食べればHP回復するんだっけ?

 【蓮斬(ディザスター・バースト) 】を5回与えたのだが、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫のHPバーは1本と半分を余す。


「ハァハァハァ…固過ぎんだろ?」


 毒ガスで覆われる中での攻撃を試みたせいで、オレのHPは大きく削られて、『18』を示していた。まだ空間を支配する毒ガスは消え去らない。また、HPバーの下の状態異常『毒』は表示されたままだ。


 アイテムストレージから【ハチミツ】を取り出し、それを飲み干す。回復するのはほんの『3』だけであった。


「これだけじゃあ足りない……」


 そう呟いては、【ハチミツ】をもう4つ取り出し、全て飲み干す。一時はこれでHPは『15』回復して、『33』を示していたのだが、少しずつまた減って行く。

 『毒』でのダメージでじわじわと減るHP…その速度に【エンジェル・ハート】のオート回復は間に合わないのだ。


 オレはHPが減るなり、【ハチミツ】を取り出しては飲み干す。の繰り返しを行いつつ、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の攻撃を回避し続けた。


 ≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫との戦闘を開始してから早、3時間が経過しただろう。

 とうとうアイテムストレージに保存していた【ハチミツ】は底を尽きた。


 オレのHPは『12』を指すところだ。そして、オレは岩の大きな突起物に身を潜め、傍(かたわら)から≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫を覗き込む。


「はぁはぁ…もう、ここまでか!?」


 するとその時、銀龍は翼を巻き上げて浮遊を始め、風を巻き起こす。


「ここであの攻撃はマズい!!」


 竜巻を発生させては、オレの方を睨み付けて発生させた竜巻を送り込ませる。

 咄嗟に身体を起き上がらせて左斜めへと……岩と岩の突起物の間に身体を突っ込ませるように、襲いかかって来る竜巻を回避した。


 その竜巻はオレが潜めていた岩の突起物から、その後ろの土壁をも破壊した。


「もう……HPも残り僅かだし……っうん?待てよ!」


 その瞬間、ある事が脳裏に浮かんだ。

 それはイノシシとの戦闘の時だ。モンスターを食べれば、HPが回復する!?

 ふと、そんな事を思い出していたのだ。それと同時に、オレの視線は≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫へと向けられた。

 さっきの攻撃のクールタイムだろうか。地面に着地しては唸(うな)っているだけだ。オレの中ではコイツの一挙一動見逃さないと凝視していたが、それに気付かなかった。いや、冷静を保つことが出来ていなかったのだ。来る攻撃、来る攻撃を回避して、隙あらば攻勢に出る。それしか考えられなかった。


 そして……


「うぉりゃぁーー!!」


 この光景を側(はた)で見る者がいれば、血迷ったと思われるのは必至だろう。


 オレは≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の左脚に齧(かぶ)り付いた。その瞬間、雄叫びが上げられた。

 だが、口は止まることなく銀龍の肉に歯を入れて行く。


「うわぁー、マズい!!つか舌が痛い!毒の味かな?」


 みるみるオレのHPが回復して行くのだ。しかし、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫は翼を巻き上げてはオレを振り解(ほど)こうと抗(あらが)う。


 すると、オレは脚から逃れて、地面に置かれた長い尾の上に飛び乗り、そこに齧り付く。


「よいしょっ!!」


 脚の肉を食いちぎり、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の脚には穴が空き、口から溢(こぼ)れた肉の塊はポリゴンの破片となって散り、また、肉を食いちぎり空いた穴は、ポリゴンの集合体となったのだ。


 ≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の肉はイノシシよりも血生臭く、毒が舌を刺激する。

 幾度も銀龍はオレを振り解こうと暴れたが、掴んだ腕は離すことなくコイツの肉を食って行った。

 


 そして、この熱戦?が1時間ほど経った頃だ–––。





『セカンド・ライフ』の中の人 1≫≫

おいおい!!見てみろよ!

また、アイツだ!


『セカンド・ライフ』の中の人 2≫≫

アイツ??

もしかして……


『セカンド・ライフ』の中の人 3≫≫

アイツって事は、

あの『クロユキ』に決まってるな!?

で、ソイツがまたなんかしでかしたのか?


『セカンド・ライフ』の中の人 1≫≫

正にその通りだ!!

『クロユキ』は今、【辺境の地】で銀龍と戦ってる!


『セカンド・ライフ』の中の人 2≫≫

なんだって?

オレが作ったあの銀龍か?


『セカンド・ライフ』の中の人 3≫≫

どうせ力尽きるのが目に見えてるだろ?

んで、今どんな感じ?


『セカンド・ライフ』の中の人 1≫≫

食べてる!!


『セカンド・ライフ』の中の人 3≫≫

…………


『セカンド・ライフ』の中の人 2≫≫

まてぇーい!!

食べてるって何をだよ!?


『セカンド・ライフ』の中の人 1≫≫

銀龍を!!


『セカンド・ライフ』の中の人 2≫≫

なんだって!?

銀龍を食べてるだぁ?

モンスターなんか食えるかぁ!?


『セカンド・ライフ』の中の人 1≫≫

いや、本当に食べてるんだ!!


『セカンド・ライフ』の中の人 3≫≫

もうさ……『クロユキ』の事は……

考えると頭痛くなるんだ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る