7 遠征前の下準備
模擬戦の閉幕から、白馬が目が覚めたのは二日後のことだった。
瞼を開けると、そこは病的なほどに白く染められた部屋で、僕は眠っていたようだ。
ベッドから身を起こして周りを確認をすると、白馬を心配そうに見つめる傭推と目が合った。
「やぁ、白馬君。お目覚めかい?うちの医療班は優秀だから、もう痛くないでしょ?」
怪我?そう言えば、ボスにぼこぼこにされたような?
「痛くはないですが?何だか記憶が曖昧で?」
「まあ、あれだけ派手にヤられれば、記憶をなくすよね」
少しくらい手加減してくれてもいいのに……。
「それはそうと、お目覚めしたばかりで悪いけど、ボスが話があるそうだから呼んで来るね」
「あ、はい」
話ってなんだろ?また何かの厄介事に巻き込まれないといいけど。
傭推はそう言って部屋の外へ消えた。二十分後…。ドアが開いて狂花が入ってくる。
「黒水、元気ー?」
手をブンブン振りながら入ってきた。白馬はゲンナリしながら模擬戦での不満を言う。
「模擬戦ですよね?僕を殺す気ですか!少しは手加減して下さい」
「殺す気なら死んでるよ。それより、聞きたい事があるんだろ。えーと、確か私のスリーサイズだっけ?上から84の…」
白馬は顔を真っ赤にしながら、慌てて否定の声を上げる。
「違います。僕が聞きたいのは、神についてです。ボスが知ってること全て教えて下さい」
「違うのか。まあ、良いけど。私の知ってることで良ければ教えてやるよ」
『まず、神とは運、才能、畏怖による創造、権力、徳の高い存在が崇拝されることによって生まれる』
『神とは奇跡による神格化、いわゆる偶然である。更に言えば運によるものだ』
『例えば、火を発明した人間が崇められるように、理解を越えた存在に対する畏怖の念を抱くこと、それすなわち神であると』
『大昔では、王や英雄を神格化する時代があった。神が敗れると悪神または邪神となり、勝利したモノが新たな神になる』
『私達の敵は、畏怖による創造によって生まれた神だ』
『畏怖による創造をわかりやすく話せば、小さい頃にトイレに行くのが怖いと感じたことはないか?』
『人間は闇に恐れ、光を称える』
『夜道を歩いて、暗闇に何かがいる、それを怖いと感じる。それも畏怖による創造だ』
『更に言えば、人間は自然という圧倒的な存在を感じ取って神は生まれた。これもまた畏怖による創造である』
『現代神は宗教における様々な神が居て、互いに信じる神が絶対であり、それ以外は悪神だと考える』
「私達の敵を簡単に話すと、いくつもの想像の集合体による神と戦うわけだ」
「でも、そんな敵に勝てるんですか?」
「勝算は無いかもしれない。しかし、挑まなければ負けはない。だが、勝つ事も出来ない」
「確かにそれはそうですが……」
「不安になるのはわかる。だから神の子を集めながら、お前には限界を越えてもらう」
限界を超える……この人簡単に言ってくれるなぁ。
「だが、その前にアンナプルナへ遠征に行く」
「遠征?僕が付いていって大丈夫なんですか?」
「もちろんお前を連れていくにはまだ早い。そのために遠征に行って大丈夫なレベルまで、お前には死ぬほど修行をつけてやる」
「……努力します」
「うん、頑張れ。今日はとりあえず、飯食って休め。明日から修行だ。私は寝る」
狂花はそう言って部屋の外へ消えた。
もし、ラノベやアニメの主人公なら、こんな時どうするんだろう?
僕は神について、もっと知らなければいけない気がする。
だけど、今はもう少し寝よう。白馬は布団を被り、眠りについた。
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