第47話
せめて花火が終わるまでには合流したい。その理由は簡単。二人で一緒に花火を見たいから。
誰もいない場所で休んでいたお陰か体調は大分落ち着いた気がする。ここからだと花火の音が少し聞こえるくらいで全然見えない。
(黒炎くん、早く戻って来て……)
暗くて静かな場所がだんだんと怖くなってきた。そういや、私元々は怖がりなんだった。
静寂な空気の中、ピコン! と音がなった。私はビクッと身体が跳ねたが、その正体はスマホだった。
『朱里へ。待たせて悪い、もうすぐそっちに着くから待っててくれ』
「良かった。もうすぐ黒炎くんが来てくれる」
私は安堵の声を漏らし、了解とだけ送った。
それからしばらくして階段を登ってくる音が聞こえた。人影がこちらに近づいてくるのがわかったので、私は「黒炎くん!」と声をあげたが、そこにいたのは意外な人物だった。
「どうして、あなたがここに?」
「こんなに人が集まる場所に自分がいるのが意外ですか?」
そこにいたのは会長さんだった。
「意外です。あと、ここにいるのも」
「フラフラと具合悪そうにこちらに向かっている貴方の姿を見つけたので心配になって来たんです。今は顔色も大丈夫みたいで安心しました」
あんなに人がいっぱいいたのに私を見つけるなんて会長さんって本当に何者なんだろ。それにただの一生徒を心配するなんて、やっぱり生徒会長の鑑……と関心するも、会長さんは私にどんどん近付いてきた。
「あ、あの、会長さん。近いですよ」
「霧姫朱里、自分は貴方に伝えたいことがあって……聞いてくれますか」
「伝えたいこと? なんでしょうか」
一体なにを言うつもりなんだろう。私には皆目検討もつかない。
すると次の瞬間、フワッとした感触と鼻をくすぐるような甘い匂いがした。
え!? もしかして、私抱きしめられてる?
「相談に乗っている時は気付きませんでした。だけど気付いてしまったんです、自分の気持ちに。僕は……貴方のことが好きです」
「え……?」
一瞬、なにを言われたのかわからなかった。頭がフリーズして理解が追いつかない。
会長さんが私のことを好き? ……そう言ったんだよね。でも、会長さんほどの完璧な人がどうして私なんかを……それに私は黒炎くんのことが好きなのに。
「貴方が柊黒炎に好意を抱いていることはわかっています。その上で告白してるんです。返事はすぐにはしなくていい……でも、真剣に考えた上で答えを聞かせてください」
私の考えてることを手に取るようにわかるのか、会長さんは。冗談でないことはすぐにわかった。だって、会長さんの表情が今まで以上に真剣だったから。
会長さんは嘘や冗談で異性に抱きつくようなことはしない。本気の恋だってわかってる。わかってるんだけど、今の私は……。
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