第107話 追記~後日談 その2~



『時間干渉系魔法』。

これは(もちろん『名称』の差異はあるものの)、特に『ゲーム』などに割とよく登場するタイプの『魔法』であり、その名の通り、『時間』に『干渉』する『魔法』である。

『時間干渉系魔法』は、『時間』を、『時間』を事を可能とする『魔法』であり、これによって、『プレイヤー』に様々な恩恵を与えてくれる。


その『設定』や『発現方法』は、その『ゲーム』の『システム』や『戦闘システム』などによって千差万別なのであるが、例えば、所謂『ターン制バトル』系の『戦闘システム』を採用している『ゲーム』を例に挙げてみよう。

『ターン制バトル』系の『戦闘システム』では、途中で修正が効かないので、『プレイヤー』のささいな『選択ミス』によっては、絶賛全滅の危機に瀕する事がままある。

それをやり直したい時には、一回『リセット』するとか、『セーブポイント』からやり直すなどの手段があるのだが、またチマチマ『マップ』を走破しつつ、『ザコ戦』や『イベント』をこなす億劫な作業を再び繰り返さなければならない。

場合によっては、それで心が折れる『プレイヤー』もいるかもしれない。

その『救済措置』として、『戦闘』開始状態に戻す『魔法』として、この『時間干渉系魔法』が用意される事もある。


あるいは、『敵』の『行動スピード』を遅くするとか、『味方』の『行動スピード』を早める『魔法』として登場する事もあるが、こちらは『時間干渉系魔法』であったり、単純に『AGI(アジリティ)』に関わる『補助・支援系魔法』であったりする場合もある。


あるいは、『ゲーム』の一つの『舞台装置』として、昼にしたり夜にしたりするだけの『魔法』として、『時間干渉系魔法』が登場する事もある。


まぁ、先程も言及した通り、『時間干渉系魔法』は『ゲーム』によって千差万別なのである。

そもそも、『時間干渉系魔法』が存在しない『ゲーム』も珍しくない。


さて、では、フルダイブ用『VRMMORPG』・“The Lost World~虚ろなる神々~”ではどうだったかと言うと、これはアラニグラも使用していた様に、“TLW”には『時間干渉系魔法』が存在していた。

しかも、使いようによっては『戦闘』を優位に進める事が可能であり、中盤以降は、それを如何に使いこなすか、逆に、それを如何に防ぐかと言う攻防になっていった。

もちろん、すぐさま有効な『対策』が登場した訳だが、終盤においても、純粋に『時間干渉系魔法』による『効果』を期待して『敵』に仕掛ける、と言うよりかは、その攻防の副次効果として『技後硬直』や『詠唱時間キャストタイム』や『再詠唱時間リキャストタイム』を上手く調整する『テクニック』へと変化していった。

故に、『時間干渉系魔法』を巧みに操る『プレイヤー』は、非常に重宝された訳である。


一方で、『ゲーム』ではない『現実世界(物理世界)』である『異世界アクエラ』においては、これはアキトやアルメリアも何度となく言及しているが、『時間干渉系魔法』は存在しない。

これは、『時間干渉系魔法』に関連する『異世界転生』や『異世界転移』、『時空間転移魔法』も同様であった(もっとも、アキトや元・『LOL』のメンバーらの例もある様に、『現実世界(物理世界)』とは異なる『次元』に干渉が出来るならばそれも可能なのであるが)。


正確には、『魔法技術』『時間干渉系魔法』を出来ないと言った方が正しい。

こちらも、『物語』や『システム』によっては千差万別ではあるが、この世界線アクエラにおける『魔法技術』は、向こうの世界地球の『科学技術』を大きく越える『技術』ではないのである。

もちろん、『科学技術』とは『発現プロセス』が異なるので、この世界線アクエラの『魔法技術』は大半の者達がイメージする『』に似通ってはいるかもしれないが、さりとて『物理現象』を越える事はやはり不可能なのである。

つまり、ただ何となく『イメージ』するだけで凄い『力』を操る事は不可能であり、向こうの世界地球の『科学技術』同様に、様々な『分野』の様々な『専門知識』が合わさって、初めて『上級・奥義』クラスの『魔法技術』を操る事は可能なのであった。


さて、ここで一旦話は変わるが、ではなぜ『時空間』を操る事は不可能なのであろうか?

その答えは、『重力』に関係する。


『地球上』では、とてつもない『自然現象』が多数存在する。

身近なところで言うと、地震や雷、洪水や津波などがそれに該当するだろう。

これら一つ一つが、とてつもない『エネルギー』を内包しており、おおよそ人智を越える『現象』である事は御存知の通りだ。

が、実際に『地球上』に観測される『物理現象』ではあるので、それを、もちろん全く同じく規模ではないものの、する事は可能である。

実際に、大規模な『実験装置』を使った『実験映像』を御覧になった方も多い事だろう。


それと同様に、これはこの世界線アクエラにおける『魔法技術』でもが可能である。

元々、『魔法技術』の『基本コンセプト』も、『物理現象』をする事であるから当然であろう。

そうした中から、『基礎四大属性魔法』(すなわち、“火”、“水”、“風”、“土”)が生まれ、そこから派生した『上位属性魔法』である、“雷”、“氷”、“光”、“闇”などが生み出された。

それらと『化学』、『物理学』などの『知識』が組合わさったモノが、『上位・奥義』クラスの『魔法技術』であり、小規模ながら『自然現象』クラスの『魔法』を操る事が可能となった訳である。


しかし、『重力』に関しては、これはもはや一人の『術者』、どころか、一つの『惑星』単位で収まる『物理現象』ではない。

もちろん、『重力』に関しては未知な部分も多数存在するが、分かっている中でも有名なモノの一つに、『潮汐力』が存在する。

これは、『地球』においては、特に『月』と『太陽』の『引力』によって引き起こされる『現象』だが、これほどの『力』を持ってしても、『宇宙規模』で言えば大した『力』ではない。


さて、ここでようやく『時空間』に関連する話になるが、『時空間』を『停止』させるほどの『重力』となると、それは『ブラックホール』レベルになってようやく観測が可能となる(とされている)。

『ブラックホール』は、極めて高密度で、強い『重力』の為に物質だけでなく『光』さえ脱出する事が出来ない『天体』の事である。

『ブラックホール』の事を語ると長くなるのでここでは割愛するが、その中の有名な『思考実験』を例に挙げてみよう。


まず前提として、彼の有名な『相対性理論』によれば、この『宇宙』において、『光の速度(光速)』を越える物体はないとされている。

しかし、『ブラックホール』の周囲は非常に強い『重力』によって『時空』が著しく歪められ、ある半径より内側では脱出速度が『光速』を超えてしまう。

この半径を『シュヴァルツシルト半径』、この半径を持つ球面を『事象の地平面』(『シュヴァルツシルト面』)と呼ぶ。

この中からは『光』であっても外に出てくることは出来ない。

『ブラックホール』は単に元の星の構成物質が『シュヴァルツシルト半径』よりも小さく圧縮されてしまった状態の『天体』であり、『事象の地平面』の位置に何かがある訳ではなく、『ブラックホール』に向かって落下する物体は『事象の地平面』を超えて中へ落ちて行く。


『ブラックホール』から離れた位置の『観測者』から見ると、物体が『事象の地平面』に近づくにつれて、『相対論的効果』によって物体の時間の進み方が遅れるように見えるため、『観測者』からは『ブラックホール』に落ちていく物体は最終的に『事象の地平面』の位置で永久に『停止』するように見える。


この様に、想像を絶する『重力』あって初めて、『時間停止』と言う状態を生み出す事が可能なのである。

当然であるが、それほどの『現象』を起こす事は『魔法技術』であろうと、『科学技術』であろうと不可能である。

何故なら、仮に出来たとしても、次の瞬間にはその『重力』に押し潰されて、『生物』どころか『惑星』すら崩壊する(と考えられている)からである。

いずれにせよ、今現在の『技術力』では『時間干渉系魔法』はし得ないのである。


では、何故アラニグラはそれを使用出来たのであろうか?

その答えは、使、である。

厳密には、では『時間干渉系魔法』に似た作用の『現象』にされた訳であるが。


アラニグラ達、元・『LOL』のメンバーらは、この世界線アクエラの『魔法・魔道技術体系』とは異なる『ことわり』、すなわち、“TLW”時の『魔法』や『スキル』が使用可能である『異能力』を持っているのだが、これは以前にも言及したかもしれないが、その『効果』はこの世界線アクエラでの『物理法則』に基づき、変化・変質しているのである。


考えてみれば当然な話であろう。

この世界線アクエラは、先程も言及したが、『現実世界(物理世界)』であるから、『現実』の『物理現象』に即した“形”でしか、『魔法(現象)』も『発現』し得ないのである。


それ自体は、元・『LOL』のメンバーらも気付いていた。

故に、元・『LOL』のメンバーらもこちらの世界アクエラに来た当初は、そうした差異を独自に検証していた。

しかし、人はだ。

それ自体は悪い事ではない。

環境に適応する事であるから。

しかし、その結果として、誤った認識を持ってしまう事もある。


ここで一旦話は変わるが、昨今の『地球』では、それまでと全く異なる『現象』が相次いでいる。

想定以上の大地震に、想定以上の大津波、想定以上の大洪水に、想定以上の大雨etc.

昨日までの『経験』が全く役に立たない事がしばしばある。

しかし、考えてみれば当然なのだ。

我々は分かったつもりでいるが、我々は『地球』の事など全く分かっていないのだ。

少なくとも、我々人間が想定している100年や1000年のスパンでさえ、『地球』にとっては大した『時間』ではない。

故に、1万年前に起こっていた事が、あるいは100万年前に起こっていた事が、今現在に起こったとしても全く不思議はないのである。

何故なら、それは『地球』にとってはの出来事なのだから。

故に、これまで生きてきて大丈夫だったから、これからも大丈夫、なんて事は


それと同様に、多少の変化・変質があったとしても、問題なく『異能力』が、“TLW”の『魔法』や『スキル』が使えたからと言って、これからも同じ事が起きるとは限らない。

特に、この世界アクエラの『魔法・魔道技術体系』と違って、“TLW”の『魔法』や『スキル』は、この世界アクエラで『体系化』している『技術』ではない。

それに、元・『LOL』のメンバーらは、『TLW技術それら』を使と言っても、当然ながら『TLW技術それら』を生み出した訳でも、『TLW技術それら』の『専門家』でも『研究家』でもないのである(それを名乗れるほど『TLW技術それら』に対する造詣が深くない)。


さて、長々と説明して来たが、その“”や“”によって、『異世界人地球人』・ウルカは、失敗、いや、彼女からしたらある意味成功かもしれないが、する事となった。

それでは、『物語』を『異世界人地球人』・ウルカと、『血の盟約ブラッドコンパクト』のメンバーであるエネアとトリアが、アキトと『魔道人形ドール』・エイルを取り逃がした場面まで遡ってみようーーー。



□■□



「・・・もしかしたら、彼の者の“”を掴めるかもしれません。」

「なんとっ!?」

「本当ですかァっ!?」

「試してみない事には分かりませんが・・・。」


そう言うと、ウルカは再度トリアとエネアには分からない『』で『魔法』を紡ぐのだったーーー。


「【復元リセット】っ!」

「「っ!!!???」」


ウルカが『選択』したのは、『時間干渉系魔法』である【復元リセット】であった。

これは、“TLW”時は、先程例に挙げた様な、『『魔法』として存在していた。


ウルカの『職業クラス』は『大司教アークビショップ』であり、『狩人』系の『得意』とする高性能の『索敵』や『追跡』に関するモノは持ち合わせていなかった。

そこで彼女は考え方を逆転させた。

探せないのならば、


アラニグラの『情報』からも、これを応用する事で、『カウコネス人』達の若者達からを受けた少女を健常な『状態』にする事が出来たとウルカは聞いていた。

それに、仮にこれが失敗に終わったとしても、その時は改めて別の方法を考えれば良いと軽く考えていたのだ。

行動には、それ相応の『リスク』が存在するという、ーーー。


結論から言えば、その試みは成功、

これは、ウルカ彼女達が、もちろんウルカ彼女達に自覚などないが、アキトと近しい“レベル500カンスト”、『神性』の『領域』に足を踏み入れていたからこそ可能な事だったかもしれない。

しかし、その『代償』として、ウルカは『時の狭間』に迷い込む事となってしまったのだったーーー。



・・・



「・・・おやっ?」

「ッ!!!???」


僕と『魔道人形ドール』の少女との『交渉』が佳境に入っていたタイミングで、僕らは不可解な『現象』に巻き込まれていた。

まるで、『、僕と『魔道人形ドール』の少女が『異世界人地球人』と『ハイドラス派』の手の者と思われる女性二人と邂逅した『』に戻されたのである。


これは、『時空間干渉』、だろうか?

・・・また、随分と無茶な事をしたもんだなぁ~。

いや、僕も他人ひとの事は・・・。


僕がそう呆れていると、やはり予測通り、目の前には先程の『異世界人地球人』と『ハイドラス派』の手の者と思われる女性二人が立っていた。


「・・・」

「「っ・・・!!!???」」

「おやおや。」

「ッ!!!」


驚愕の表情を浮かべていた『ハイドラス派』の手の者と思われる二人の女性と、戸惑った雰囲気を醸し出す『魔道人形ドール』の少女。

が、すぐさま『ハイドラス派』の手の者と思われる二人の女性は、僕らの拘束を試みるべく、行動を開始した。


「いやいや、ちょっと待った。」

「問答無用デスっ!!!」

「へえェ~、“”は割とイケてるのねェ~。」

「あっ・・・。」


やべっ。

魔道人形ドール』の少女との『交渉』の為に、僕は愛用の『』とマントを脱ぎ捨てていたのである。

いや、今さら“顔バレ”したところで大した影響はないが、ちょっと失敗。


二人の女性は、かなりの『使い手』であった。

とは言え、今現在の僕にとってはさして脅威ではなく、僕は軽く攻撃をいなしていった。


「やはり、相当な『手練れ』デスねっ・・・!!!」

「貴方がァ、我が主しゅに楯突く、彼の『ルダ村の英雄』、なのかしらァ~?」


一瞬の攻防の末に、彼女達は一旦距離を取り、警戒した様子で僕に問い掛けた。


「そう、ですけど。一旦落ち着きません?かなりマズイ状況ですし。」

「何を今さらっ!」

「命乞いって、タマでもないでしょォ~?私達を戸惑わせる為の、時間稼ぎ、ってトコかしらァ~?」


うん、まぁ、一旦『』と認識したなら、その相手の言葉に耳を貸さないのは、ある種セオリーだけれども。

しかし、今はそんな事言ってる場合じゃないんだよねぇ~。


「いや、ぶっちゃけ僕としては問題ないんですけど(まぁ、『』はするんだけどね)、放っておくとお連れの方、もう『?」

「・・・・・・は?」

「・・・不可思議、ナ、『現象』、デス・・・。『』、ハ、アルノニ、『』、ガ、アリマセン・・・。」

「それは当然だよ。彼女は、この世界アクエラの『ことわり』を越える『チート能力』を発現させようとしてしまったんだ。通常なら、そんな無茶な『命令コマンド』は実現不可能な為に『取り消しキャンセル』されるんだけど、不幸な事に、彼女達は僕と近しい『力』を持っている為に、その『命令コマンド』が半ば強制的に実行させてしまったんだ。その結果として、『世界』の『システム』に過剰な負荷が掛かり、彼女の無茶な『命令コマンド』を実現させる為に、“辻褄”を合わせようと『誤作動エラー』が発生してしまったんだね。」

「・・・ナルホド・・・???」

「ウ、ウルカ様ァっ!!!???」

「っ!!!???」


ここでようやくに気付いたダークブロンドの女性が、ウルカと呼ばれた『異世界人地球人』のもとに駆け寄った。

もう一人の褐色の肌をした中東風美女も、その声に釣られて振り返る。


見た目上の変化はない。

しかし、ウルカと呼ばれた女性は一切反応を示さなかった。

いや、それどころか、“瞬き”や“呼吸”すらしていない様に見える。

しかし、先程『魔道人形ドール』の少女が発言していた通り、一応これでも

まぁ、彼女の『精神』は、この『時間軸』にはもはや存在しないが。


「き、貴様っ!!!何をシタっ!!!???」

「いやいや、別に僕は(まだ)何もしてませんよ。彼女が勝手に『自滅』しただけです。『ルール』を理解していなかった結果起こった、不幸な『事故』ですよ。」

「・・・そのォ、口ぶりだとォ、“何か”知ってはいるのよねェ~?」

「ええ、まぁ、一応。少なくとも、貴女方よりは詳しく、ね。」


いやぁ~、実は、僕自身、似たような事は『』してるんだよねぇ~。

恥ずかしいから、誰にも言ってないけど。


と、言うのも、この世界アクエラに来て数年、確か“アキト・ストレリチア”としては、3、4歳の頃に、僕は興味本意で、とある『実験』を敢行したのである。

それが、『時空間干渉』。

所謂、『時間停止』の『実験』であった。



・・・



当時、僕は、この世界アクエラの『』に夢中であった。

今でこそ、この世界アクエラの『』は、一定の『法則』だったり、『ルール』のもとに存在する『技術』、言うなれば『科学技術』とそう大差ない『技術』である事は理解しているが、やはり『発現プロセス』が異なるので、元々持っていた『』もあいまって、とんでもない『力』を手に入れたとしていたのである。

まぁ、要は、何だかよく分からないが、謎の『万能感』に僕は調子に乗ってしまった訳である。

アルメリア様も、当初から『』は『万能』の『力』ではないと否定されていたんだけどね。


まぁ、でも、それも全てが全て、悪いモノでもなかったのである。

何故なら、僕は元々向こうの世界地球の住人であった為に、この世界アクエラの住人達とはその『発想』が異なるので、思いもよらない『魔法技術』の『利用方法』をいくつも編み出していたからである。

つまり、まっさらな子供の様に、まだこの世界アクエラの『常識』に染まりきっていなかった為に、そうした事が可能な事でもあったのだ。

まぁ、それ故に失敗もあったのだが。


そんな事もあって、僕は『オタク』ならば一度は夢想し、ある種『最強』の呼び声も高い『時空間干渉』に手を出したのである。

一応、アルメリア様も、『時間干渉系魔法』は存在しない事を示唆していたが、その時の僕は、ダメな『研究者スイッチ』が入っていた。

成功するにしても、失敗するにしても、とりあえず試してみよう、って感じであったのだ。

その結果として、僕は『時の狭間』に迷い込んでしまった訳であるがーーー。


ここで、簡単におさらいしておこう。

まず前提条件として、『時間停止』は不可能である。

何故なら、『時間』とは常に一定の方向に流れているからである。

まぁ、『時間』などという『概念』などない、と言う『研究者』や『理論』も存在するのだが、長くなるのでここでは割愛する。

少なくとも、生物の『肉体』が、時を経て老化したりする『現象』が存在する以上、『、と言う『現象』は疑いようがなく存在するのだから。


では、『時間停止』と言う状態を考えてみよう。

これは、『を塞き止める作用の事である。

『マンガ』・『アニメ』・『ゲーム』・『ドラマ』なんかでは、割とポピュラーな『力』だろう。

これによって、相手の優位に立つとか、エロ同人的には、ゲフンッゲフンッ!

ま、まぁ、それを実行した者の都合の良い状態にする事である。


しかし、当然であるが、物事は『』に考えなければならない。

何故なら、この『世界』は、様々な『相互作用』によって成り立っているからだ。


先程述べた様な、仮に『時間停止能力』を得て、なおかつその『中』で自由に動く事が出来ても、実際は何にもならない。

『時間停止』した状態では、物体は『』されてしまう(『)ので、誰かを傷付ける事はおろか、物品を盗む事すら出来ないからである。

全ての物体がアス〇ロン状態になる、と言えば分かりやすいだろうか?

一応、相手の優位に立つ、と言う事は可能ではあるが、しかし、それも『、である。

実は、これも不可能である。

何故なら、『時間軸』に差異が生じてしまうからである。


先程も述べた通り、物事は『』に考えねばならないので、例えば『時間停止』した地点をAとした場合、しかし、本来の『時間』は地点B、C、Dの方に通常通り


通常の『時間軸』

地点A→B→C→D・・・


『時間停止』

(地点A)→B→C→D・・・


つまり、『時間停止』をした『実行者』は、その切り取られた地点Aの『時間軸』に

これが、言わば『時の狭間』である。


例えるならば、『写真』や『映像』の『中』に取り残されてしまう様な感じである。

とは言え、実際には『肉体』ごとその『時の狭間』に囚われる訳ではなく、『精神』だけが取り残された状態となる。

これは、おそらく『世界』の『システム』の“辻褄”を合わせる為に起こる『現象』であるが、言うなれば向こうの世界地球の『脳死状態』になってしまうのである。

『物理法則』とはまた違う『法則』に基づく『力』を発現可能な『アストラル界』に造詣が深ければ、『時の狭間そこ』から脱出して、通常の『時間軸』に復帰する事も可能だが(実際、僕はアルメリア様の助けによって難を逃れた)、『異世界人地球人』達は、自力で『限界突破』を果たしていない為、それも不可能である。

もっとも、『霊能力』系の『力』を有していれば、また話は違うのであるが。



・・・



「トリアさんっ!?エネアさんっ!!??何で反応してくれないんですかっ!!!???」


ウルカは絶賛錯乱中であった。

何の気なしに使用した【復元リセット】が成功し、もしかしたら『同郷』かもしれない謎の人物と『魔道人形ドール』を『現場』ににも成功した。

さて、これで仕切り直し、と考えた矢先に、ウルカは『時の狭間』に堕ちてしまった訳である。

これは、言わば大きな『力』を使った『代償』であり、ウルカの『命令コマンド』に対する『世界』の『システム』の『誤作動エラー』であったが、彼女にはそんな事は知るよしもない。

まるで『時間』が『停止』した様な『現象』に、彼女の理解の範疇を越えてしまった訳である。

それは混乱もするだろう。


しかも、待てど暮らせど、一向に事態は改善しなかった。

トリアにエネア、果ては謎の人物と『魔道人形ドール』にも接触を試みたが、一切の反応はなし。

それどころか、まるで『石像』の様に、身体の一部を動かす事すら出来なかった。

これはマズいと、『異能力』を発現させようとするが、それも一切反応しなかった。

当たり前だ。

その『時の狭間』では、『

故に、新たなる『命令コマンド』が受け入れられる事はなかった。


不幸中の幸いなのが、所謂『生理現象』もなくなる事だ。

、そもそも今現在のウルカは『アストラル体』であるから、当然と言えば当然なのだが、しかし、それもさして何の助けにもならなかった。

そうこうしている内に、ウルカの『精神』は限界を迎えつつあった。


人は何の変化もない『空間』では、72時間ほどで『精神』が崩壊すると言われている。

どれだけ『孤独』を愛そうと、人は一人では生きていけないのである。

『時間』からは切り離された『時の狭間』ではあるが、感覚的な『時間』の『概念』は存在する。

何の変化もない『時の狭間』では、ウルカの『精神』に変調を来したとしても無理からぬ事であった。


そうした状況の中で現れる『精神』の変調の代表例として、『時間感覚』の変質と『幻覚症状』がよく知られている。

ウルカもその時、『幻覚』を見ていた。


「帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい・・・?」

「もしも~し、大丈夫ですかぁ~?」

「・・・・・・ぇ・・・・・・?」


いや、それは『現実』であった。

そこには、長い黒髪を後ろで結んだ、この世の全ての美を詰め込んだ様な神秘的な容姿の少年が、心配そうにウルカを眺めていたのだったーーー。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る