第22話:両脇には天使と【サイコ】。


「また二人で内緒話してるー! 何の話してるの?」


「絵菜ちゃんも奈那ちゃんが大好きだって話をしてたんだよ」


 おいコラてめぇ何を勝手な事を……!


「あーやっぱり!? 私達って相思相愛だと思ってたんだよねぇ~♪」


「はいはい。そういう事にしといて下さいねー」



「むーっ! どうしてそうやってごまかすの? 私の事は遊びだったの?」


「そうだよこれから一緒に遊びに行くんだろ? 違うのか? ほら、犬袋ついたぞ」


 私達が暮らしている大川から犬袋までは電車で三駅。乗っている時間は五分程度だろうか。


「これから……まずはどこへいくの?」


 ルキヤがやっと時分の状況を思い出したのか周りを行きかう人々をチラチラと気にしながら顔を赤くしている。


 そうだよ。お前はそれでいい。さっきまではちょっと調子に乗り過ぎてたようだな馬鹿め。



「そんなにのんびりしてる時間もないからな、回るべきところさっさと回っておこう」


「はーい♪」


 私の言葉に奈那が元気よく手を上げて返事をする。

 やっぱりこういう所が少し子供っぽいけど天使。無邪気で可愛いのだ。


「見に行くとしたらそうだなぁ……北武か南武……後は犬袋シカクイあたりだろうな」


「うーん。全部おっきなデパートだねぇ~? それならどこでも大丈夫だよ♪ 可愛いのあるといいなぁ~☆彡」


「じゃあシカクイ行ってみよっか」


 黙ってるルキヤは無視して私と奈那だけで行き先を決め、歩き始めると……。


 急に心細くなったのか突然ルキヤが私の手を握ってきた。


「な、なんだよ」


「……これくらい、いいでしょ?」


 別にいいですけど? 望むところだけども?

 だからと言ってそんな恥ずかしそうに顔を背けたりされたらテンションが振り切れてしまうだろうがこん畜生め。


「ずるいっ!」


 それを見てた奈那が空いている方の腕に絡みついてきた。私の腕をそのでっかいのの間に挟み込んでくる。


「やらっけー!」


「絵菜ちゃんのばかっ!」


 まったく奈那ときたら相変わらず天使だなぁ。

 こういう可愛らしい振舞いっていうのを見習わなきゃいけないのかもしれない。


 ……待て。

 よく考えたら今私って完全にハーレムなのでは?


 と言っても奈那は女の子だしルキヤは女の子状態だしでいろいろ複雑な気持ちではあるんだけども。


 片手はミニマム黒髪ツインテと繋いでいて、もう片方には金髪碧眼巨乳美少女が絡みついてるとかヤバすぎるだろ。


 今気付いたけど街行く男どもの視線が凄いな。

 この両脇の二人に向けられた視線も多いけど、この状況だと私に向けられた視線が突き刺さってくる。


 羨ましいか貴様ら! ふはははは!!


「絵菜ちゃん……なんだか悪い顔してるよ?」


 ルキヤが小声で注意してくれたけど知った事か。今くらい事故顕示欲出したっていいだろう? 優越感に浸ったっていいだろうが!


「やっぱり絵菜ちゃんがイケメンに見えてるんだねー♪ みんなの視線すっごい!」


 奈那の言葉に呆然とした。

 そうか、私がハーレム状態だと周りから思われているとしたら、私はもしかして男だと思われてるのか……?


 急に悲しくなってきたぞ……?


「私だって胸とか多少あるんだぞ……?」


「どれどれ……? あーほんとだ♪ ちゃんとおっぱいあるね☆彡」


 奈那がふにふにと私の胸をつついてくる。

 もう知らん。勝手にしろ。


 ふにふに。


「あ、ほんとだー」


「てっ、ててっ、テメェはどさくさに紛れてなにやってんだぶっ殺すぞ!!」


 急にルキヤが私のむ、むむ、胸をつついて来やがった。しかもこんな、街の往来で……!


「……何怒ってるの?」


 いや、そんな不思議そうな顔されても……。


「絵菜ちゃんどうしたの? そんなに触ったの嫌だった? ごめんっ」


 そう言って謝ってきたのは奈那の方だ。


 そうだよね、奈那にはルキヤはあこだしちゃんと女の子なんだよね。


 私が奈那とルキヤで態度を変えてるとおかしいのか……。


 くそう……どう考えたって今のはルキヤがおかしいのに……!


 完全なるセクハラ案件なのに……!

 別にそこまで嫌な訳じゃないけど、そういう事じゃないんだよ畜生。


「どうしたの? 大丈夫?」


「私はお前のせいで胃が痛いよ……」


「このへん?」


 もう、私は驚かないぞ。

 急にルキヤが私のお腹を撫でまわしてきたけどこのくらいで驚いてやらないんだ。


 こいつもしかしたら私があたふたするのを見て楽しんでるんじゃないか?


 全部分ってやってるサイコなんじゃないか?


 ……いや、こいつに限ってそれはない。

 ただのアホで馬鹿で鈍感で糞野郎なだけだ。


 それによく考えたら、何も意識せずに女の子のおっぱいつついてくる方がよっぽどサイコだろ。


 私、ほんとなんでこいつの事好きなんだろう。



「大丈夫? 無理しちゃダメだよ……?」


 ルキヤは私のお腹を撫でながら上目遣いで、とても心配そうに見つめてくる。


 これだ。

 こういう事を平気でするしくっそ可愛いから困る……。


「腹痛で今日の予定台無しになったら怒るよ? 例の約束忘れてないよね?」


 ……あ、はい。

 お前はそういう奴だよ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る