ダンジョンボス討伐報酬は誰の手に?

 見事に隠しダンジョンボスを討伐できた2人は、ボスのドロップアイテムである赤い宝箱を目にしながら、こう呟いた。


「いっ時はどうなるかと思ったけど、なんとか…突破出来たな!?それにこの宝箱…めっちゃ中身気になるし!開けてみっか?」


「今回は…私じゃなくてクロユキさんが…あの防御壁があったから倒せたもんですし…それで怯んだ所に…」


 シズはモジモジと顔を火照させながら俯いていた。


「いやぁ、そんな事ないだろ?お前のあの一撃があったからオレがとどめ刺せた様なもんだしよ!?」

「いえ、本当にクロユキさんがこの宝箱開けてください!今回は良いですから」


 シズは後ろに一歩、二歩と後退りしながら言ったのだ。

 そんなシズの表情を眺めながら答えた。

「そうか?じゃあそこまで言うなら、お言葉に甘えて…」


 そう言い、手を宝箱に伸ばし開けてみる。すると箱の中から輝く光が灯され、あたり一面その光で満たされた。オレとシズはその輝きに目を奪われた。次第にその光は収まり、消えては箱の中身が見えて来る。立ち待ち、オレはその箱の中身に凝視すると、そこには装備品数種類と巻物2本が入っていた。


 それは漆黒色のマントの様な物と、金属で出来た防具の様な手甲と、そして革製のショートブーツ、2本対になっている小型ナイフの様な武器だ。それと羊皮紙で巻かれた巻物が2本ある。


「すっ、すっげぇ〜!!なんかめっちゃ入ってるし!」


 するとだ、もうすでに聴き慣れた音が頭の中で響く。そして白い半透明のパネルが現れた。


『スキル【エンジェル・ハート】と【最後の一撃】を取得しました』


【エンジェル・ハート】

発動後10分間の内に30秒毎にHPが2ずつ回復する。また、装備に装着するとオート回復する事が出来る。オート回復はHPが40以上失っている場合に限る。

取得条件

ある一定時間、敵からの攻撃を受けつつ被ダメゼロで耐えること。尚且つ、敵よりも半分未満のステータスが3つ以上あり、ある一定時間内に討伐する事。但し、敵はボス級に値する敵である事。


【最後の一撃】

回避能力・回避成功率が上昇する。ダッシュ力が大幅に上昇し、クリティカル率・弱点攻撃倍率が大幅に上昇する。

【AGI】2倍 『武器装備プラス値〈+30〉』

取得条件

スキル【断固たる決意】を所有し、自分よりもレベルが格上の敵に対して、尚且つ、【STR】値がその敵よりも半分未満の場合で、且つ、己の手によって討伐成功させる事。


「【エンジェル・ハート】って名前…まさに厨二の極みだよ!う〜ん…装備に装着したらオート回復が出来るのか?って、あれ?【最後の一撃】だってめちゃくちゃ良いスキルじゃねぇ?【AGI】2倍…極振りしてるオレにはぴったりのスキルだよ!!」


 箱の中にあった羊皮紙の巻物は消え去り、残った装備品に目を奪われた。


「この装備…かっけえーー!!色だって…黒だし、きっとレア装備に決まってるよ!!」

 目を輝かせ眺めるオレの瞳とは違い、シズの瞳はウルウルさせながらほんの少し濡れた瞳でオレの方を見て答える。


「良かったですね、クロユキさん!?私は…まだチャンスはあると思いますから…」


 2人してその中身にうっとりとして、凝視してしまうのだった。オレはすかさず【鑑定】と詠唱するのであった。


『アイテム【漆黒のアサシン 装備一式】を取得しました』


【ユニーク・唯一無二シリーズ】

初回ダンジョン攻略成功者に攻略成功報酬として取得できる装備一式であり、初回攻略成功者のみに贈られる装備品。

世界に一つしか無いと言われている装備品シリーズの中のひとつ。

『売買不可』

『譲渡不可』


「漆黒のアサシン?すげぇーネーミングセンスだな?惚れ惚れするわ!」


 横で見ていたシズも見惚れていた。


「この名前、それに黒い!もう、私の好みでしか無いですぅ〜…それを着て、私に襲い掛かって…きゃーー!!」


 シズはそういうと、顔を手で隠し覆っていた。


「はいはい、いつもの欲情タイムですね!?黙れ!!」


 空間はオレの一言で静まり返った。

 するとパネルの画面が切り替わったのである。


『漆黒のアサシン 装備一式』


【アサシン・ブレード(左右一式)】

身を隠しながら、素早い動きに耐久性を備えた装備。

漆黒のアサシン装備一式を揃えて装備すると、本来の力を発揮ると言われている。左右セットのみで装備可能。

『破壊不可能』『片方装備不可』

【STR+40】【AGI+30】

〈スキルボックス:【空】〉


【アサシンマント】

身を隠しながら、素早い動きに耐久性を備えた装備。

漆黒のアサシン装備一式を揃えて装備すると、本来の力を発揮ると言われている。

『破壊不可能』

【AGI+30】

〈スキルボックス:【空】〉


【アサシンブレード専用収納格式手甲】

身を隠しながら、素早い動きに耐久性を備えた装備。

漆黒のアサシン装備一式を揃えて装備すると、本来の力を発揮ると言われている。

『破壊不可能』

【AGI+30】

〈スキルボックス:【空】〉


【飛躍の黒龍ブーツ】

身を隠しながら、素早い動きに耐久性を備えた装備。

漆黒のアサシン装備一式を揃えて装備すると、本来の力を発揮ると言われている。

『破壊不可能』

【AGI+30】

〈スキルボックス:【空】〉


 まさに「クロユキ」専用装備であった。

 装備一式全てが【AGI】を強化となっており、この【AGI】極振りである「クロユキ」にしかこの装備の本領発揮は困難であろう。

 むしろ、この「クロユキ」だからこそ、この装備の本領発揮が出来るのである。


「すんげぇ装備手に入れちゃったよ!?オレついてんのかな?」

「本当、これクロユキさんの為の装備じゃ無いですか?」


 得意そうに2人して談笑しながら、このダンジョンを後にしようと、また【始まりの街】に戻る事にする。


「装備にスキル装着出来るらしいが、【始まりの街】に着いてからにするか?」


 しかし、Lv.1カンストである–––。


 こうして、2人揃って?否、シズはオレの後ろ数メートル離れたところから追い掛けながら【始まりの街】を目指し、歩いていくのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る