14 神の先兵

 奈落落ちの本部隊の、進軍が予想されるルートに移動する白馬達。


 移動する道中、白馬はこんな疑問を口にした。


「人間はどうして武器を持つんですか?」


「んー、そうですね。理由は簡単だけど、その闇はとても深いよ」


 UNAは、白馬の疑問に難しい顔をする。


『まず、大前提として、武器は人間をどうすれば効率的よく、効果的に殺せるか?考えて作られた人殺しの道具だ』


 白馬はUNAの言葉に、苦虫を噛み潰したような表情になった。


『人間は臆病な生物だから、周りが武器を持つと、自分も同じか、それ以上の物を持たなければ不安になる』


『武器は持っているだけで、抑止力になるけど、本当はこの世界に存在してはいけない物なんだよな』


 UNAのどうしようもないといった表情に、白馬は胸が痛くなった。


『そして、暴力から派生して生まれた物が、武器であり、暴力がなければ武器という物は生まれなかった』


『だけどね。人間の手は使い方次第で、人を助けることもできるんだ』


『僕は、それができると思ったから、神殺しに入団したのさ』


 UNAさんに関わらず、神殺しのメンバーはいい人ばかりだ。


 迷いは、UNAの言葉で和らいだ。白馬は、自分には何ができるのか?


 これからできることを、もっと増やしていかないといけない、そう白馬は自答する。


「貴重なお話をありがとうございます」


 白馬はUNAに礼を言う。UNAは少し照れた顔で、大したことではないと頭を掻いた。


「おい、無駄口はその辺にしておけ」


「ああ、すまない」


 謝罪をして、UNAは口を噤んだ。


 サヤはある一点を指で指す。指の先にあるのは、奈落落ちの本部隊だ。


 しかし、状況がおかしい。


 何故なら、奈落落ちの兵士達が、突然血を吹き出して、次々に倒れていくからだ。


 サヤは能力 自然眼を発動させた。


 自然眼をとは、大気、大地、水、風を利用し、離れた様々なモノを見通す能力である。


「ヤバッ、神の先兵いるじゃん」


 サヤは困惑する。


「しかも、アイツ大気だな」


 目を凝らして、輝は観察をしている。


 輝の言葉の通り、大気だなとサヤは頷いた。


「アイツの相手するの大変何だよな~。とりあえずボスに連絡しねーと」


 サヤはボスに連絡をする。


 待つこと数分……


 その間、奈落落ちの兵士の体が破裂し始めた。


 サヤは電話を切ると、作戦を話す。


「ボスが増援を一人送るって~、それまで怪我しないように適当に大気を足止めしろだって~」


 サヤの言葉に一同は頷く。


「白馬はあんまり前線に出るなよ、死ぬから」


 了解と白馬はサヤに返して、疑問を口にする。


「大気とはもう何度も戦っているのですか?」


 サヤはウンウンと頷くと、話し始めた。


『ヤツは神の先兵なんだけど、自然神と呼ばれる一体で』


『今わかってることは、自然神は個の存在ではなく、核を壊せば倒せる』


『そして倒しても時間が経てば復活して暴れる』


「倒しても復活するんじゃ意味ないじゃないですか」


 白馬は不安な顔で問いかける。


 サヤは苦笑しながら、まあ、そうなんだけどっと返す。


「倒したら二ヶ月は復活しねーし」


 サヤは悪戯っぽい笑みで舌を出す。


「考えるよりも、今必要なのは行動違う?」


 サヤは白馬の背中を叩いた。


「男ならとか女ならとか、私は好きじゃないから言わない」


 サヤは強い眼差しで、白馬の目を見る。


「生まれたからには強く生きようぜ」


 サヤの言葉に白馬は頷き、白馬の不安はいつの間にか消えていた。


 UNAは待ちくたびれたようで、サヤに催促する。


「早く、行きましょう」


 サヤは頷き、音頭を取る。


「我等が神殺し、神を討ち滅ぼすモノなり」


 サヤ、UNA、輝は同時に言葉を重ねる。


 白馬は遅れて言葉を繰り返す。


 サヤは能力 跳ビ姫を使い一瞬で前線に移動した。


 UNAと輝は能力 縮地を使い前線に向かった。 


 僕も縮地を使うが、まだあまり早くは移動できない。


 大気の見た目は、巨大な中世のお城だった。


 大気の周りは空気が一切なく、空気を圧縮した塊を飛ばしてくるので、近寄ることができない。


 サヤはしばらく様子見をしていて、何か思いついたのか、能力 獣王を使った。


 能力、獣王は身体能力を格段に飛躍させる能力である。


 サヤに猫耳と尻尾が生えて、巨大は岩壁を持ち上げ大気にぶん投げた。


 岩壁は凄い勢いで飛んでいき、大気にぶつかると、大気の六分の一くらいが崩れたが、すぐに修復され始めた。


「やっぱり一筋縄にはいかないか~、まあ、ボスの命令は倒すのではなく足止めだし~」


 UNAは能力 闇衣を発動させる。


 闇衣はダメージ軽減、身体能力アップ、更に闇属性能力倍加。


 それに合わせて輝は能力 天使の言霊を発動させた。


 天使の言霊は言霊の力によって使い分けられる。


 例えば、守れと言えば、見えない障壁が生まれ。死ねと言えば人は死ぬ。


 身体能力強化と輝は叫んだ。


 サヤ、UNA、輝、白馬の身体能力が強化された。


 白馬はようやく前線に辿り着き、能力 金剛の守りを発動させた。


 金剛の守りは周りに強力な障壁を張る能力である。


 僕達は守りに徹して、小さな怪我もなく、増援である凪沙が到着した。

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