第4話 短すぎた区切り
陣聖は、その老人を背負って、街をあとにした。
「すいませんな」
里に向かって山道を歩いていると、老人は言った。
「仕事を探しに来なさったのに」
「いいえ」
陣聖は目を反らした。
「かっとなった俺も悪いんで。まあ、また別の機会に探しますよ」
「すいませんな」
老人は謝ってばかりだった。
「そんなに謝られても」
「そうですな。すいません。ところで」
老人は感心したように言った。
「・・・あの武器は、すごいですな」
「あ・・・いえ、拾ったんです」
「それはまた」
「大したもんじゃないんですよ」
陣聖は自分から使っておいて、その話をしたくなかった。だから、話題をすり替える。
「・・・ところで、病気って何のことですか」
「はい?」
「いえ、ガルバナムの里の病気のこと、有名みたいですから」
「あなた、新参者ですか」
「はい」
「なるほどそれなら知らないはずだ」
老人はかすれた声で言った。
「・・・あの村に孤児が多いのはご存知ですか」
陣聖は目を見開いた。
「・・・はい」
「あの村は、成人した人々が指で数えるほどしかいない」
「・・・」
「成人すると、子供の頃から、からだに潜んでいた毒が活性化するのです」
老人は静かに言った。
「何でそんなものが」
陣聖は眉をひそめた。
「・・・私はそれをずっと研究していた。30年間の間」
「・・・」
そのとき、あの孤児院の女、アリアのことが思い浮かんだ。
「・・・それって、治る方法があるんですか」
「・・・現段階ではない」
老人は言った。
「私の知る方法では、それが適わないのです」
「・・・」
陣聖は押し黙った。
しばらくすると、里にたどり着いた。もう夜になっていた。
「ここでいい」
陣聖は村の端、山の近くにあった民家の手前で、老人を降ろした。
「では、これで」
「まあ、待ってください。けがの治療をしましょう」
老人は言った。陣聖は眉をひそめた。
「え?」
「私は医者です」
彼は微笑んだ。
「私はこの村で診療所を開いている」
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