第18話 阿鼻叫喚


「はっ! 一体何が起きた!」


 チーボが目を見開いて不思議そうに辺りを見渡す。


「ごべぇぇぇぇぇぇ……」

「刀和! しっかり!」


 刀和は水道でゲロを吐いており、それを瞬が介抱している。

 嘉麻は白目をむいて床に倒れており、明らかにヤバい状態になっている。

 その一方で刹那は鼻血と涙を流しながら幸せそうに正座したまま両手を上げていた。


「はぁはぁ……ようやく目が覚めたか……」


 圭人が何故か荒い息をしながらチーボと英吾の二人を縛り上げていた。

 ちなみに英吾の方も白目をむいている。

 チーボは不思議そうに圭人に尋ねる。


「一体、何が起きたんだ?」

「ホモにキスされたお前がホモに目覚めて全員に襲い掛かったんだよ!」

「なんだそれ?」


 言っていることがわからないといった様子のチーボ。


「どうやらあいつにキスされると一時的に奴と同じホモになるみたいだな。厄介な能力だ」

「誰が得するんだそれ?」


 チーボは不思議そうにぼやく。


「最初にやられたのは嘉麻でお前のベロチューで白目むいたわ。次に食らった刀和は即座にゲロ」

「なるほど……それでなんで俺とこいつが一緒になって縛り上げられてるんだ?」

「最後に英吾を囮に俺がお前ごと縛り上げたからだ」


 疲れたようにぼやく圭人。

 チーボが申し訳なさそうに呟く。


「それでこいつ白目むいてるんだ…………」

「一番がっつりやられたからな」


 笑いながらウィンクする圭人。

 だが、両手を広げて鼻血をだくだく流している刹那を不思議そうに見ながらチーボがぼやく。


「床で泣いてたのになんでこんなことになったんだ?」

「それは俺もわからん。刹那は一回も襲われて無かったんだが…………」

「『干路の慈雨』食らったお母さん蜘蛛みたいになってるぞ?」

「何か物凄い幸せを感じたんじゃねーの?」

「どこにそんな要素があったんだ?」


 不思議そうにぼやくチーボと圭人と聞いてないふりする瞬。

 圭人がにやついて尋ねる。


「恋人の刹那が心配か?」

「当たり前だろ。だから早くこれをほどいてくれ」

「わかった」


 そう言って圭人はグルグルと縄を回して……


ギュッ


 

 不思議そうな顔をするチーボ。


「おいおい。さらに強く縛ってないか? これじゃ出られないだろ?」

「そりゃそうだ。より強く縛ったんだから」


 あっさりと答える圭人。


「何でそんなことするんだよ?」


 うろたえるチーボに冷静に答える圭人。


「仕組みはよくわからんが、まだ憑りついてるな? チーボはそんな事を言わないぞ?」

「くそぉ!」


 悔しそうに唸るチーボ。

 どうやら、正気に戻ったふりをしていただけのようだ。


「どこで気付いた!」

「それを教えると対処されるからな。絶対に教えん。さっさと出ていけ」

「糞がぁ!」


 ここから偽チーボは罵詈雑言を浴びせかけるのだが、圭人は涼し気な顔で聞き流していた。


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