2つの報酬

 たったコーヒー一杯でクエストが発生なんて!?まぁ、でもあのメニュー見たら、大体の人は普通なら朝食を選ぶんだろうな!?なんぼ金が無くても朝食とコーヒーは【100ジェム】の違いだし。どう考えても朝食の一択だ。イコール……オレは普通ではないのか!?


 その通りであった。正しくこの「クロユキ」は普通ではないのだ。何度も言うが、一つのステータス項目に『極振り』してしまう時点で普通ではない。運営からすればイレギュラーでしかないのだ。イレギュラーであっても何度となくβテストで検証された結果が、『極振り』では……【STR】を『極振り』の結果…生命力・防御力【VIT】がゼロだと序盤迄は何とかなるのだが、進むに連れてそれが枷(かせ)となり、強力なモンスターと対峙した際には息絶えてしまう結果になった。

 続いては【VIT】『極振り』だ。【STR】 『極振り』の逆を言える。なんぼ生命力・防御力である【VIT】を上げてもだ、攻撃力が全くないと戦いで勝利を掴み取れないのだ。

 次に【AGI】『極振り』である。攻撃力を示す【STR】と生命力・防御力を示す【VIT】両方がゼロだと、回避はできるのだが、被ダメのダメージ量が多く絶命の確率が高く、そしていざ攻撃ともなれば討伐に至るまでの火力が出ないのだ。

 それ以外のステータス項目を『極振り』した結果も同じであった。


 この『セカンド・ライフ』に置いての最大のネックである『換金システム』…この魅力に惹かれて…このゲームタイトルの如く、新たな人生を選択してこのゲームに賭けたプレイヤーも少なくは無い。よって、この『セカンド・ライフ』には生活が掛かっているからこそ、そう簡単に、安易にHPゼロとなる訳にはいかないのだ。


 このことから、自ずとステータス項目にはバランスを考えてポイントを振るのが定石であると言える。しかしながら、何度も言うが「クロユキ」はどのMMORPGに置いてもイレギュラーな存在と言えるのだ。


 ましてや、エラーなのかバグなのか定かではないのだが、なんとレベル1でカウントストップになっている状態だ。経験値を得て、レベルアップを図りポイントを振って行くというのが出来ない。

 すなわち、一向に【AGI】だけが極振りされ他はゼロの状態を強いられるのだ。


 こんな状態が続く「クロユキ」には、強力なスキルを得て戦って行く他ないのだ。ここに来ての『クエスト発生』は都合が良かった。ましてや、アップデートを前にして、強化をしなくてはいけない状況だ。


 なにより、「クラウド」からの知らせでは、【エスゴール氷山】の先…【辺境の地】には隠しダンジョンがあるとの事だ。それに付け加え、このフロントに立つゴブリンの言う『クエスト』だが…氷山を超えた場所とは【辺境の地】を指しているに違いないのだ。


 「クラウド」の話とこのゴブリンの話には、どこか噛み合うものがある。そう思い立ってゴブリンの話に二つ返事で答えた。


 『隠しダンジョン攻略報酬』と『クエストクリア報酬』の一石二鳥を得ようと、この宿のドアを開けては、眩しい光が差し込む外へと駆け出した。


「まだ、アップデートまで時間はあるし…【辺境の地】までモンスター狩しつつ、金稼ぐかな!?それに、素材ももっと手に入れたいし!!」


 【AGI】〈+1575〉は伊達ではなかった。あの宿を出て【始まりの街】を後にし、ついこの前来た【森と泉】とは反対方向のこの深い森…【始まりの街】を出てから2、30分ほどで着いてしまったのだ。

 懐かしさを感じつつ、オレはある考えを抱いていた。


「そういえば、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫って『毒』を吐くんだっけ!?今の【毒耐性 小】じゃあ心許無こころもとないからなぁ…『毒』攻撃してくるモンスターでも狩するかな!?そしたら… 【毒耐性 小】から【中】とかにアップしねぇかな!?」


 そして、オレの足はその『毒』での攻撃するモンスターを探していた。この木々で覆い尽くされ、辺りは茂みに囲まれるこのフィールドでだ。


「ハチとかが1番いいんだけどな!?」


 そう言うなり、この森の奥を目指すのだ。


「状態異常の『毒』食らって、HP減ってもスキルでオート回復してくれるし!!」


 何度も言うが、この「クロユキ」はレベル1でカンスト、そしてこの『セカンド・ライフ』の中では恐らく最弱だろう。


「あぁ、こういう時はなぁ…シズのあのスキルが役に立つんだけどな!?今はいないもんな!!しょーがないかぁー!!」




♢♢♢♢♢


【あとがき】

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