第七章 ヒビキは仕事に戻る
第七章 【ヒビキ】(1/2)
女子会、結局参加した。シラベは置いといてみんな変わってなかった。修学旅行でフスマ破った張本人がシラベだったってのには納得。夜中に暴れ出したから、スオウさんとセンプクさんの二人掛かりで取り押さえたって、ははは。笑えない。高2の秋だよ、修学旅行って。例の件、センプクさんせっついたら餌やってるとこって、イミフ。
休み明け、出社早々やられた感。三社祭の公式飲料に乳製品だと? どこの誰が神輿担いで汗かいてミルクをがぶ飲みする? そこはビールとかせめてスポドリだろ?
「でも、風呂上りの牛乳は格別って」
そうやってすぐに迎合するのは悪い癖だぞ、カワイ。
「風呂上りじゃねーの、祭りなの」
「ねーさん。とりあえず、名前考えましょ、これの」
名前すら決まってねーのよ。ついでに。ラベルとかポスターとかどうすれっての? 今から間に合わねーだろ。だれのごり押しだよ。
「社長っす」
だよな。社長以外ないな。このタイミングでこれぶっこんで来れるのは。あ、社長出て来た。
「ヒビキ、ゴメン。懇意の人がこれをどうしてもってさ」
「商品名もまだないって」
「できたばっかなんだよ。昨日。でも、おいしいから飲んでみてごらん、ホントに」
そーですね、「自分の体験を売れ!」(BY ジュース・ウェルチ)でした。うそ、ウェルチそんなこと言ってない。
ただの牛乳じゃないのは分かってる。やばい色してるんだけど、大丈夫なのかなホント。うえー、何これ。ミルクって言うより、チーズのような豆腐のような、それでいて甘くて、酸っぱくて、呑み込めない。
「どう、おいしいでしょ」
おいしいですって、言いたいデスけどいまちょっと口の中に残ってるんで感想ひかえさせていただいていいですか?(無声) カワイ、お前、何とか言えよ、ん? どうした。ねーさん、苦しい(無声)。鼻から出てんぞ、牛乳。
「とにかくうちはこれを大々的に売り出す。分かった?」
「「ほぇーいす。」」
社長、宣言だけして帰って行った。
「社長逆切れだったな。カワイ、名前何てしようか?」
「窒息牛乳。窒息ミルク。窒息ちち」
窒息から離れろや。どんだけトラウマになってんだ。
「泥牛乳。泥ミルク。泥ちち。腐れ牛乳。腐れミルク。腐れちち。悪魔の毒々牛乳。悪魔の毒々ミルク。悪魔の毒々ちち」
そんな名前の飲み物、お前飲みたいか?
「腐乳っていうのが中華料理にあるね。あれに似てなくもない」
おっと、後方死角45度から吉田エグゼクティブ。牛乳髭生えてますよ。
「「なるほどですねー」」
「どれどれ」
北村シニアマネ、珍しく輪に入ってきた。おー、一気飲み。世代だねー。
「んー、これは辻沢醍醐に似てるな」
「辻沢醍醐?」
ティッシュどーぞ。アゴからタレテマス。(無声)お、気が利くね(無声)。
「ありがと。千福オーナーのところで頂いた飲み物でね。不思議な飲み物なんだ。それを一口飲んだだけで一晩中踊っていられたもんだよ」
それって、やばい薬とか入ってなかったですか?
トリマ、ネーミングが「辻沢ダイゴ」、コピーは、「ダンス・飲・ザ・辻沢ダイゴ!」ってことになったけど、飲む人いるか? これ。
「ヒビキくんには教えてあげるけど」(ひそひそ声)
「はい、なんでしょう? 北村シニアマネ」(ひそひそ声)
「本物は、宮木野さんのお乳からできてるってハナシでさ、それが本当だったら400年物だよ」
それ飲んじゃダメなやつです。カンペキ腐ってますよ。
(「宮木野さんがホントにヴァンパイアってのは?」)
(「今更それをあたしに聞く?」)
(「宮木野さんの血を受け継ぐ家には『辻』の字が付く屋号があるんだけど、うちの屋号、辻一っていうの」)
センプクさんの言葉を思い出した。
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