第十一章 【レイカとヒビキ】(2/8)

 ミワちゃんとナナミは、またまた用事があるって先に帰っちゃった。取り残されたウチらはカラオケ行ったけど、すぐ飽きちゃって『この花』の主題歌みんなで歌ってお開きにした。泣けた。

「レイカ。あのね」

「セイラ。ゲームなら」

 そんなだから、ミワちゃんたちも。

「分かってる、でも」

 カリンがセイラを制して、

「レイカ、今日、車あるから送るよ」

 ありゃりゃ、まだ9時じゃん。ニーニーのいるあそこに戻るの、やだな。

「ゴメン。カリンち、泊めてくれないかな」

「え? いいけど。汚いよ」

「それなら、セイラも行く」

「PK?」

「なに?」

PンツKってく?」

「無理あるよ、それ」

 うわー。ムラサキの軽自動車だ。これがカリンの車? ウチ、後ろ乗るー。おっと、横に開くのね、このドア。バスケのボール置いてある。わかるよ。女バス出身者の心のよりどころだもんね。ガーーバン。ふーん、中こんななんだ。わりと広いね。天井も高いよ。アタマ、ほれ、ほれ。届かない。座席もっふもふのふっかふか。気持ちいー。

「ナニあばれてんのよ。レイカ」

「ごめん。つい」

 カリンが運転してる。コーコーの同級生が運転する車に乗るのって変な感じする。ってか、カリンの運転アライ。酔った、テキメンニ。

途中一回エチケットタイム設けてもらったけど、何とかたどり着いた。カリンの家は、東揚屋団地。お母さんと二人暮らし。

「入りなよ」

「おじゃましまーす」

「おじゃましまーす」(小声)。

「おかーさん、ただいま」

「夜分にすみません。お邪魔します」

「あら、カリン。おかえ……。ひいーーーーーーーー!」

 おかーさん、奥に行ってドア閉めちゃた。

「あ、やっば。このかっこ」

 そっか、「血塗られたJK」じゃやばいよね。

ゴリゴリゴリゴリ。

「すぎこぎごりごりもうすぐあさがごりごり……」

 カリンのおかーさんてば台所の隅ですり鉢抱えて、

「だから言ったじゃない、あんたは悪霊に憑りつかれてるって。お祓いしてもらいなさいって」

「おかーさん。おかーさんてば」

「すぎごりごりもーすぐあさごりごり……」

「おかーさん。これコスプレだって。ねえ、ごめんね。おかーさん」

「霊媒師さんが言った通りよ! いつかこうなるって。いつかゾンビだって。近寄らないで! 家から出てって! どっか行って! この、アンデッド! ゾンビ!」

「うるさい! 黙れ! ゾンビって言うな!」

 カリンが叫ぶと、おかーさんビックリして口ぽかんになった。

「……ごめんなさい。ゾンビって言っちゃいけなかったわね。ん? カリン?」

 ゴリゴ。カリンのおかーさん憑き物がおちたみたい。

「あら、セイラちゃん、いらっしゃい。お久しぶりね」

「セイラ、ウチの部屋に先行っててくれる?」

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