第43話
今、一瞬だけど焔さんがピクッと反応したような……。もしかして私の名前が変だったとか? なんて思ったりもしたけど、恐らく私のことを知っていた態度のようが正しい気がする。どうして焔さんが私のことを知っているんだろう。
「朱里様がそんなに可愛い浴衣を着ているということは異性の方を待っているのでは? なんて、これはあまりにも踏み込んだ質問でしたね」
「可愛いでしょうか? はい、男の子を待っているんです。幼稚園からの幼なじみなんですけど、小学五年生の頃に引っ越して高校でやっと再会して……」
焔さん、なんだか勘が鋭い。あれ、初めて話すのにどうしてだろう。焔さんに聞かれたら躊躇なくすぐに答えちゃうのは。やっぱり女同士だから話しやすいのかな?
「その男性の方が朱里様はお好きなんですね」
「は、はい……」
焔さん、少ししか話してないのに私が黒炎くんのことを好きってもうバレちゃった。私ってそんなに顔に出てたのかな? こうも顔を真っ赤にさせれば気付かれても仕方ないか。私とは違い、焔さんは微笑んでいた。その笑顔はとても綺麗だと思った。
「あ、黒炎くんがそろそろ着くって連絡がありました」
「黒炎?」
「さっき話してた幼なじみの名前ですよ、変わった名前ですよね。って、私がいうのも変な話ですけど」
あははと冗談まじりに笑う私。しかし、焔さんは「主様が呼んでいるようなので戻りますね」と言ったが、その表情はさっきとは違い焦っていた。
だって、スマホも何も見ていないのにそんなことを言っていたから。ただ、主様っていうのはあの先輩だってことだけはわかる。
「朱里様。私と会ったことは今から来られる方には秘密にしていただけると幸いです。朱里様は夏祭り楽しんでください、では」
そそくさと去っていく焔さん。って、今から来られる方って黒炎くんのことだよね。秘密にする理由は私にはわからない。
「朱里、遅くなって悪かった。って、どうしたんだ?」
「ううん、大丈夫だよ。でも、さっき……あ……」
「さっき?」
やばい。さっそく言っちゃいそうになったよ。綺麗な女性に助けてもらったんだよ! って。
「男の人に声かけられたけど、ひ、一人でなんとか出来たよ」
「それ大丈夫だったのか。俺がもう少し早く着いてれば……本当にごめん」
「謝らないで、私が予定より早く着いちゃっただけだから。……黒炎くん、その手、どうしたの?」
黒炎くんの手をジッと見ると、怪我してるあとがあった。
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