第41話

「やっぱりさっきのニヤニヤ顔見てたんですか!?」


アワアワと耳元を抑えながらガタッと立ち上がる私。黒炎くん以外にこんなことされても平気だって思ってたけど、やっぱり恥ずかしい! しかも、会長さんが何事もないような顔でドキドキするようなことばっかりするから尚更。


私ばかりドキドキするのは不公平な気がする……なんだか腑に落ちないな。


「こんなに近くにいるのに見てないほうが不思議だと思いますが。本当はスルーすべきだと自分に言い聞かせていたのですが、流石に無理でした」


「会長さんって誰にでもこういうことするんですか? もし、そうだとしたらやめたほうがいいです。された女の子は会長さんのこと好きになっちゃいますよ。勘違いされるような行動は控えたほうが……」


「まさか、後輩に注意される日が来るなんて自分もまだまだ勉強不足ですね。でも大丈夫です、貴方以外にこんなことをしたことはありませんから」


会長さんの表情が少し暗くなった。やっぱり私なんかが会長さんに注意するのは嫌だったとか? それに後半の言葉の意味がわからず、私は思わず聞き返してしまう。


「それって、どういう意味ですか?」


「わからないなら気にしないでください。それより夏祭り楽しんできてください」


「はい、楽しんできます! 今日は宿題の手伝いと相談に乗ってくれてありがとうございます。それでは失礼しました」


ペコっと軽くお辞儀をして、生徒会室を出た。


「どうして彼女にだけ、あんな行動を取ってしまうのか自分でもわからない」


一人生徒会室に残された会長さんが、何を言っていたのかは生徒会室を後にした私には聞こえていなかった。


* * *



「思ったよりも早く着いちゃったな……」


会長さんに宿題を手伝ってもらってから数日が経った。


私はある神社の前にいた。そう、今日は夏祭り。

私は無事に黒炎くんを夏祭りに誘うことに成功したのだ。

久しぶりに電話してみたけど、なんだか疲れてた声だったなぁ。


あれは会長さんに生徒会の仕事でも頼まれたとか? でも、前に生徒会室に行った時はそれらしい書類なんかもなかったし。むしろ、きちんと整理整頓されていた。あれほど完璧に近い会長さんが生徒会に入ってない一生徒なんかに頼むだろうか。


(この格好、変じゃないよね……)


林間学校のときはまともに水着見せられなかったこともあり、リベンジとして気合いを入れ浴衣を着ている。可愛い浴衣にあうように髪型はお団子ヘアにしている。メイクもしようと思ったけど、男の子のタイプによって好みも違うっていうし、今回は化粧しないことにした。素顔には自信はないけれど、大事な夏祭りで失敗するも嫌だし。


「ねぇ、君もしかして一人だったりする?」


「え?」


気持ち悪い笑顔を浮かべながら、数人の男の子が私に声をかける。男の子というわりに身長も体格も大きいから大学生くらい? 一瞬、私じゃない誰かに声をかけたと思ったけどまわりには誰もいないから間違いなく私だ。

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