第33日目 もう1人の協力者
「ベソ、ノッポ。何か良いアイテムは開発できた?」
『管理事務局』のドアを開けながら私は中へと入る。
するとそこには必死の形相でPCに向かうベソとノッポの姿があった。2人供私が部屋の中に入って来た事にすら気が付いていない。
「おお~。2人供頑張っているよう・・・ね・・・ん?」
私は2人のPCを見て・・・絶句した。てっきりプログラミングを必死で組んでいるのかと思ったの、何故か彼等はPCゲームで遊んでいるではないか。
ベソの方はアクションRPG、そしてノッポの方はサバイバルシューティングゲームである。
これから命懸け?の戦いに臨まなければならないと言うのに、2人は真剣な眼差しでゲームプレイに乗じている。
「ちょっとっおっ!!何ゲームなんかやって遊んでいるのよっ!私達はこれから何をしに行くか知っていてそんな事をしてるの?!」
すると真剣にゲーム画面を見ながらノッポが言う。
「ええ、良く知っていますよ。エリスさん。今何故俺がこのゲームをプレイしているかですよね?答えなんか簡単な事ですよ。どのライフル銃が一番打ちやすいか研究をして、それをこれからゲームプログラムに打ち込むからですよっ!よしっ!これでフィニッシュッ!!」
ノッポはバシバシバシバシッと見事な指裁きでライフル銃を連打する!そして全てのゾンビは倒され、画面には『your win!』との表示がされる。
「おおっ!凄いっ!勝ったっ!」
パチパチパチと思わず拍手をすると、ノッポが前髪をかきあげながらキザに言う。
「フッ。俺にかかればこんなモンですよ。」
「成程ね~さて、でベソの方はどうかな・・・。」
ベソの方は今まさに大詰め。最後のラスボス戦に挑んでいるところであった。ゲーム画面を覗きこみながら私はベソに尋ねた。
「ねえ、ベソは今何してるの?」
「しっ、お静かにエリスさん。今からラスボス「ゴッドオブディストラクション」を3人でトライアングル・スクランブルアタックで倒す場面なのですからっ!」
なるほど。どうやらベソは今からやたらめったら長ったらしいラスボスを、なんだかよく分からない攻撃で倒すところなのか。
「よっしゃーっ!かかってきやがれえっ!!」
最早まるで別人ではないかと思わせるような豹変ぶりでベソは目にも止まらぬ速さでカーソルをバシバシと叩き続け、見事な連携プレーでラスボス・・ゴッドオブ・・なんだっけ?をスクランブルなんとかで木っ端みじんにしてしまった。
「おお~っ!これまたおみごとっ!」
パチパチと拍手をする私とノッポ。すると、ベソが言った。
「どうですか?覚えましたか?」
「へ?何を?」
呆気にとられる私。
「何の事だ?」
ノッポも首を傾げる。
「だから、今の連係プレー攻撃の事ですよっ!」
何故かベソがダンッと拳を握りしめ、テーブルを叩く。その迫力に思わず押され、ビクリとなる私とノッポ。
ぐぬぬぬ・・。この私をビビらせるとは中々やるじゃないのよ。ベソのくせに。
「おい、何の事なんだよ。さっぱり分からないよ。」
ノッポがベソに質問した。
「だから、今ゲームで見せたトライアングル・スクランブル・アタックの事だよっ!3人で同時に違う技を繰り出し、3方向から敵に向かって攻撃を放つんだよ!ちなみに彼らの持つ攻撃アイテムはステッキに、ボウガン、ロッドの3つの武器で全て遠距離攻撃用だから、敵に近付かなくても攻撃が出来るんだ!」
「「・・・・。」」
思わずベソの話に固まる私とノッポ。
「ねえ・・・まさか・・・さっきの攻撃・・・私達に出来ると思っているの・・?」
震えながらベソに声を掛ける。
「出来ると思っているの?ではなく、出来ないといけないんですっ!!」
「「はあああ~っ?!無理に決まってるでしょっ!!」」
綺麗に声を揃える私とノッポ。しかし、それでもベソは叫ぶ。
「駄目ですっ!やるんですっ!そうでなければ・・・我々は全滅ですっ!!」
鼻息を荒くして興奮しまくるベソ。
あ、なんだかベソの目が座っちゃってるよ。もうその目には狂気が宿っている。
とうとう恐怖のあまり現実逃避して・・・頭がおかしくなってしまったのかもしれない。
「ねえ、どうしようか・・・ベソの事・・・。」
「そうですねえ・・・。放っておいて、今の症状が収まるとも思えないし・・・。」
私とノッポは相談を始めた。
「でもきっとベソはプログラマーの鬼です。今まともじゃなくても、きっと攻撃用アイテムをプログラミングしてくれるはずです。」
「そう、言われてみれば、今凄い勢いでベソはタイピングしているものね?」
チラリとベソを見れば、まるでキーボードが壊れてしまうのではないかと思われる程のハイスピードでタイピングを続けている。
「それで、ノッポは何をするの?」
「俺は先ほどプレイしたサバイバル・シューティングゲームで一番使い勝手が良かったライフル銃をプログラミングしてアイテムボックスにいれますよ。何、任せておいて下さいッ!」
ノッポは親指を立ててポーズを取る。
「よし、それじゃ後の事は2人に任せるわっ!私は宿舎に戻って『アルハール』へ行く準備をするからねっ!いい?2人供、そっちの準備が終わったら私に連絡入れてね。よろしくっ!」
そして私は『管理事務局』を後にした。
時刻は午後3時を過ぎていた。
アルハールへ行く為の準備をしていると、突然ドアがノックされる。
コンコン。
うん?誰だろう・・・?まさかベソとノッポなのだろうか?
「はい、今開けますよ。」
ドアの前に行って、ガチャリと開けて・・・意外な人物がそこに立っていたので私は思わず目を見張ってしまった。何とそこに立っていたのは、燃えるような真っ赤な髪の青年―。
「え・・?ひょ、ひょっとして・・・オリバー様・・・ですか?」
「ああ、そうだ。エリス。お前に会うのは何だか随分久しぶりだな。」
そして・・・オリバーの頭上に浮かぶ好感度は・・・400を差していた。
「あ、あの・・・一体突然どうされたのですか?おまけにその背中に背負っている大きな荷物は・・・?」
「ああ、これか?中には様々な魔法アイテムや武器、防具が入っている。」
「え?一体それはどういう・・・?」
「いや、実は俺とトビーは昔からの知り合いなんだ。今から1時間程前だったか・・?トビーが泣きながら俺の寮へ駈け込んで来たんだよ。それでメイドのエリスがモンスター討伐の為に『アルハール』へ向かうのに、誰一人『白銀のナイト』達は付いて行かないと言ってるから、何とかして欲しいと俺に泣きついて来たのさ。」
「は、はあ・・・。」
「それで俺があいつらの代わりにお前に付いて行く事に決めたのさ。」
「そうですか・・・・って・・・ええええ~っ!!ほ、本気でそんな事言ってるんですかっ?!どんな危険があるか分からないんですよっ?!」
「ああ、だから俺がお前に付いて行く事に決めたんだ。何、安心しろ。俺は『白銀のナイト』では無いが、この学園の騎士団長を務めているんだから俺に任せておけっ!」
ドンと自分の胸を拳で叩くオリバー。突然の協力の申し出だが・・・・うん、受けるに決まっているでしょうっ!
「有難うございますっ!オリバー様っ!一緒に力を合わせてモンスターを討伐しましょうっ!」
そして私とオリバーはガシイッと握手を交わすのだった。
フフフ・・・見ていなさいよ。オリビア。必ずモンスターを倒して『魔鉱石』を手に入れて奪われた『白銀のナイト』達の好感度を奪い返してやるんだからねっ!
私は心に誓うのだった—。
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