10章 柊黒炎
第78話
ハロウィンパーティーが終わって三週間が経った。11月も終わりに差し掛かった頃、私は一人放課後の教室をあとにする。
黒炎くんはあの日を境に全く学校に来なくなった。先生が言うには体調不良らしい。だけど、きっとそれは嘘だということをクラスメイトも私も薄々気付いていた。一週間くらいならまだしも、三週間も学校に一度も顔を見せないなんてありえない。
私は何度もメールと電話をしたが、連絡は返ってきていない。黒炎くんが住んでる家に行ってみたが留守のようだった。なにかがおかしい……。
黒炎くんの身になにか起こっていることは確かなのに私にはどうすることも出来ない。
会長さんにも相談はしてみたのだが、それは自分じゃどうしようも出来ないと言われた。会長さんですら関われないこと……ということなのだろうか。どんなに考えたって私だけじゃ解決できずにいることがとても悔しくてたまらなかった。
黒炎くんとせっかく結ばれて、今からもっと楽しいことが出来るって思っていた矢先がこれだ。
大きな車が校門に止まっているのが目に入る。おそらく二年の先輩を送り迎えしてるロールスロイスだろうと横目で見ていたけど、それは違っていて。じゃあ、一体誰の車だろう?
「おや、また会ったね。お嬢さん」
「あのときの……」
車の中から一人の男性が出てきた。それはパーティーのときに声をかけてきた人だった。あのときは素顔は見えなかったけど、やっぱり美形な人だ。
「とはいっても、今日は君に会うためだけに待っていたんだけどね。……霧姫朱里さん」
「っ……」
笑っているはずなのに、その笑顔には一切の嬉しさの感情は混じっていない。そんな微笑みだ。なんて不気味なのだろう。顔が整っている人の不気味な笑みというものは、どうしてこうも寒気を感じてしまうのだろうか。
「ああ、そんなに怖がらないで。……今からドライブでもどうかな?」
「結構です」
私はあからさまにプイっとそっぽを向いて、スタスタと帰る方向に足を進める。
「柊黒炎が学校に来ない本当の理由を知りたくはないかい?」
「えっ」
いきなり黒炎くんの名前を出されて足が止まる。私は男性のほうを振り向いてしまった。いけないことだとはわかってはいても、恋人が今どこで、なにをしているのか気になってしまう。
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