15 終局

「じゃあ、反撃開始といこうか」


 サヤは、久しぶりの戦場に高揚感を覚えていた。


 大気程度なら、サヤ一人でも十分に倒せる相手だ。


 そんな相手に、ラストナンバーが四人も揃った状態で戦った場合、案の定袋叩き状態。


 もう大気は核が見えるくらいにボロボロ。


 箒を構えた凪沙は 能力 終わりの一槍で止めを刺そうとしたが、何かに気づいた。


 凪沙は核に当たらないよう能力 多重朽失たじゅうきゅうしつガトリングランスを使用した。


 万を越える光る槍が大気を襲う。


 光る槍の猛撃を受けた大気は、削られて核残すのみとなり、能力を維持出来なくなり核は落下した。


 凪沙は、白馬の隣に行くと耳打ちする。


「白馬さん、貴方が大気の核を破壊するのが妥当でしょう」


「僕がですか?」


「そうです。さあ、早く。能力を奪うのです」


 なるほどっと、凪沙の言葉を理解した白馬は頷いて、刀で核を叩き切る。


『能力 大気操作 再生


 称号 神喰いを得た』


 その頃、神殺し居残り組は観光を楽しんでいた。


 傭推は、無事に奈落落ちリーダーを始末し、ボスに連絡を取ろうとするが反応がない。


「またお昼寝してますね…帰りますか」


 傭推は帰路に着く。


 奈落落ちの部隊は壊滅してるし、サヤもボスに連絡を取ろうとするが連絡がつかない。


「ボス寝てるな…じゃあ、帰るか」


 帰路の途中、白馬達は庸推と合流した。


 白馬は、何となく庸推に話しかける。


「庸推さんの目指すモノって何ですか?」


「そうだね、僕の目指していたモノは世界最強だった」


「だった?」


 庸推の言葉は過去形であり、白馬は疑問を覚えた。


「うん、でもね。今は神殺しの皆を、誰一人失う事の無いよう守れる強さを得る事かな」


「昔の僕は死にたくてしょうがなかった。でもそれ以上に生きる事に希望を持ちゃったんだ」


「明日はきっと良い日になるって。だけどね、現実はそんなに優しくはない」


「不条理は当然で、挫けそうになるのが必然。どんなに努力をしても追い付けない」


「私の方が絶対努力をしている…なんて思っちゃう」


「でもね、みんな努力はしているんだ」


「頑張ってない人何て居ないんだ。それがわかっているから苦しい」


「同じ夢を叶えたい同士はたくさんいる。だけど、叶うのはほんのひと握りの人間だけ」


「夢は叶わないから夢なんだ、それでも叶えたいから夢なんだ」


「誰も簡単に叶うモノを夢にはしない」


「白馬君もそれでも夢を追いかけてくれると嬉しい」


 白馬は頷き、顔を見合せ笑った。


 僕達はカトマンズに無事に帰還し、盛大なパレードに迎えられる。


 ミナサがホッとした顔で白馬に近付く。


「良かった。白馬が無事で」


「ギリギリだったけど何とか生きて帰れたよ。そういえば、ボスはまた寝てるの?」


「ボスは大臣と会談してるよ。それより白馬、宴の席に行こう」


 白馬はミナサに手を引かれ宴の席へ。


 その頃、会談の席では、サノラムは申し訳なさそうな顔で狂花に頭を下げていた。


「もう一つお願いが御座います」


「…私達は便利屋じゃないぞ」


 狂花は渋い顔で抗議をする。


「わかっております。しかし、私の娘リナを神殺し様に引き取っていただきたい」


「何故だ?」


「私達では、娘の一人も守る事ができないからです。娘はこれからも狙われる、しかし貴女様方なら安心できる」


 サノラムの言葉に、狂花は機嫌良さそうに頷いた。


「何だ、そんな話か。構わないさ、優秀な人材は多い方が良い」


 狂花はサノラムに逆に問いかける。


「国を一つ救ったのだ、それ相応の見返りをいただこう」


 狂花はニヤリと笑い、そして要求する。


「報酬は豪華客船を一隻いただこう」


 サノラムは脂汗をかきながら答えた。


「国を救っていただいたのだ、安いくらいです」


 と口元を綻ばせる。


「我等は遠征の途中だ。明日にはここを出る」


 サノラムは、了解の意志を伝えるために敬礼をすると、深く頭を下げた。


「今晩は、最高のおもてなしをさせていただきます」


 宴の席でサノラムは、狂花達を上座に座らせ、サノラム自身は下座に座った。

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