第121話 レポート 2



◇◆◇



「そ、それで、具体的にどうやって『泥人形ゴーレム』達を?いや、に関してはアキトくんの意向通り、君の対抗手段によって逃げ出した為、その正体は不明だったとしてには報告を上げる事とするが、もっとも、さとい者なら薄々『ロンベリダム帝国』の存在に勘付く者達もいるだろうがね?しかし、流石に全て秘密で何の説明もなし、と言う訳には行かないからね。」


重苦しくなった空気を変えるべく、ダールトンさんがそう話題を切り換えた。


「すみません、僕の無理を聞いて頂いて・・・。それで、方法の件ですが、これも、所謂『魔法使い』の『秘術』に関わる事なので、流石に詳細は明かせませんが・・・。」

「・・・まぁ、そうだろうな。『魔法』は便利なチカラであると同時に、危険なチカラでもある・・・。『魔法技術』を扱う者達は、己のチカラを秘匿する権利と義務がありますわ。」

「私も『魔法使い』の端くれですから、アキト殿のおっしゃる事は理解出来ますよ。」


僕がそう一応断りを入れると、『魔法技術』に詳しいドロテオさんとジュリアンさんが、そう助け船を出してくれた。

ダールトンさんも、そのお二方の意見に頷き、目線で僕に先を促した。


「簡単に要約すると、によって『泥人形ゴーレム』達の存在を保てなくしたのですよ。今回現れた『泥人形ゴーレム』達の特徴はご存知で?」

「ああ。ユストゥスさん達から報告は受けているよ。確か、額にが刻まれていて、その一部分を削ると崩壊するとか何とか・・・。原理は不明だが、その効果は実証済みであり、その事から『防衛隊』も含めてかなりその情報に助けられたそうだね?」

「ええ、その通りです。これは、とある『』に基づいた対処法だったのですが、その効果は不透明でした。もっとも、ダールトンさんのおっしゃる通り、それが効果がある事は実証されたので、場当たり的な対処は可能となりましたね。とは言え、数が数でしたので、それでも苦戦を免れませんでしたけどね。」

「ほぉ~、そんな対処法があったんやなぁ~。『トロニア共和国ウチ』も『ロンベリダム帝国』ほどではないにしても、『魔法技術』については色々と研究しとったんやけど・・・。」

「『エルフ族の国我が種族』は、そもそも『魔法技術』には疎いので、今回の件ではあまりお役に立てませんでしたが・・・。」

「いえいえ、お二方の意見は大変参考になりましたとも。」

「それに、これらの『知識』は、『リベラシオン同盟』、いや、もっと言うとアキト殿達がもたらした『知識』によるところが大きいのです。あまり大きな声では言えないのですが、『ロマリア王国我が国』は最近ようやく様々な『魔法技術』の研究を始めたばかりですからね。」


話の途中でヴィーシャさんとグレンさんも会話に加わってきて、その対処法に驚いていた。

まぁ、それはそうだろう。

今回の『泥人形ゴーレム』達に関しては、向こうの世界地球の『』がになっているから、例え『古代魔道技術』に精通していたとしても、こちらの世界アクエラの住人である人達にはに辿り着く事すら困難だろうからな。

そうした意味では、別体系の『魔法技術』を操る『異世界人地球人』のチカラは、相当な脅威である事が今回の件で改めて証明された訳である。


それと、ジュリアンさん?

いくら、これから“仲間”になる前提とは言え、『ロマリア王国自国』のデリケートな事情を、他国の使者の方に話すのは如何いかがなモノでしょうか?

いや、まぁ、事実は事実なんだけどさ・・・。


「ほぉ~。旦那はんは『知識』も豊富なんやねぇ~。」


しかし、ヴィーシャさんはそれをスルーして、僕の『知識』に関心を示した。

・・・う~ん、わざと聞かなかった事にしてくれたのかなぁ?

この女性ひと、中々表面から情報が得にくいからなぁ~。

まぁ、外交上は、むしろ有能な人選であるのだろうが。


「いえいえ、たまたまですよ。それに、『魔法技術』を調査・研究するのは個人的な趣味でもありまして・・・。その中に、たまたまそうした情報があったのですよ。」

「ほぉ~ん。」


ヴィーシャさんは、納得したのかどうか判別がつかない様な曖昧な相槌を打った。

しかし、それも、続くダールトンさんの言葉にすぐに忘れ去られる事となる。


「しかしそれでは、『泥人形ゴーレム』がしなくなったのはどうした訳だい?先程の話では、『泥人形ゴーレム』達の額の文字の一部分を削ると崩壊する事は判明している訳だが、君が何かしらな『魔法』を用いていない事は、ヘドスに一切の被害がない事からも明白だ。だとしたら、どういった手法で・・・。」


まぁ、そこに疑問を持つ事は当たり前だろう。

よほど『魔法技術』に精通した人でないと、大抵の場合は、『魔法』とはを伴うモノだとしてしまうからなぁ~。

故に、『魔法』=『攻撃魔法』・『物理干渉系魔法』を想像してしまうのだ。

いや、『魔法技術』にある程度精通した者達の中にも、その真相に辿り着いている者達はかなり稀だろうが・・・。


しかし、『魔法技術』の“キモ”は、『情報』を、あるいはさせるところにある。

一見強力な『攻撃魔法』を使用していない今回のケースでは、ダールトンさん達としては『泥人形ゴーレム』達をどうやってしたのか分からないだろうが、しっかりとそのは発揮されていたのである。

・・・ここは、少し情報を開示しておいた方が良いかもな。

の正体を秘匿する件で借りもある訳だし。


「その答えは、『幻術系魔法』を応用したのですよ。」

「『幻術』っ・・・!?」


ピクッとヴィーシャさんが明らかな反応を示した。

・・・そういえば、向こうの世界日本の『』なんかにおいても、“”は『狐火』や『幻術』を操る妖怪として登場する事も多いな。

彼女は、こちらの世界アクエラの『獣人族』(『妖狐族』)ではあるが、やはり『幻術』などと何かしら関連した存在なのもしれない。

確か、『獣人族』は『魔法技術』とは一線を画した別の『技術体系システム』(『精霊魔法』や『呪印スペルタトゥー』などの『種族』や『民族』特有の『技術』)を得意としていると聞いた覚えがあるしな。


「『幻術』ってアレだろ?相手に幻を見せたり、相手を眠らせたり、洗脳したりするって言う・・・。そんなモンでどうやって『泥人形ゴーレム』共をってんだ?」

「その疑問はもっともですが、『幻術系魔法』は一般には知られていない特徴も数多くあるのですよ。そもそも、『幻術系魔法』は、この世界アクエラの『魔法使い』では使用者も稀ですから、知らなくとも無理はありませんが・・・。」

「確かに・・・。『幻術系魔法』は、一般的な『魔法使い』からしたら、『魔法技術』を習得できなかった『落伍者』が使うイメージがありますからね。その効果に対して懐疑的な者達も多いですし・・・。もっとも、アキト殿が好んで使用する以上、実は非常に有用な『技術』ではないかと私個人は考えておりますが。」


初歩的とは言え、『魔法技術』を一通り修めている『貴族』のジュリアンさんは、そう納得の声を上げた。

いや、評価して頂いてるのは嬉しいんですが、気恥ずかしくもあるなぁ~。


「言葉でご説明するのも分かりづらいと思いますので、ここからはを織り混ぜてご説明しますね。例えば、『イリュージョン』っ!」

「なっ・・・!?」

「あれ、アキトっ!?」

「き、消えたっ・・・!!!」

「えっ・・・?旦那はんならそこにおるやないですか??」

「ふむ、確かにが、アキト殿のは感じますな・・・。これが、『幻術』、ですか・・・。」

「「「・・・へっ???」」」


ふむ・・・。

以前から『幻術』に耐性のある者達の存在は確認していたが、この『獣人族ヴィーシャさん』と『エルフ族グレンさん』のお二方には通用していないところを見ると(いや、それぞれ感知方法は異なる様子だが)、どうやら『種族』によっても耐性の有無があるのかもしれないなぁ~。


などと、新たな発見に感心しながらも、僕は説明を続けた。


「ふむ、興味深いですね。どうやらヴィーシャさんには、我々『人間族』とは異なる感知方法がある様だ・・・。グレンさんは、視覚には映らなかったが、によって察知していた節が見受けられる。これは、おそらく自然と共に生きる『種族』である『エルフ族』ならではの、野生動物との共存の中で育まれたモノなのでしょう・・・。」

「おおっ・・・!」

「おわっ!消えたと思ったら、また出てきたっ!!」

「こ、これが『幻術』、ですか・・・。実際に見ると、とんでもない『技術』ですね・・・。我々『人間族』は、に頼る傾向にある。その内の一つを、いきなり潰される訳ですからな・・・。」


ジュリアンさんが感心した様に呟いた。

確かに、『幻術系魔法』にはそうしたメリットがある。

ドロテオさんは、かつては『上位冒険者』として名を馳せていたにも関わらず、瞬間的には思わずを頼っていた。

ドロテオさんならば、グレンさん同様にで僕の存在を感知出来たにも関わらず、である。

これは、ドロテオさんが、すでに現役を退いている事も大きいが、環境によるところが大きいのだ。


森での環境下ならば、を消したり偽ったり、を感知したりは、日常的に行わなければならない。

そうでなければ、生きていけないからである。

故に、自然と共に生きる『エルフ族』は、そうしたに敏感だし、上位の『冒険者』や『狩人ハンター』達も、自然と『気配感知スキル』や『気配遮断スキル』を体得する。


しかし、『人間社会』で生きる上では、そうした『スキル』は必要なくなる。

いや、場合によっては、あまりよろしくない『職業』の方が使用する事もあるが、『人間社会』では様々な事を“共有”する必要が生じるからである。


であれば、“百聞な一見に如かず”のことわざにもある通り、という行為は非常に重要になってくるのである。

それを日常的に繰り返し行っていると、咄嗟の場面での事をスッパリ忘れ去ってしまうのである。

これが、所謂『スキル』の落とし穴なのである。

使のと、使のは全く別であると言う事なのだ。

まぁ、それはともかく。


「今のが、典型的な“”に作用する『幻術』なのですが、実はもう一つ、『幻術系魔法』には“”に作用『幻術』も存在するのですよ。」

「ほぅ・・・。それは聞き捨てなりまへんなぁ~・・・。そんなんウチかて初耳ですよ?」


ふむ。

やはりヴィーシャさんは『幻術』に関しては一家言持っている様だな。

ヴィーシャさん、あるいは『妖狐族』は、『幻術使い』である可能性が更に高まったな。


「それが、存在するのですよ。実際にお見せしましょう。【イリュージョン】っ!」


僕は、再び『魔法』を発動させる。

同じ『イリュージョン』であるが、今度はヴィーシャさんにもグレンさんにも感知されない筈である。


「また、それかいなっ・・・。えっ!!!???」

「な、何っ!?こ、今度は視覚どころか、アキト殿のすら感知出来んぞっ!!??」

「ウチもや・・・。完全に旦那はんがえへんっ・・・!!!」

「「「・・・・・・・・・へっ???」」」

「どうした訳やっ!完全に消えてしもたなんて言わんよなぁ~?」

「当然ですよ。僕はに居ます。ですが、は出来ないでしょう?」


声はすれどと、姿は見えず。

キョロキョロと辺りを見回すダールトンさん達を眺めながら、僕は『魔法』を『解除キャンセル』した。


「ひゃあっ!出るなら出ると言うて下さいよっ!!」


ビクッとケモ耳と尻尾を逆立ててビックリするヴィーシャさんの様子は、割と可愛らしかった。


「オ父様ハ“S”、ト・・・。」(メモメモ)


ずっと黙っていたと思ったら、エイルがそんな事をブツブツと呟きながら何事かメモっていた。

・・・うん、違うよ?

いや、今はシリアスモードだから、あえて突っ込まんけれども。


「今のが、もう一つの『幻術系魔法』です。僕は、こちらの方を、便宜上『精神干渉系魔法』、いえ、より厳密に言うと『』と定義しています。」

「『精神干渉系魔法』・・・?」

「それに『』、ですか・・・?」

「それがさっきの『幻術』とどうちゃうの?確かに、ウチでも視えへんかったけど・・・。」

「私もアキト殿のを感知出来ませんでした・・・。」


未知の事象に、ヴィーシャさんとグレンさんも驚愕の表情を浮かべていた。


「『幻覚』などが見える『メカニズム』には、大まかに二通りのパターンが存在します。それが、先程言った“”に作用するモノと、“”に作用モノですね。“”に作用するモノは分かりやすいと思います。特に、視覚、目のを利用するモノが多いですからね。先程の例ならば、光の屈折などを利用して、あたかも姿を消した様に見せ掛ける。これが、一般にも知られる『幻術』の基本パターンです。もっとも、実際には僕は姿を消していた訳ではありませんから、耐性のある者には看破されますし、を感知する事に長けた者なら、それによって打ち破る対処法が存在します。」

「「「「「(コクコクッ)・・・。」」」」」


僕が解説を始めると、皆さん真剣に聞き入っていた。

な、何だか学校の先生にでもなった気分だなぁ~。

いや、僕は仲間達に結構レクチャーする事も多いので、説明には慣れているつもりだけど・・・。


「ところが、もう一つ、『幻覚』を見せる大きな要因が存在します。それが、“脳”の機能障害です。」

「「「「「“脳”・・・?」」」」」


それがどうかしたのか?、と言う表情を皆さんが浮かべる。

あ、そう言えば、こっちアクエラでは『回復魔法』が存在する弊害で、『医学』はそこまで進んでいないんだよなぁ~。

いや、向こうの世界地球でも“脳”研究の歴史はかなり古いらしいから、『医学』がそこまで発展していないこちらの世界アクエラとは言え、その存在ぐらいは知っているだろうが・・・。


「失礼。では、分かりやすく言い換えましょう。例えば、この中でもお酒を嗜む方はいると思います。あるいは、本人は飲まなくとも、周囲の人間で飲まれる方がいらっしゃるかと思います。では、こんな話を聞いた事はありませんか?誰々が、とか・・・。」


『基礎知識』の差を失念していた僕は、そうすぐさま軌道修正を図る。


「ああっ!酔っぱらうとたまに起きるよなぁ~。」

「確かに・・・。それに、呂律が回らなくなったり、足元がふらついたりもありますよねぇ~。」

「そうですね・・・。深酒をすればするほどそうした話は聞きます。もっとも、『貴族』の会合なんかで、そこまで飲まれる方は稀ですが・・・。」

「そら、“仕事”の一種やから、当たり前やろ。けど、私的な会合なら、そうした話も割と聞くなぁ~。生憎、ウチはお付き合い程度にしか嗜まんけど・・・。」

「ふむ・・・。それが、どう関係してくるのですかな?」


良かった。

これなら話が理解出来るだろう。

ここに居るのは、すでに成人を果たし、更にお付き合いも多い人達だろうからな。


「ええ。それは、お酒を摂取した事によって、先程言った“脳”に影響を与えるからなのです。先に断っておきますが、お酒はある程度ならば心身に良い影響を与えるモノです。しかし、摂取する量が増えるにつれて、そうした障害が出やすくなるのですよ。」


一応そうフォローしておこう。

僕は、今現在はこの世界アクエラ基準では成人しているが、『前世』の知識もあいまって、少なくとも二十歳ハタチを越えるまでは飲まない様にしている。

しかし、その僕の価値観を他者に押し付けるつもりは毛頭ない。

中にはお酒がお好きな人もいるだろうし、お酒は絶対的な悪であるとした場合、角が立つ可能性もあるからね。

それに、実際に向こう地球の研究データによると、ある程度の摂取ならば、身体機能にプラスに働くと言うデータもあるそうだからな。

もちろん、何でも行き過ぎれば“毒”となるけどね。


「ここで重要なのは、。ここで先程の実演を振り返ってみますが、始めに行使した『幻術』。これは、“五感”、特に視覚に作用するを起こす事で、対象者に『幻覚』を見せる手法でした。そして、その次に行使した『幻術』。こちらは、実際には何の変化も起きていませんが、を生じさせる事で、『幻覚』を見せる手法なのです。」

「そうかっ!!!酒による酩酊状態では、そうした『幻覚』みたいなモノが見えるが、実際には誰かが二人になった訳じゃないっ!」

「なるほど・・・。つまり、酒が要因となって、摂取した者本人の、その“脳”?、に影響を及ぼして、『幻覚』が見えると言う訳ですね?」

「その通りです。これは本人の身、“脳”自体に起こった現象ですから、それを打ち破る事は困難ですよ。故に、『幻術』に耐性をお持ちな様子なヴィーシャさんや、高いレベルの『気配感知スキル』をお持ちのグレンさんでさえも、看破出来なかったのですね。」

「なるほどなぁ~。」

「お、恐ろしいモノですね。その、『精神干渉系魔法』、いえ、『』?、と言うのは・・・。掛けられた対象者は、一切の抵抗が出来ない・・・。」

「まぁ、実際には様々な方法によって『抵抗レジスト』する事は可能ですが、無理ですね。そもそも、これの恐ろしさは隠密性の高さです。『攻撃魔法』の様に、明らかに攻撃を受けた事を認識出来ないので、『抵抗レジスト』自体が困難となるのです。常時、この場合は僕ですが、『術者』を上回る『』を放っていれば話は別ですが・・・。」

「そんなん、出来る訳やろぉ~。それって、つまり常に『魔法』を操ってる状態って事やろ?」

「『魔法』の発動には、集中力や精神力を伴います。瞬間的ならばともかく、ずっとそのままと言う訳には・・・。」

「そりゃそーだ。つまりは、実質的には防ぐ事は不可能って事じゃねーかっ!」


ところがそうでもないんだよねぇ~。

現時点では、この世界アクエラでは、僕を上回る『』を持つ者、『魔法技術』に留まらず、『霊能力』、『神霊力しんれいりょく』を持つ者は数が限られてはいるが、いる事はいる。

そうした存在達には、この『技術』も通用しないのである。

まぁ、それは今は関係ないので割愛するが。


「しかし、ちょっと待ってや。それと今回の『泥人形ゴーレム』と、どう関係してくるっちゅ~のん?」

「それが、先程言った『』に関わってくるのですよ。確認ですが、僕が先程行使した『幻術系魔法』の『精神干渉系魔法』、『情報改変系魔法』は、対象者の“脳”の機能に影響を与えましたね?」

「「「「「(コクコクッ)・・・。」」」」」

「これを言い換えると、対象者の“脳”の『と言う事にも繋がるのですよ。先程の例では、僕を認識。では、例えば、これを応用して、『泥人形ゴーレム』の額の文字の一部分を削る様に、『』をとしたら、どうでしょうか?」

「っ!!!そうかっ!先程も述べたが、それは『泥人形ゴーレム』の弱点であり、実際に効果も認められている。それが可能ならば、『泥人形ゴーレム』達は最初から存在を保てない、と言う訳かっ!!!」

「その通りです。物理的にも対処は可能でしたが、数が数でしたので、一々倒していては時間が掛かり過ぎる。その間に被害も更に増えてしまった事でしょう。また、大規模な『広域殲滅魔法』によって一瞬でケリを着ける事も可能でしたが、これはヘドスの街や人々をも巻き込んでしまいますから論外です。それ故に、物理的な手法ではなく、こうした搦め手を選択したのですよ。まぁ、実際に行使する事は、僕としても初めての試みでしたから、その結果も正直不透明でしたがね?まぁ、勝算はあったのですが・・・。」

「何という事だっ・・・!」

「『幻術』にそんな使い道があったなんてっ・・・!」

「・・・いや、これは旦那はんが特殊なだけや。この際正直に言いますが、ウチも『幻術』の『使い手』や。もっとも、ウチが使用出来るんは『魔法技術』とは別体系の『技術体系システム』やけど、『なんて聞いた事もないで・・・。」


やはりヴィーシャさんは、僕の予測通り『幻術使い』だったか・・・。

しかし、ヴィーシャさんの言う通り、『幻術系魔法』では、ここまで広範囲かつ複数の対象の『事は不可能である。

誰かに真似されても困るので、意図的にそこは言わなかったのだが、この『』には、強大な『エネルギー』と、“場”を掌握する『技術』が必要なのである。

具体的には、今回の場合はセレウス様の『神霊力エネルギー』と、アルメリア様の『領域干渉』が必要だった。

仮に僕一人で同じ規模の『』を行う場合は、『精霊石せいれいせき』を用いた『結界術』が必要になる。

つまりは、事前に入念な準備が必要になってくるのである。

もっとも、これは知られたとしても、どうこう出来る事でもないんだけどね。


「まぁ、『魔法技術』は奥が深いですからね。と、まぁ、『泥人形ゴーレム』達をのはこうした理由からです。今現在では、自体が撤退した為に、すでに僕の『魔法』も『解除キャンセル』していますがね。」

「・・・話は概ね理解出来たよ・・・。もっとも、報告するにはハードルが高くなってしまったがね・・・。何て報告しようか・・・?」


僕が話をそう纏めると、ダールトンさんは頭を抱えていた。

・・・まぁ、それはそうか。( ̄▽ ̄;)

今の話をそのまま報告して貰っても構わないが、それだと理解を得るまでにかなりの時間を要するだろう。

『報告書』を上げる立場となると、四苦八苦してしまうわな。


「いっそ、差し障りのない報告を上げて、詳細はアキトに丸投げしたらどうですか?今回の件でユストゥスさん達が『王都』・ヘドスの『防衛隊』に協力した事は周知の事実ですし、その事からおそらく『リベラシオン同盟ウチ』に褒賞の話なんかも出てくるでしょうからな。(ボソボソッ)」

「確かに・・・。治安維持の協力に努めた『リベラシオン同盟』は褒賞されてしかるべきでしょう。でなければ、『王家』の面目も保てませんしね。そうなった時に、ダールトン殿の代わりにアキト殿を代表者代理として立てると言う訳ですな・・・?(ボソボソッ)」

「ふむ・・・。それが良いかもしれませんね・・・。向こうとしても、ヘドスの危機を救った『救国の英雄』には是非とも直接会ってみたいでしょうから、否とは言いますまい・・・。(ボソボソッ)」


うん、何やら不穏な相談事をダールトンさん、ドロテオさん、ジュリアンさんでしているが、バッチリ聞こえてますからね?

・・・しかし、まぁ、それも仕方ないかね?

あまり目立つのは好きではないが、それも今更だしなぁ~。

もしそうなった場合、ダールトンさん達の手前断る訳にはいかんか・・・。

望み薄だが、そもそも呼ばれない事自体を祈るとしようーーー。





















「ところで旦那はん。そちらの可愛らしいお嬢さんは旦那はんの従者さんでっか?ウチにも紹介してくれへん?」

「あ、私も是非に。どうやら、皆さんとは長い付き合いになりそうですからな。」


ダールトンさんらがボソボソッと相談事をする傍らで、ヴィーシャさんとグレンさんの興味はエイルに移った様だ。

まぁ、流石に他国の人間であるお二方が、ダールトンさんらの相談事に首を突っ込む訳にはいかんだろうからな。


「ああ、ご紹介が遅れました。彼女は・・・。」

「オ初ニオ目ニ掛カリマス、ヴィーシャ・様、グレンフォード・様。私ハ、エイル・ストレリチアト申シマス。」


・・・うん、エイル?

何で勝手に僕の、っつか、アルメリア様のファミリーネームを名乗っているのかな?

いや、まぁ、現在の彼女は、僕の『アストラル』から生まれているところもあるから、血筋こそ繋がっていないが、まぁ、娘や妹みたいなところはあるんだけどさ・・・。


「これは御丁寧に・・・。ストレリチアっちゅー事は、旦那はんの肉親か何かですか?」

「イエイエ、ヴィーシャ・様。私ハ、オ父様ノ『愛人ラマン』デシテ・・・。」

「ちょおぉぉぉぉいっ!な、何言ってんの、エイルっ!?」

「・・・???何カオカシカッタデスカ?」


キョトンッとした顔(いや、エイルには表情を浮かべる機能はないのだが)を浮かべてこちらを窺い見るエイル。

うぅむ、エイルにはまだまだ『人間社会』への『常識』が足りないのかなぁ~?

いや、先程の言動なんかも鑑みると、確信犯である可能性も否定出来んが・・・。


「だ、旦那はんっ!?ま、まさか、自分の娘を手込めにっ・・・!!??」

「いやいや、何言ってんすか、ヴィーシャさんっ!どう考えても、僕の年齢でエイルくらいの子供がいる訳ないっしょっ!!!」

「う~む。“英雄色を好む”と言いますが、アキト殿も御多分に漏れずそうなのですなぁ~。いえいえ、何も申されますな。私も、若い時分はブイブイ言わせていたクチでしてな・・・。」

「いやいや、勝手に納得しないで下さいよ、グレンさんっ!っつか、ティーネが聞いたら卒倒しそうな事暴露せんで下さいよっ!後、表現が古いっ!!」

「不潔、不潔やで、旦那はんっ!!!」

「半笑いで言わんで下さいっ!ってか、ヴィーシャさんはすでに気付いてますよねっ!?」

「“不潔”ッテ何デスカ?」

「エイルは知らんでも良い事だよっ!」

「あれは、今から200年ほど前の話でして・・・。」

「急に語り出さないで下さいっ!っつか、あんまり聞きたくないっ!!」


あるぇ~(・3・)?

もしかしなくても、また“フリーダムな知人ボケ”が増えた感じ??

前にも考えた事だが、あえてもう一度言わせて頂こう。

急募、ツッコミ役。

宛先は、アキト・ストレリチアまでお願いしますっ!!!(割と切実に)


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