第102話 タルブ政変~情報機関~
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アキト・ストレリチアは、所謂普通の『物語』の『登場人物』達とは一線を画した『
かつてはアキトも、所謂『冒険物』の『キャラクター』達が織り成す『物語』を、“カッコいい”と思って憧れていた部分があった。
『マンガ』・『アニメ』・『ゲーム』においても、『主人公』やその『物語』の『登場人物』達が、某かの苦難や敵対する者達の妨害などを乗り越えて成長し、最終的に『目的』、大抵は“『平和』な世を手にする”と言ったモノが多いが、に向かって邁進していくのを、手に汗握って見守っていたモノである。
また、かつてアキト自身がやっていた事もあって、所謂『スポーツ物』、まぁ、『サッカー』を含めた様々な『ジャンル』を、『二次元』・『三次元』に関わらず見るのも好きだった。
当然、その中には、『
しかし、“物事を斜に構えて見るのがカッコいい”と言う、所謂『厨二病』の時期を経て、社会人として働く様になってからも、彼は、『オタク』としてあいかわらずそうした『コンテンツ』を愛していたが、しかし、当然そこに彼自身の『
すなわち、何故この人達は争っているのだろうか?、と言う部分である。
『スポーツ物』なら、まだその『
“万年地方大会一回戦敗退からの脱却”とか、“全国大会出場”とか、“全国制覇”とか、『
だから、『登場人物』達が、その事を競い合う事に特には“違和感”がない。
しかし、『冒険物』ならば、所謂単純な『バトル物』ならばまだしも、その中の『要素』として『戦争』が関わってくると、“大人”ならではの観点から、何故その『世界線』の“大人”達は“紛争”を事前に回避しようと努力しなかったのか?、と言う事に単純な疑問を感じる様になったのである。
まぁ、これは、『視聴者』の年齢によって、感情移入する『キャラクター』や“視点”がそれぞれ変わると言う、ある種の『物語』の“深み”にも繋がるのであるが。
もちろん、『主人公』や『登場人物』達自らが望んで“紛争”を始める事は非常に稀だろう。
どちらかと言うと、“巻き込まれる”事が多いかもしれない。
だから、アキトが感じている“違和感”は、何故“大人”達がそんな“無能”なのだろうか?、と言う点だった。
もちろん、『メタ』的な観点からは、そうしなければ『物語』にならないだろう、と言う意見もあるだろう。
『現実』においても、“大人”達が様々な『不祥事』を起こして、『芸能人』、『企業』の『上層部』、『政治家』などの人々が、連日連夜の様に『謝罪会見』などをしている事を鑑みれば、“大人”を信用出来ない、と言うのもある意味無理からぬ事であるかもしれない。
しかし、案外大抵の“大人”達と言うのは、目立たないだけでそれほど“無能”と言う訳でもない。
アキト自身、そうした“大人”の一人であったから、『物語』の様に、何の“前触れ”もなく“紛争”が起こってあたふたするとか、子供達を前線に送って何もせずに傍観している、と言う“大人”にはどうしても“違和感”を感じてしまったのである。
もちろん、ただの『
実際の
『政治的』・『経済的』・『軍事的』に様々な“思惑”を持った諸外国が存在し、ニュースなどでも、『世界』はそれほど『平和』でもない事を、大抵の者達は知っているだろう。
しかし、大半の者達は、それが自分達の身近な問題とは
それは、“大人”達が、『水面下』で人知れず尽力しているからである。
故に、特に現代日本においては、子供達が戦火に巻き込まれる事態とはなっていないのである。
アキトは、その事をしっかりと理解していた。
そして、何の因果か、アキト自身、『異世界アクエラ』に『異世界転生』を果たす事となった。
しかし、その『根底』にあるモノまでは変わらないので、『前世』の『記憶』を持ったまま『転生』する事となったアキトが、『魔獣』や『モンスター』、あるいは『犯罪集団』に対する『武力行使』ならばともかく、『国』や『宗教団体』に対しては『武力』ではなく、ある意味『正規』の『方法』である『根回し』、所謂『交渉』や『折衝』を重視する様になっていったのは、ある意味当然の流れであろう。
“戦って勝つ”のは、非常に分かりやすいが、しかしその反面、その後に多くの問題を孕んでいる事は歴史を見れば明らかであろう。
ただの『物語』ならばそれも“有り”だろうが、現実の『人生』においては、その後も『ストーリー』が続く訳である。
“大人”としての『
□■□
「ニッ・・・!?あっ、いや、どなたかな、そちらの方は?」
一瞬、思わず名前を口走りそうになったグスタークさんは、すんでのところでそれを回避し、知らぬ存ぜぬを貫く事にした様である。
まぁ、そうするしかないだろう。
生憎、“この場”を用意した以上、
「彼らは『
そんなグスタークさんの様子を、嘲笑する訳でもなく、憐れむでもなく、真っ直ぐ見据えるドルフォロさん。
その発言に、グスタークさんと『主戦派』の『
ー裏切ったなっ!!!???ー
多分、そういう心情なんだろう。
まぁ、モルゴナガルさんに関しては、あなた方が“
まぁ、
しかし、ニコラウスさんはそうではない。
彼の場合は、完全に『
それ故に、
まぁ、だからこそ、ニコラウスさんは“この場”に来る事を拒んだ訳だが。
「さて、それでは『役者』は全て揃いました。これから“
「「「「「っ・・・!!!???」」」」」
ドルフォロさんは、辺りを見渡すと、そんな事を宣言した。
ドルフォロさんには、所謂『推理物』で言うところの、『探偵役』をお願いしている。
これは、『
もちろん、アンブリオさんかディアーナさんにでもお願いしても良かったのだが、
当然ながら、『公太子』や『公女』の『立場』からは、ドルフォロさんとディアーナさんにも同様の
ここら辺は、『メタ』的な観点、かつ個人の意見ではあるが、『推理物』では、大抵の場合『探偵役』が『
実際の『警察』は、それほど“無能”ではないが、もし仮に『
『
自分を悪く言う者を笑って許せる『
しかも、『推理物』では大抵の場合が“極限状態”だ。
『武器』なり『逮捕術』なりを持つ人物を批判する事によって、その人物から不興を買う事はなるべく避けるべき事態だろう。
もしかしたら、助けて貰えない可能性もあるのだから。
また、通常の『警察組織』においても、『捜査本部』の『
何故なら、『
まぁ、これは『警察組織』に関わらず、様々な『集団』が潜在的に抱える問題点ではあるが。
故に、何でそんな事が起きたのか?、って端からはツッコミが入りそうな
これも、ある種の『同調現象』・『同調圧力』が生み出す負の『現象』である。
今回の場合も同様である。
まぁ、先程も述べた通り、『公太子』や『公女』の『立場』はあるものの、ぶっちゃけ『権限』上では『貴族院』に列席している『
故に、ある種『論理的』に納得しなければ、『
逆に言うと、これは先程の例にも挙げた『探偵役』もそうだが、『権限』が
『推理』がしっかり
ま、あくまで僕の意見ではあるけどね。
「さて、何処から語りましょうか?やはり、『
「「「「「っ!!!!!?????」」」」」
ザワッと“この場”の者達がざわめいた。
それはそうだろう。
これは自画自賛になってしまうが、『
もちろん、『
それを密かに『リーク』した者が“
「結論から申しますと、『
「ちょ、ちょっと待って下さい、ドルフォロ公太子殿下っ!私も“噂話”程度は聞き及んでいましたが、しかし、それが
「そ、そうだっ!!!隠し立てするのがいかにも怪しいっ!!!何かやましい事でもあるのかっ!?あるいは、そんな事、初めから
お~お~、『主戦派』の『
疑問を呈した『貴族』に便乗して、分かりやすい『
まぁ、そんな反応は
「卿やシュタイン候の仰る事はもちろんでしょう。しかし、逆に聞きます。『
「・・・た、確かにっ・・・!!!」
「くっ・・・!!!」
誰が『敵』で誰が『味方』かも分からない状況で、それを
訴え出た
それに、命を狙われた以上、また同じ事が起こらないとも限らない。
ならば、そうした確かな『情報』が集まるまでは、自身の命を守る為にも、身を隠すのは当たり前の話だろう。
「それと、先程のシュタイン候の発言は不適切です。
「なっ・・・!?」
思わず口走った『発言』が、そのまま『言質』となる事もある。
『失言』には気を付けた方が良いですよぉ~?
まぁ、そう
「では、ここで、
「ええ、もちろんです。」
一見すると、『探偵役』と『犯人役』が談笑しているかの様な軽い感じだが、その反面“この場”の『緊迫感』は増した様な感じがした。
まぁ、『大公家』の人間を狙った人物が堂々と“この場”に立っているのだから、その反応も分からなくはないがな。
「モルゴナガル卿が
「ええ、ええ、私が公女殿下のお命を狙いました。」
「「「「「っ・・・!!!???」」」」」
悪びれる様子もなく、アッサリと『自供』したモルゴナガルさんに、“この場”の皆さんがざわつく。
中には、その事に“違和感”を感じる者達もいるだろうが、ちゃんと意味があるから、もうちょっと待ってね?
「何故、その様な恐ろしい『企て』を?」
「そうですねぇ。端的に申しますと、私の『
『主義』や『主張』を軽んじる発言に、にわかにモルゴナガルさんに『
流石は、『
「その『
「何、つまらない事ですよ。自分の『地位』を更に押し上げようとした。ただ、それだけの事です。」
あっけらかんと、自分の『野望』の為だったと述べるモルゴナガルさん。
その発言に、顔をしかめる『
しかし、彼らも『政治家』である以上、『損得勘定』で動くのは当たり前の話で、そうした意味では彼らもモルゴナガルさんとそう大差はないのだが。
まぁ、実際に手を下すかどうかの違いは存在するだろうがね?
しかし。
「それは
「「「「「・・・へっ!!!???」」」」」
「・・・えっ!!!???」
「・・・ふむっ?」
「っ!!!・・・はて、何の事やら・・・???」
「惚けても無駄ですよ、モルゴナガル卿。こちらには
「・・・はぁ~・・・。参りましたねぇ~・・・。」
大どんでん返しの展開に、“この場”の『
先程の件から、グクタークさんとシュタインさんも下手な発言を避けるべく口をつぐんでいたが、同様に、いや、それ以上に驚愕の表情を浮かべていた。
自分達が
これは、ニコラウスさんも同様である。
まさか、
「・・・英雄殿、いつお気付きになられたのですかな?」
『小悪党』の『仮面』を脱ぎ捨てたモルゴナガルさんは、人をくった様な、人を小馬鹿にした様な態度は鳴りを潜め、『紳士』然とした本来の彼の『顔』で僕に声を掛ける。
「最初から、と言えればカッコいいのですが、『グーディメル子爵邸』にて、拘束されていた貴方の『精神』に『
「ふむ、『精神』に『
「ど、どういう事ですかっ!?公女殿下のお命を狙いながら、それは公女殿下のお命を守る為だったっ!?いや、『
混乱した様子で、『
心情としては、“この場”の人達全員の意見を代弁した形である。
「『政治』とは、複雑怪奇だとお思いでしょうが、その『根底』にあるモノは、結構
う~ん、ドルフォロさんは遠回しな言い方が好きな方なんだろうなぁ~。
興が乗ってしまうと、ついついいらん事まで言いたくなっちゃうんだよねぇ~。
上手い事を言いたくなると言うか、説教くさくなると言うか。
いや、まぁ、これに関しては僕も他人の事は言えないんだけどね?
しかし、“この場”の皆さんの心情を代弁するなら、はよ、説明せいやっ!、ってところだろう。
そんな『空気』を察してか、ドルフォロさんも説明を再開した。
「こほんっ、ま、まず、『前提条件』として、モルゴナガル卿の『出身母体』である『貴族家』から考えていきましょうか?モルゴナガル卿の生家は、何処か御存知ですか?」
「それは『ザルティス伯爵家』でしょうっ!それがどうかしたのですかっ!?」
当たり前の事を聞かれて、若干イライラした様子の『
「その通り、『ザルティス伯爵家』です。では、その“成り立ち”は御存知で?」
「・・・“成り立ち”?いえ、そう言えば存じ上げませんね。自分の『家』の“成り立ち”ならば、聞かされた事がありますが・・・。」
「まぁ、それはそうでしょう。よほどの“事情通”でなければ、流石に『他家』の詳しい歴史を知る機会はそうはないですからね。では、お教えしましょう。『ザルティス伯爵家』は、元は初代君主であるヘンリー陛下に仕えた『騎士』・アーロン殿が、その褒賞として、『ザルティス』の姓と、『貴族』の『爵位』を拝命したところから始まります。アーロン殿は、ヘンリー陛下に重用され、信頼も厚かったそうです。」
「・・・ふむ。」
『国』が成立する過程で、元々『騎士』、あるいは『戦士』が、後々の『貴族家』の“祖”となる事はよくある事だ。
まずは、『国』を盗る為には、『武力』が重要な『要素』になってくるからである。
当然ながら、『トップ』は尽力した者達には、それ相応の褒賞を与えなければならない。
『トップ』の『心意気』に惚れ込む事はあるかもしれないが、さりとてそれでは腹は膨れない。
よく『主従関係』なんて言うが、それも突き詰めて言ってしまえば、ただの『雇用関係』である。
当然ながら『
そんな
ま、それはともかく。
「しかし、
「・・・確かに。」
「しかし、『ザルティス伯爵家』には、他の『貴族家』にはない、とある『
「・・・『
コクリッと頷きながら、ドルフォロさんの説明は続いていく。
「先程述べた『ザルティス伯爵家』の“祖”となった『騎士』・アーロン殿は、質実剛健の気性の持ち主で、君主であるヘンリー陛下を諫める事も多かったとか。公式には、それがもとでヘンリー陛下は、アーロン殿を冷遇する様になったと伝えられていますが、実際はむしろ逆。君主に対して臆せず物申す事を気に入り、密かに彼に国内外の『監視役』を命じられたのです。元々『
「「「「「な、何とっ!!!」」」」」
言うなれば、『ザルティス伯爵家』は、所謂『情報機関』、現代日本で言えば『公安』の様な『役割』を与えられたのである。
「もちろん、これは、『他国』からの“
「「「「「っ!!!」」」」」
彼を小馬鹿にしていた人達は、それが『演技』であった事を知らされ、バツの悪い顔をモルゴナガルさんに向けた。
モルゴナガルさんからしたら、むしろ騙されてくれないと困る訳で、特段気にした風でもなかったが。
実際、モルゴナガルさんの『演技力』は相当なモノだった。
もちろん、元々セレウス様が『
いやいや、いくら『情報』、言わば『知』を司る系の『神』ではなかったとは言え、『神性』をだまくらかすとは、とんでもないモノである。
実際僕自身も、そうとは知らずにモルゴナガルさんと彼の部下達を排除してしまったしなぁ~。
それ故、『人間種』が騙されたとしても、それは致し方のない事であろう。(言い訳)
いえ、ほんっとにすんませんでしたっ!!!orz
「さて、モルゴナガル卿の『役割』は御理解頂けたと思いますが、彼は『監視役』の他に、『調整役』も担っているのです。これは、元々は『
「本当によくお分かりになりましたね。『
「私も
「ふむ、なるほど。・・・『
ドルフォロさんの言葉を静かに聞いていたアンブリオさんが、そう答えを述べる。
それに、ドルフォロさんも頷く。
「その通りです、父上。」
「どういう事ですか?」
訳の分からぬ『
「先程も述べた通り、モルゴナガル卿が『
「「「「「な、なんだってっ・・・!!!」」」」」
「それに、“
「「「「「っ!!!!!」」」」」
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