた方が取り得るもう一つの選択肢としては、あなた方は自らの生存する権利を勝ち取る事、子供達の未来の為に立つ事、ですね。まぁ、別に断って頂いても結構ですが、その場合は、先程も申し上げた通り、私は『ロマリア王国この国』を見捨てますよ?そうなった場合は、あなた方は、『リベラシオン同盟』や『三国同盟(仮)』のに独力で『ロンベリダム帝国』や『ハイドラス派』の脅威に立ち向かわなければなりません。まぁ、おそらくこの場の半数以上は、『リベラシオン同盟我々』に合流する目算ですが・・・。」

「ち、ちょっと待ってくれ、アキトっ!そ、その『三国同盟』とは何なのだっ!!??」


半ば冷たくも聞こえる僕の言葉に、マルク王は怒りを通り越して、焦りの色を見せ始める。

まぁ、それも仕方ない事だろう。


僕は、元・オッサンとして、事前準備や段取り、人脈の重要性を理解している。

故に、様々な方法で各所に(秘密裏に)パイプを張り巡らせていた。

アイシャさんを通して『鬼人族』(『アスラ族』)とも独自に関係を築いているし、ティーネ達を介して『エルフ族の国』とも同様だ。

また、『リベラシオン同盟』の活動を通して、『トロニア共和国』とも関係を築いているし、先の件を通して『ヒーバラエウス公国』とも独自の関係を築いてきたばかりだ。

これらは、この『三国同盟(仮)』の為の布石であった。


客観的な戦力差(国力や影響力などを含めた総合的なチカラ)は、残念ながら一国程度では『ロンベリダム帝国』や『ライアド教(ハイドラス派)』に対抗する事は非常に困難だ。

では、一国で無理ならば、複数の国と『連合』・『同盟』を組んで対抗するのがもっとも現実的であろう。

まぁ、本来はこれはかなりハードルが高かったが。

何故ならば、『ロマリア王国この国』は、隣国との関係性が悪かったからである。


『トロニア共和国』に関しては、これは『エルフ族の国』も同様だが、『奴隷』の件によって、非常に仲が悪かった。

何故ならば、『エルフ族の国』は、ある種の当事者であるから当然としても、『トロニア共和国』のスタンスとしては、『他種族』との融和・協調を謳っている訳だから、『ロマリア王国この国』ので起こっている事は看過出来ない事態である。

それが解決しない事には、仲良く出来ない、と言う訳である。


『ヒーバラエウス公国』はもっと身内寄りの話で、以前にも言及したが、『ヒーバラエウス公国』の『大公家』は、元は『ロマリア王家』の分家筋に当たる訳だから、その『主導権イニシアチブ』を長らく争っていた訳である。

『ロマリア王国』側からしたら、その歴史的背景は別としても、『ロマリア王家』の分家筋な訳だから、『ヒーバラエウス公国』は『ロマリア王国ウチ』の『属国』であるとの認識・風潮があり、一方の『ヒーバラエウス公国』では、自ら独立し、国を切り開いてきた訳だから、その主張はおかしいと反発する訳である。

まぁ、その末で、この間の『政変クーデター』騒動に発展し、逆に『ロマリア王国』を支配下に置く事で、自らの主張の正当性を内外に知らしめようとした訳だ。

まぁ、それも御存知の通り、僕らで何とか食い止めた訳だが・・・。


っつか、今更だけど、僕らって、何だか『ロマリア王国』がやらかした事の尻拭いばっかだなぁ~。

まぁ、こちらにも都合がある訳だから、それも仕方のない事だけれど、何だか腹が立ってくるわ。

それも、この場にいる者達の先代とか先々代、場合によっては数世代前が原因かもしれんが、そんな者達の子孫が、更に自分の為に働けとか、どの口が言っとるんだろーか?(^ω^#)

まぁ、僕は大人なので、ちょっとを与える程度で許してあげるけどねっ!(  ̄ー ̄)ニヤリ


「『三国同盟(仮)』と言うのは、ハレシオン大陸この大陸の二大勢力である『ロンベリダム帝国』と『ライアド教』に対抗する為の、具体的な策ですよ。交渉するにしても、戦争するにしても、一国ではハッキリ言って相手にならないので、ならばこちらは複数の国と協力して事を成す必要がありますからね。もっとも、『三国同盟』と言う名称自体は、当初想定していた三国を含めた仮称に過ぎず、最終的には、ハレシオン大陸この大陸の半数以上をの味方につけたいと考えています。流石にそれほどの規模ならば、も無視は出来なくなりますからね。ちなみに、当初想定していた三国と言うのは、『ロマリア王国この国』と隣国である『トロニア共和国』と『ヒーバラエウス公国』でした。今は、ここに『エルフ族の国』と『鬼人族』の部族が合流する予定です。」

「こ、今度こそホラ話だろうっ!?そんな事が、一団体に過ぎないお前達に出来る筈がっ・・・!!!」

「その話は本当やでぇ~。ウチが証明したりますわ。」

「私達、ですぞ、ヴィーシャ殿?さらっと私の存在を無視しないで頂きたい。」

「あ、こりゃ失礼、グレンはん。」


またまたマイレンさんが噛み付いてきたタイミングで、その場に新たな登場人物が現れた。

何を隠そう、ヴィーシャさんと、グレンさんである。

っつか、何でおんねんっ!


「な、何だ、貴様らはっ!この場は神聖な場所であるぞっ!!おい、衛兵っ!こやつらを即刻追い返せっ!!!」

「いやいや、その必要はありません。お二方を呼んだのは他ならぬ私なのですから。」

「マルセルム公・・・?」


・・・ふむ、どうやら僕ですら知らなかった段取りではあるが、どうやらこれはマルセルムさんが仕組んだ事らしい。

まぁ、しかし、ある意味助かった。

存外、説得に難儀していたからなぁ~。

いや、別に強引に事を進めても良かったのだが・・・。


「勝手な真似をして申し訳ありません、マルク王。それに、アキト殿。しかし、皆様の説得をするには、やはり手が弱いと感じましてな・・・。」

「う、うむ・・・?」

「いえ、正直助かりました。案外、人は感情的に動いてしまうモノなのだと改めて実感していたところでしたからね・・・。」

「いやはやお恥ずかしい。これは、アキト殿の手を煩わせた我々の責任ですよ。本来ならば、これらの事は、我等だけで片付けたかったところですが・・・。」

「な、何の話をしておるのですか、マルセルム公!?もしや、貴方も『リベラシオン同盟こやつら』とっ・・・!!??」

「その通りだよ、マイレン卿。と、言うよりも、すでに『ロマリア王国この国』の半数以上は、『リベラシオン同盟彼ら』に賛同している。」

「「「「「なっ・・・!!!???」」」」」

「・・・詳しい話を聞こうか、マルセルム公。」


鋭い目付きになったマルク王が、咎める様な口調でマルセルムさんに水を向けた。


「ええ、もちろんです。ここからは、アキト殿の話と重複する部分がありますが、平に御容赦を。さて、そもそも本来は、これら一連の流れは、アキト殿や『リベラシオン同盟』の手を煩わせる事なく、我等の手で成し遂げるべき事でした。『貴族派閥』から政権を奪還する事も、隣国との関係を改善する事も、ね。しかし、残念ながら我等『王派閥』は、長年それを成し遂げられずに来た。これは、恥ずべき事ですし、同時に危うい事態でもありました。何故ならば、アキト殿がおっしゃった通り、アキト殿と『リベラシオン同盟』の存在がなければ、『ロマリア王国我が国』はこちらにいらっしゃるグレン殿の母国、『エルフ族の国』との全面戦争へと雪崩れ込んでいた可能性もあるからです。その結果、『ロマリア王国我が国』は、かなりの打撃を受けて、他国に吸収されていた可能性もある。」

「し、しかし、それはあくまで可能性に過ぎずっ・・・!」

「感情ではなく、理論的に考えてみたまえ、マイレン卿。私が、もし隣国の指導者で、かつ『ロマリア王国この国』に思うところがあれば、私はその機会を逃さないだろう。そうでなくとも、国内情勢が混乱しているとなれば、それをしようとする者達はゴマンといる。『ライアド教』にとっても、かつての『ロマリア王国この国』は非常に布教しやすい環境だったと思うがね?」

「「「「「っ!!!」」」」」


マルセルムさんの言葉に、皆さん思い当たる節があるのか、今更ながら衝撃を受けていた。

まぁ、ある程度事情を把握した今ならば、かつての『ロマリア王国この国』が、水面下で文化的、精神的にされそうになった事を、遅ればせながら気付いたのだろう。

まぁ、僕も似たようなニュアンスで言っていた事なのだが、やはり同じ発言でも、誰が発言したかによって、人によってはその重みは変わるものだ。


「しかし、そうはならなかった。アキト殿と『リベラシオン同盟』が動いたからです。私自身恥ずかしい話、それは回避された後で知った事実でした。それどころか、アキト殿や『リベラシオン同盟』は、『王派閥』にとっての最大の政敵であったフロレンツ候の排除すら実現してみせました。これらは全て、『リベラシオン同盟彼ら』が御膳立てしてくれた事なのです。」

「いえいえ、別にこちらにも思惑があっての事ですし・・・。」

「だとしても、ですよ、アキト殿。しかも、それだけに留まらず、あなた方は、『トロニア共和国』や『エルフ族の国』との間をも取り持って下さいました。それに、政治的背景だけでなく、血筋の話でもややこしくなっていた『ヒーバラエウス公国』とも、貴方は見事に仲介してみせた。ケントから報告を受けていますよ、アキト殿。『大公家』の人々は、『ロマリア王国我が国』との国交の回復に非常に前向きであるとか。一体、どんな『』を使ったのですかな?」

「あ、いやぁ~、この場で語ると長くなってしまいますし・・・。」

「そ、それは誠か、マルセルム公っ!?」

「ええ、間違いなく。実は、私がマルク王に上申していた『ヒーバラエウス公国彼の国』への『外交使節団』派遣も、アキト殿が先んじて『ヒーバラエウス公国彼の国』に赴いていたからこそ決断した事なのです。アキト殿ならば、まず間違いなく、朗報をもたらしてくれると確信していたからですな。」

「「「「「っ!!!」」」」」


その新たなる情報に、今度こそ皆さんの僕の見る目が変わった様に感じていた。


「ウチらも似た様なもんですわ。」

「うむ。」

「・・・失礼だが、あなた方は何者ですかな?」

「これは申し遅れました。ウチ、いえ、私は『トロニア共和国』からの『外交使節団』、その代表を務めております、ヴィーシャ・フックスと申します。」

「同じく、私は『エルフ族の国』からの『外交使節団』の代表を務めております、グレンフォード・ナート・ブーケネイアと申す者。僭越ながら、本国では『十賢者』の一席をあずかる者でもあります。」

「で、では、あなた方がっ・・・!!!」

「お、お二方は、マルク王との謁見を望んでおられたのですが、今回の『泥人形ゴーレム』騒動を受けて、それも立ち消えになっておりました。故に、『リベラシオン同盟我がの拠点にて、しばらく御滞在頂いておりまして・・・。」


慌てて、ダールトンさんがそう説明を付け加える。

流石に身内の事ならばもとかく、他国の要人をも巻き込んで揉められると、ダールトンさんとしては立つ瀬がないからな。


「いや、それに関してはこちらの都合に巻き込んで申し訳なかった。それと、今回の件では、そのお知恵を御借りしたとも報告を受けております。そちらに関しても、重ねて御礼を申し上げる。」

「そんなん、構いまへんよぉ~。けど、何や、けったいな事で揉めとりますなぁ~?」


ニヤリと、ヴィーシャさんは、軽く先制パンチをかました。

あ、ダールトンさんが真っ青な顔をしている・・・。( ̄▽ ̄;)


「と、申しますと?」


それが、ある種の挑発であると気付きながらも、マルク王は務めて冷静に言葉を返した。


「だってそうでっしゃろ?アンタはんらは、自分等が誰に救われていたのかも分からんと、更にはその御方を無理矢理従えようとする面の皮の厚さや。旦那はんもビシッと言うたら良いモンを。まぁ、あんまり波風を立てたくなかったんやろうけど・・・。」

「はて、何の事でしょうか・・・?」

「とぼけなくともよろしいですよ、アキト殿。ティーネ達におおよその事は聞きました。」

「ああ~・・・。」

「いやぁ~、しかし、改めてとんでもない御仁ですわ、旦那はんは。武力だけやのうて、超がつくほどの資産家でもあり、権謀術数においても飛び抜けているとは。こんな事せんでも、何とかなったんやないですか?」

「いやいや、あんまり上から申し上げるのは、僕の信条に反するんですよ。それに、無理矢理従えても、お互いに良い事はありません。ですから、御説明をした上で、御自身で判断を下された方が良いと考えました。まぁ、その結果、そもそも聞く耳を持たなくとも、それはそれで良かったのですよ。それならそれで、つまりはそこまで、って事ですからね。」

「うわぁ~、こわぁ~。聞きましたか、アンタはん方?王様は、マルセルムはんの機転に感謝した方が良いですわ。この御仁は、事ですわ。もっとも、アンタはん方は、この御仁を見極めようなどと考えておった様ですが、そもそも前提条件がちゃいますわな。まぁ、ウチが言える義理ではないのかもしれまへんけど、アンタはん方、この御仁がどんな方かしっかり把握出来てませんやろ?」

「い、一体、さっきから何の話なんだっ!?」

「アキト殿の頭の中では、すでに『ロマリア王国この国』をから除外しても大勢に影響はない、と判断しているって事です。この謁見に関しても、アキト殿的には、『ロマリア王国この国』の最終審査をしていたって事ですな。“値踏み”されていたのは、実はあなた方の方なんですよ。」

「なっ!?」

「「「「「っ!!!???」」」」」


まぁ、別にこれを『』にするつもりはなかったが、結果的にはヴィーシャさん達が言ってる事も間違いではない。

一応当初は、どうにか『ロマリア王国この国』を説得出来たら良いな、くらいは考えていたんだが・・・。


ロマリア王国この国』は、それなりに長い歴史を持ち、かつ内部で揉めていた事もあって、そこにいる人材、つまりは『政治家貴族』の方々はアドリブに弱い事を想定していた。

つまりは、すでに起きていた(っつか、僕が仕掛けた事でもあるが)新たなるに乗り切れていない事も考えられたのである。

古いと言うのは、それはそれで大事なのだが、そのが、そもそも間違いだらけなのならば、それは是正していかなければならないからな。

それに、歴史的にも、新たなるに乗れなかった者達から消えていくからね。


まぁ、もっとも、それも個人差はある。

『ノヴェール家』を始めとして、『リベラシオン同盟』に賛同してくれた貴族家の皆さんは、もちろんそれぞれ思惑もあるのだろうが、そうした旧態依然としたから脱却している印象を受けた。

まぁ、この『三国同盟(仮)』設立計画は、これまでの『国』と言うとは全く異なるからなぁ~。


『三国同盟(仮)』は、発想としては向こうの世界地球における『USA』や『EU』に近しいものがある。

いや、『ロンベリダム帝国』や『ライアド教(ハイドラス派)』の勢力に対抗する都合上、一種の『軍事同盟』と言った方が適切か。

まぁ、いずれにせよ、『強国』や『大国』に対抗する為には、一国で無理ならば複数の国と協力しよう、ってのが発想の基になっている。

これならば、も、そう易々とは手出し出来ない状態になるからな。

まぁ、一種の“抑止力”ってヤツだ。

で、先程も言及したが、最終的には、この『軍事同盟』に、ハレシオン大陸この大陸の半数をに引き込みたい狙いがあった。


その手始めとして、『ロマリア王国この国』を引き込む事を想定していたのだが、これは、僕が『ロマリア王国この国』出身だった為で、別に特別な意味はない。

『ノヴェール家』や貴族家の橋渡しもあった為に、比較的容易であると考えていたからだ。


しかし、その目算は外れてしまった。

ロマリア王国この国』の上層部は、思ったよりが多かったからである。

自分の血縁上の親をつかまえてそんな事を言うのも何だが、もちろんマルク王もである。

まぁ、仕方ない面ももちろんあるのだが、腰は重いし、頭が固くて難儀していたところであったのだ。

身も蓋もない事を言うと、フロレンツ候を排除したのに、そのになんら変化が見られなかったのである。

まぁ、フロレンツ候に好き勝手やられているのも関わらず、何の具体的な成果も挙げられなかった事からも分かりきってはいた事なのだが、まさかここまでとはねぇ~。


どちらかと言うと、まぁ、もちろん歴史的背景もあるのだが、『ロマリア王国この国』よりも、外部の国の方が理解が早かったくらいだ。

故に、僕の中では、無理に『ロマリア王国この国』を引き込まなくても良いかなぁ~?なんて思っていたりもした。

当初の予定とは違ったが、『ロマリア王国この国』の後ろ楯がなくとも、独自に僕自身や『リベラシオン同盟』についてきてくれる方々がいる事が分かったからこその方向転換ではあったが・・・。

まぁ、その僕の思惑を察知したからこそ、マルセルムさんは、慌てて手を打ったのだろうが、はたして・・・。

とりあえず成り行きを見守ってみる事としようかーーー。


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