第39話
「一般生徒は大半がこの学校を見て驚くと思います。自分も入学したては多少驚きましたから」
「会長さんでも驚いたりするんですね、なんか意外。って、会長さんはどこかの御曹司じゃないんですか?」
「貴方はまた噂を信じたんですか。自分にも感情はありますし、貴方と同じく一般の家庭です」
会長さんは私の発言を聞いて、またかと言った表情をしながら呆れていた。
「す、すみません」
「怒っているわけではないので謝罪は必要ありません。ただ、たんなる噂話を鵜呑みするのはあまり関心しないという意味で呆れているだけですから。女子生徒……に限定するのは平等ではないので、十六という年齢を考えれば噂話に花が咲くのもいささか仕方のないことなのかもしれませんね」
「会長さんの言葉のニュアンスって難しいですよね。その話し方のせいで堅物会長って呼ばれてたりして~……って、あれ?」
読書をしながら私に勉強を教えてくれていた会長さんがパタンと本を閉じ机に置いたかと思えば、徐々に距離が近づいてくる。
「もしかして、貴方を不快にしますか」
「え?」
「自分の話し方のせいで貴方を不愉快にしたのかと聞いているんです」
「そんなこと思ったことないです! 確かに難しくてたまに理解するのに時間かかるときがありますけど、それは私の勉強不足っていうか……」
会長さんが捨てられた子犬ように落ち込んでいる。私は必死に会長さんに励ましの言葉をかける。
「それなら良かったです。……貴方は僕から離れないでくださいね」
「は……はい」
急にドキッとするような言葉に私は心臓を掴まれそうになった。友達としてなのに、その発言はズルすぎる。会長さんの言葉って心臓に悪い。黒炎くんに恋をしていなかったら、今のセリフは……って私は何言ってるんだろう。
私なんかが会長さんと友達になれただけでも奇跡なのに。でも、会長さんにも幸せになってほしいな。あれ? 私は、さっきまで落ち込んでいた会長さんに違和感を覚えた。
「会長さん。もしかして、さっきの演技だったりします?」
「……今更、気付いたんですか。他人にどう思われようが、自分は気にしません。少なくとも、柊黒炎は自分の言ってる言葉は理解してくれます。貴方は自身が言っている通り、少し勉強不足なのかもしれませんね」
「……っ! やっぱり会長さんは意地悪です!!」
私は、もう! とぷぅーと頬を膨らませ、プイっとそっぽを向いた。
「だから自分が勉強を教えているんです。それが終わったら、恋の相談でも何でも聞きますから」
「会長さんありがとうございます! じゃあ勉強が終わったら黒炎くんの話、いっぱい聞いてくださいね」
「やはり貴方は子供っぽいですね」
一瞬、会長さんが微笑んだ気がしたのは私の勘違い? 黒炎くんとはまた違っていて、会長さんの笑顔は大人っぽくてカッコ良かった。
友達というよりは私のお兄ちゃんみたいだな……と心のなかで、会長さんに対する関係を修正した私だった。
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