第110話
「お、美味しかったなら良かった。褒めてくれてありがとう。でも、黒炎くんの手料理のほうが美味しいよ」
「そういってくれるのは有難いな。まぁ、会長のアシスタントするようになってからは、より料理する回数も増えたしな」
「私も黒炎くんの料理、もっと食べたい!」
普通は「今度は私が作ってあげる!」と言うべきだったかな。でも、紅蓮会長ばっかりが黒炎くんの手料理を私よりも食べていることにヤキモチを妬いている私がいた。前はここまでなかったのに……。
自分では気付かないうちに私はワガママになった。独占欲だって多分強くなったと思う。
「朱里のためなら何でも作ってやるぞ。それより、朱里は食べないのか? ほら」
それは、黒炎くんがさっき口をつけたチョコ。これを私が食べると自然と関節キスになるよね。関節キスは今回で二回目になるんだろうけど、あの時は付き合ってなかったし。
文化祭で黒炎くんと一緒にクレープを食べたのも、今では懐かしい思い出だ。
「……ん、美味しい」
「だろ? ……朱里」
「なに? 黒炎くん」
私がチョコから口を離すと同時に、黒炎くんからキスをされた。それは、今までしたこともないようなキスの雨。
この甘い味は今食べたチョコの味? それとも……。
「これからも俺の恋人として側にいてくれ」
「うん。私からもお願いしていい? ずっと私のことを好きでいてほしい。……ダメかな?」
「そんなの言わなくてもわかるだろ?」
「……うん」
照れて俯く私を、黒炎くんは決して離したりはしなかった。顎をクイっと持ち上げて、そのまま引き寄せる。
黒炎くんの愛が伝わってくる。凄く嬉しくて、あたたかい。このぬくもりをいつまでも感じていたい。
今、すごく幸せ。ツラいことも苦しいこともあったけど、こうして黒炎くんと結ばれて、こんな時間を過ごせているのなら、今までの苦労だって報われる気がする。
私、黒炎くんのこと諦めないで良かった。
これからもずっと一緒。大好きだよ、黒炎くん。
私が黒炎くんと再会して、もうすぐ一年が経とうとしていた。
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