第115話 『泥人形【ゴーレム】』、襲来
みなさん、ご無沙汰しております。
アキト・ストレリチアです。
さて、大変な事態になりましたね。
まさか僕らの不在のタイミングで、『王都』・ヘドスを謎の一団が襲撃しようとは、完全に予想外でした。
いえ、言い訳をさせて頂くなら、別に油断していたと言う訳ではありません。
今現在の
それはそうでしょう。
それが、小規模とは言え、国同士の正面切っての『軍事衝突』が起これば、否が応にも緊張感も高まろうと言うものです。
しかし、それ故に、僕はその後の展開として、各国は周辺国家に対する『外交』に力を入れる筈と読んでいたのです。
身も蓋もない言い方をするならば、まぁ、『ロンベリダム帝国』側の周辺国家は『ロンベリダム帝国』側に同調する事は目に見えていました。
と、言うよりも、そうしなければ、『ロンベリダム帝国』からの『外交圧力』をかけられてしまうからです。
故に、生き残りをかけるならばそうせざるを得ない事情がある訳ですが、その他の国家はそれに乗る必要はありません。
場合によっては、『ヒーバラエウス公国』の
何故なら、これは各々の周辺国家が黙っていないからです。
ある種の『同調圧力』ではありませんが、今現在の情勢を鑑みれば、『ロンベリダム帝国』やその周辺国家を除く各国間で歩調を合わせるべき場面でしょう。
下手に『ロンベリダム帝国』側に呼応する形で他国を侵略すれば、間違いなく窮地に立たされるのは仕掛けた側の国だからです。
しかし、逆を言えば、それを逆手に取って各国間の連携を乱すにはうってつけのタイミングでもあります。
お互い疑心暗鬼になっている様な状況ですから、各国の『諜報部隊』が暗躍する場面だと僕は読んだ訳ですね。
事実、僕のもとにも、『リベラシオン同盟』を介して様々な
それ故に、
しかも、
いやぁ~、『アストラルリンク』だけでなく、『
まぁ、これに関しては少々疑問も残りますが。
“定例報告”の際にも、もちろんこの『
それらも合わせて考えると、その襲撃してきた謎の一団が何かした可能性もありますので、かなり要注意であると言えますね。
こちらの『手札』を覗き見る何らかの手段があるのかもしれませんし、『技術』的にも、こちらの妨害を図れる手段が存在するのかもしれませんからね。
そのわりには焦ってないじゃないかって?
いえいえ、これでも内心は結構慌てていますよ?
その謎の一団がどの程度の規模で、またどの程度の戦力を持っているから知りませんが、とは言え、今現在のハンス達に敵う相手は
しかし、それは僕の仲間に限定した話ですし、アイシャさん達への『通信』の様子から察するに、かなり不味い状況である事が窺えます。
僕の仲間達はともかく、『王都』・ヘドスには、それなりに被害が出ているのかもしれませんからね。
故に、もちろん内心の焦りはありますが、忘れてはならないのが、今の僕は『公式』に『ロマリア王国』からの『外交使節団』、その『先遣隊』の長を務めている事なのです。
なので、『外交使節団』の『本隊』に引き継ぎをしないままに『
もっとも、逆に言うと、僕さえ残っていれば、ある種事足りると言う一種の極論によって、アイシャさん、ティーネ、リサさん、それにエイルには、一足先に『ロマリア王国』に戻って貰っていたりします。
彼女達の足ならば、タルブ~ヘドス間を2~3日で走破出来るでしょう。
もちろん、全速力が前提ですがね・・・。
ちなみに、タルブ~ヘドス間は、馬車で1~2週間ほど、一般的な『冒険者』の足で約一ヶ月ほどかかる距離です。
その事からも、彼女達の身体能力のデタラメさが分かりますね。
更にちなみに、僕なら2~3時間で到達出来たりします。
これは、僕には愛用の杖を利用して、飛行機の如く高速移動が可能だからです。
陸路とは違い、空路では障害物は関係ありませんので、やはり空を飛べるのは大きな利点の一つですよね。
と、これらの要素もあり、僕の中では想定外の事態とは言え、そこまで目に見えて狼狽する醜態を晒さずに済んでいたりするのです。
さて、長々と説明してきましたが、今はアイシャさん達を送り出して翌日の夕刻。
ようやく、『ロマリア王国』側の『外交使節団』本隊がタルブ入りしました。
素早く引き継ぎを済ませて、一刻も早くヘドスに戻るとしましょう。
追伸。
やはり『政治』に関わると面倒事が増える事が改めて分かりました。
いや、
今回の教訓は、“働いたら負け”、ですかね(笑)。
◇◆◇
「・・・以上が、『
「いえいえ。非常に分かりやすくまとまっていると思います。これならば、このままアキト殿が『
僕は今、タルブ入りした『外交使節団』本隊の団長であるケント・スピーゲルさんと、引き継ぎの為の会合を行っていた。
ケントさんは、30代そこそこの比較的若手の貴族であるが、『ロマリア王国』においては、フロレンツ候と勢力を二分していたマルセルム公爵の懐刀であり、かなり名の通った人物として知られているらしい。
もちろん、ケントさんも、所謂『王派閥』に属する貴族ではあるが、今現在の『ロマリア王国』では、『派閥』は形式的なものに変化している。
これは、『貴族派閥』筆頭であったフロレンツ候が処罰された影響もあるのだが、『リベラシオン同盟』と協定を結んだ『ノヴェール家』が、方々に根回しをした結果でもあった。
今現在の
とは言え、『政策』における対立は当然ある訳で、一応の組織としての『派閥』はやはり必要になってくるが。
で、ここからは僕はノータッチだが、おそらく『ノヴェール家』の『交渉』に応じなかった『貴族派閥』、それもフロレンツ候と深く関わりのあった貴族達は、所謂『粛正』の憂き目に合っている事と思われる。
まぁ、『ノヴェール家』と合流するまでは、僕らも非合法ながらそうした活動に従事していた事はあるけどね。
ちなみに、僕自身はマルセルム公爵やケントさんとの面識はなかったのだが、『ノヴェール家』や『リベラシオン同盟』を介して、噂は聞き及んでいた。
そして、ケントさんとはこうして今回初対面を果たす事となった訳であるが・・・。
「お褒めに
「ハッハッハッ。それは、おっしゃる通りですな。アキト殿が如何に優れた英傑でも、本来は『ロマリア王国』に委任された代表者ではありませんからなぁ~。そうでなければ、我らの仕事が無くなってしまいますよ。とは言え、『
「はぁ・・・。恐れ入ります。」
ケントさんは、かなり冷静な観察眼を持つ人の様だ。
おそらく、僕と同じく、僕に関する『情報』は事前に仕入れているのだろうが、それを踏まえた上でも、自分の
しかも、頭も回るし、口も達者だ。
これならば、『外交使節団』の長に据えるのも納得の人選である。
「それに、アキト殿にはアキト殿にしか出来ない事がおありでしょう?誰かに成り代われるものは、我ら
「・・・やはり、そちらにも『情報』が入っておりますか?」
そう僕が水を向けると、ケントさんはコクリッと頷いた。
「ええ。これでも、私は特使としてのそれなりに高い『地位』を与えられておりますからな。特殊な訓練を施された『伝書鳩』を通じて、本国とも定期的な情報交換はしておりますよ。当然、各方面からの妨害工作も考慮して、しっかりと暗号化を施してありますがね?」
「なるほど。で、そこには何と?」
「とりあえず、国家存亡の危機と言う事はありませんから御安心下さい、アキト殿。そうでなければ、いくら重要なお役目とは言え、私がのんきに『
「そうですか・・・。」
それはある程度想定していた。
『外交交渉』に訪れていて、その肝心の『国』がすでに潰れていました、ではお話にならないからな。
『ヒーバラエウス公国』側にも、そうした『情報』は入っていない様だしね。
「それに、今現在の『
「なるほど・・・。了解しました。では、後は『
「どうぞお気になさらずに、アキト殿。本来、『外交交渉』は我々の領分ですからな。まぁ、アキト殿達のお陰で、各方面との信頼関係の構築の下地が出来ているのは、ある意味では助かりましたが。この分ですと、私達の仕事も、わりと早期に解決出来るかもしれませんな。ですので、先程も述べましたが、アキト殿はアキト殿にしか出来ない事をなさって下さい。」
「了解しました。ありがとうございます。」
その後、ケントさんを『
まぁ、個人的には『グーディメル子爵家』が中心となって発足した『農作業用大型重機製作プロジェクト』の詳細を詰められなかったのは残念であるが。
とは言っても、まだ『農作業用大型重機製作プロジェクト』は、国同士で協議を進める段階には至ってないけれど。
まぁ、こちらもセドリュカさんやエリックさん、ジョルジュさんらにお任せして大丈夫だろう。
そんなこんなで、アイシャさん達を送り出してちょうど3日目の朝、ケントさんらに見守られる格好で、何だか慌ただしく僕は『
◇◆◇
「色々と世話になったな、アキト殿。グスタークの事は残念だったが、私もこの通り元気を取り戻したし、ドルフォロとディアーナも大きく成長した。そちらの事態が落ち着いたら、また『
「はい、アンブリオ大公殿下。まだまだやり残した事もありますので、必ず再び戻って参ります。」
「こちらの事は気にせずとも良いぞ、アキト殿。スピーゲル卿と協議の末、必ずや良い報せをお届けすると約束しよう。」
「はい。ドルフォロ公太子殿下。どうぞ、よろしくお願いいたします。」
「アキト様、本当にお世話になりましたわ。『農作業用大型重機製作プロジェクト』に関しては、
「よろしくお願いいたします、ディアーナ公女殿下。一刻も早く、『
アンブリオさん、ドルフォロさん、ディアーナさんと別れの挨拶をする僕。
何だか、一国の主要人物に見送られるなんて、偉い人間になった様な錯覚に陥るなぁ~。
「・・・ところでアキト殿。『
そこに、ケントさんがそう問い掛けてきた。
うむ、タイミングをよく心得ているな。
こういう旅立ちって、見送られる側としては、意外と移動しづらいんだよねぇ~。
いや、別れを惜しんでくれるのはありがたいんだけどさ。
「ああ、僕は
「・・・・・・・・・はい?」
僕が愛用の杖を掲げると、ケントさん、そしてアンブリオさん達もポカーンッとしていた。
・・・あれ?
『飛翔魔法』は確かに
「ご、御冗談ですよね、アキト殿っ!?
「ああっ、そういう事ですかっ!!ならば問題ありませんよ。僕の杖は特注品ですから、途中で『
「いえ、そういう事ではなくっ!いや、それも確かに凄いんですけどっ・・・!!」
・・・何だか会話が噛み合っていない様な気がするが、まぁ、ここで揉めていても仕方ないし、僕はケントさんの心配を払拭する為に、『飛翔魔法』を詠唱する。
「アキト・ストレリチアの名において命ずる。
風と大気の精霊よ。
古の盟約に基づき、我に翼を与えよ。
発動せよ。『フライ』!」
「「「「っ!!!!」」」」
僕は、所謂一般的な『魔女スタイル』、杖にまたがった状態でフヨフヨと浮き上がった。
以前にエキドラス様と戦り合った時には、杖をサーフボードかスノーボードの様に操っていたが、長時間乗り続けるには、このスタイルが一番楽なんだよねぇ~。
「すいません。あんまりのんびりもしていられないので、ここら辺で失礼します。皆さん、事態が落ち着いたら、またお目にかかりましょう。
じゃ、いくぞっ、『
『
ホバリング状態にあった僕は、そう杖に命令を下すと、ビュンッと一気に加速して行くのだったーーー。
・・・
「おおっ!?もう見えなくなってしまったぞ!!」
「・・・あいかわらず、
そんなのんきな感想を言い合うアンブリオ大公殿下とドルフォロ公太子殿下。
いやいや、そんな問題ではありますまいっ!?
「あの、スピーゲル卿?お顔色が優れませんけれど、どこか御加減でも・・・?」
「・・・あ、ああ、い、いえ、公女殿下。どうぞお気になさらずに。噂には聞き及んでいましたが、アキト殿の非常識ぶりに驚いていただけですから・・・。」
「ああ、なるほど。」
私の驚きの感想に、ディアーナ公女殿下は納得した様に頷いていた。
確かに、
しかし、それは上位の『魔法使い』達に限定した話で、しかも、長時間の連続運用など不可能に近い、と言われている。
なぜならば、『魔法』とは『魔素』と呼ばれるエネルギーを利用する関係上、非常に制御が難しいからである。
『基礎四大属性』でもそうであるが、『上位』・『奥義』とも呼ばれる『魔法』ともなると、その制御は非常に複雑になる。
まぁ、それ故に、『術式』や『詠唱』・『印』などによって補助する事となる訳だが、当然『術者』によっては、その『効果』に個人差が出てきてしまう訳である。
これは、『魔素』を制御する『技術』に『術者』によって個人差が生じる為でもある。
そのもっとも分かりやすい例が、『ボール系』や『アロー系』の『球』や『矢』の数が、『術者』によって変動する事であろうか。
それを踏まえた上で、『飛翔魔法』は、その複雑な制御を常に行わなければならないのだ。
それ故に、長時間の運用は不可能と言われているのである。
『飛翔魔法』は、一時的に
故に、移動手段にはなりえない。
これが、ある種
しかし、アキト殿は、その常識をいとも簡単に覆してみせた。
いや、アキト殿のおっしゃる通り、あの杖が『魔素』の効率的な収束・集中に非常に優れた『魔法発動体』である事は分かるが、それでも、その制御を行っているのは、あくまでアキト殿ご自身である。
それから鑑みても、アキト殿が、『魔法使い』としても我らの常識で推し量れるレベルをはるかに越えた『術者』である事が窺える。
伊達に『ルダ村の英雄』と呼ばれていない訳である。
それに、実際に会ってみて分かったが、アキト殿はその容姿もさる事ながら、特筆すべきは、やはりその知性とカリスマ性であろう。
事前に知ってはいたが、『
それを、さも当然の如く遂行し、しかも、それに驕った様子もない。
一国の重要人物と個人的な友誼を結んでいるのも、なるほど、納得である。
アキト殿には、
実際には、彼にも何かしらの思惑がある事は理解しているのだろうが、それが自身にとって、また『
普通なら、その才に嫉妬する事もあるかもしれないが、ここまでレベルが違い過ぎると、もはやいっそ清々しくすらある。
彼と争う事の愚かしさを、痛感せざるを得ない、と言えば良いだろうか?
私自身も、彼に会うまでは、彼をどうにか利用出来ないものだろうか?と、分不相応に考えていたが、彼を利用するなどとおこがましい考えであったと今では痛感している。
少なくとも、彼は私程度の手に負える人物ではないだろう。
ならば、我ら
「さて、
「はっ!同感であります、アンブリオ大公殿下。」
「とは言え、アキト殿のお陰で大枠は固まりつつあります。後は詰めの協議と言ったところでしょうな。」
「そうですわね。」
さて、ここからは私の仕事だ。
せいぜい、アキト殿に呆れられない程度の働きは務めてみせないとなーーー。
◇◆◇
「えぇいっ!まだヘドスを襲っている連中の情報が掴めんのかっ!?」
「ハ、ハッ!申し訳御座いません、ティオネロ皇太子殿下っ!!何分、一切の手掛かりが得られませんでっ・・・!!!」
「それを何とかするのがお主らの仕事だろうっ!?撃退だけならば『冒険者』でも出来る事だぞっ!!」
「面目次第も御座いませんっ・・・!!!」
「これ、ティオネロ。少々言葉が過ぎるぞ。」
「しかし、父上っ!こうしている間にも、民衆が被害に遭っているのかもしれないのですよっ!?ならば、一刻も早く大元から叩きませんとっ!!!」
「それは彼らとて分かっておるわ。しかし、今回の襲撃者はあまりに特殊。『魔術師ギルド』にも協力を要請しておるが、それでも情報が少な過ぎるのだ。」
「・・・『
「・・・うむ。今、国中の、いや、他国の御来賓の方々にまで情報提供を募っておるが、それも芳しくない。撃退自体は、注意すればそこまで難しくない様だが、誰が操っておるのか、また、どの程度操る事が出来るかも分からん。」
「全然分かってないじゃないですかっ!」
「だから、情報が全然ないのだ。『
「失伝した『魔法技術』、ですか・・・?」
「そうかもしれんし、それともまた異なるかもしれん。・・・あるいは、彼の『魔獣の森の賢者』や、『ルダ村の英雄』ならば何か知っておるかもしれんが・・・。」
「そうですよっ!彼らは何をしておるのですかっ!?」
「『魔獣の森の賢者』は、数年前から行方不明だ。『ルダ村の英雄』は、隣国『ヒーバラエウス公国』に赴いていると『リベラシオン同盟』から報告が上がっておる。『リベラシオン同盟』自体は、今回の襲撃事件に協力してくれてはおるが・・・。」
「肝心な時に国を不在にしておるとはっ・・・!!!」
『ロマリア王国』の『王都』・ヘドスにある『宮殿』。
『ロマリア王家』の一族が住み、また、『
そのとある一室にて、『
数日前から、突如『王都』・ヘドスを襲撃してきた謎の一団の対応を協議する為である。
とは言え、今の会話からも分かる通り、状況は思わしくなかった。
いや、人的被害や物的被害自体は、今のところ数の上ではそう大した事はない。
しかし、襲撃者の正体も目的も、何もかも分からないのである。
仮に、これが
さっさと大元を叩いて、残党を駆逐すれば良いのだから。
しかし、襲撃者の正体も目的も分からないでは、そもそも何をもって解決かが見えにくくなってしまう訳である。
それ故に、襲撃者の正体を探ろうと方々に協力を要請してはいるが、それも芳しくないのだ。
となれば、当然対応が後手後手に回り、連日連夜の襲撃に疲労や不満はピークに達してしまう訳である。
そう、今のティオネロの様に。
これが、上層部だけならばまだマシだが、当然市民からもそうした声が上がる訳だ。
『治安維持部隊』は何をやっているんだ。
はては、『
疲労や不満は、後々不信感となって現れる。
それ故、分断を図る上では、今回の襲撃はすでにある程度成功していると言えた。
ちなみに、今現在の
これは、かつての『テポルヴァ事変』を引き起こした『カウコネス人』達が用いていた『
これは良くある事だが、自らの信仰する『宗教』を広める上で、既存の『宗教』を弾圧する事がしばしば起こるのだ。
また、その逆も然りだが。
その末で、特に
また、『魔法技術』の一時失伝の歴史を経て、『現代魔法』へと規格を一元化する上で、細かい技術は取りこぼされた経緯もある。
それが、『古代魔道技術』であったり、『結界術』、『
当然、知らないものは対処のしようがないので、今は『
重要な会議にも関わらず、この場に三名しかいないのもその為である。
そもそも、何も分かっていないのに、会議もへったくれもないからである。
で、その状況を打開出来るかもしれない存在として、『魔法研究家』としてのアンダーカバーを持ち、『魔獣の森の賢者』として名が知られていたアルメリアや、その養子で弟子でもあり、彼の『ルダ村の英雄』たるアキトの名も挙がった訳だが、残念ながら、今現在の『
それにティオネロは不満の色を見せていた。
「ごっ、御報告申し上げますっ!!!」
とそこへ、『伝令役』の近衛兵が飛び込んで来た。
「どうしたっ!?」
「そ、それが、再び『
「ならば、さっさと『防衛部隊』を回して、駆逐すれば良いだろうっ!」
「これ、ティオネロッ!」
苛立った様子でそう吐き捨てるティオネロに、マルク王は強めに嗜めた。
まだまだティオネロは、精神的に未熟な様である。
「い、いえ、もちろん『防衛部隊』は出動しますが、その数がこれまでとは桁違いでしてっ・・・!優に万は越えていると思われますっ!!!」
「「「な、なんだとっ!!!???」」」
しかし、続く『伝令役』の言葉に、マルク王も、『治安維持部隊』のトップも、ティオネロ同様に驚愕を
ー本気で『王都』を盗りに来たかっ!?ー
マルク王は素早くそう考えると、矢継ぎ早に指示を出した。
「至急、『防衛戦力』を『
「「ハッ!!!」」
「さて、どうなる事やら・・・。」
「父上・・・。」
慌ただしく出ていく『治安維持部隊』のトップの男と『伝令役』を眺めながら、マルク王は額に一筋の汗を流しながらそう呟いた。
それを、ティオネロはただただ見つめる事しか出来ないでいたーーー。
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