第27日目 世界がひっくり返った休暇日 ③
ベソとノッポと別れた後、腕時計にはめてある液晶パネルをタップした。
さて・・フレッドは絶対にオリビアと一緒にいるはず。そしてこれは恐らく自分の勘ではあるが、コンピューターウィルスもオリビアのいる付近で発生するはず・・。
フフフ・・・つまり、好感度を下げられたキャラの居場所を探れば、ウィルス駆除も出来るという事・・・。これなら効率よくゲームを攻略出来そうだ。
さて、フレッドは今一体何処に・・・・?
するとフレッドのアイコンの隣に現在の彼の居場所が表示された。
「え~と、今フレッドは『ラクス』にいるのか・・。どんな所だったっけな・・・?でもまあいいか。取りあえず行ってみようかな?」
「エリス、何処へ行くんだって?」
突如、背後から声を掛けられた。その声は・・・。
振り向くと、そこにいたのは同じ従業員であり、攻略対象の・・・・あれ?今も攻略対象なのかな・・・・?ジョージであった。
「あ、おはようございます、ジョージ。」
振り向いて挨拶をすると・・・彼の頭上には好感度を表すハートのマークがばっちり浮かんでいる。
チッ・・・・やはりジョージはまだ攻略対象なのか・・・?
思わず心の中で舌打ちする私。
「ああ、エリス・・・。今日もとっても素敵な服を着ているな。うん、すごく良く似合っている・・・。ところで何故そんなに眉間にしわを寄せているんだ?折角の愛らしい顔なのに、勿体ない・・・・。勿論お前はどんな表情でも・・・その、何というか・・す、素敵だ・・。」
朝っぱらから顔を赤らめて話しかけてくるジョージ。しかし・・・そうか、今の私はしかめっ面をしていたのか。でも舌打ちをしていなくて良かった・・・。
それにしても・・・。
「ジョージさん。今日は何処かへお出かけするんですか?」
「ああ。実はエ、エリス・・・。お前と何処かへ一緒に出かけようかと思って誘いに行こうとしていたんだ。運が良かったよ・・・。だって偶然ここでお前と出会う事が出来たんだからな・・・。これってやっぱり運命・・なのかもな?」
嬉しそうにジョージは言うが、あいにくこちらはちっとも嬉しくない。なにせ今からオリビアからフレッドの好感度を奪いに行かなくてはならないのに、男連れで行くなんて正直あり得ない話だ。
うん?でも待てよ・・・?確かフレッドの現在私に対する好感度は100だった。私が上げたフレッドの最大好感度は200。オリビアに100奪われたとして・・・それに好感度を奪われてもまだ1日しか経過していないから・・・・うん、私の感としては多分オリビアとのフレッドに対する好感度は100位と見ておこうかな?
それに・・・・確かフレッドは攻略対象の中でも嫉妬深い性格だった。もし仮にまだエリスに対する好意が僅かでも残っていれば・・・?
よし!ひょっとするうまくいくかもしれない。それに・・・・。
私はジョージの顔をじっと見つめた。・・うん。彼は『白銀のナイト』並のイケメンだ。フレッドの嫉妬心を煽るには・・・丁度良い相手かもしれない。
「どうした・・・?エリス。さっきから腕組みして難しそうな顔をして俺の顔をみているが・・?」
ジョージが不思議そうな顔をして私を見下ろしている。
「あの・・・ジョージ・・。それでは私、行ってみたい場所があるのですが、一緒に来て頂けますか?」
「エ・・エリス。それはひょっとしてデートの誘い・・・と考えてもいいのか?!」
ジョージが頬を染め、目を潤ませながら見下ろしてくる。え・・・?デートの誘い?
そうか・・・そうなってしまうよね?
「は、はい。一応・・・デートの誘い・・・なんですが・・どうでしょうか・・?」
両手を胸の前で組んで上目遣いにお願いしてみる。うう・・・何故私がこんな真似を・・・・。
「よ・・・よし!すぐ行こうっ!今すぐ行こうっ!それで・・・エリスは何所に行きたいんだ?」
ジョージは私の両手をガシイッと握りしめるのだった-。
「そうか。エリスは『ラクス』に行きたいんだな?うん。まさしくあの場所はデート場所にぴったりの場所だ。」
2人で電車に乗りながらジョージは腕組みをしながらウンウンと頷いている。
え・・・?そうなんだ・・・。ゲームの中ではあまりあの『ラクス』という場所は殆ど出てこなかったから正直言うと、どんな場所か私自身良く分かっていなかった。
なので電車に乗る前に各名所のガイドブックのパンフレットを貰って来たので目を通してみた。
すると『ラクス』とう場所は自然環境に恵まれた観光地らしく、駅を降りて5分程歩けば美しい湖がある自然公園があるらしい。園内にはオープンカフェや、ボート、釣り、冬は天然のスケートリンクへと変化する。
まさにカップルのデートスポットと言うべき場所だ。
そして電車に揺られること約30分-。
私達は『ラクス』の駅へと降りった。
「さあ、では行こうか?エリス?」
何故か甘ったるい声で微笑みながら言うジョージは私の右手をしっかり恋人繋ぎでホールドして歩き始める。
それと同時にグググッと上がってゆく好感度ゲージ・・・。
そして、公園に到着したころには・・・。
え?嘘だよね・・・?今・・・ジョージの好感度が・・・300に上がってるんですけどっ?!
見間違いではないかと思い、思わず左手で目をゴシゴシこすってみるが、やはりジョージの好感度の数値は300を指している。
ま・・まずい・・・っ!ど、どうしよう・・・。このままでは・・デートが終わる頃には・・・好感度がマックスになってしまうかもしれないっ!
「どうした?エリス。目をゴシゴシこすったりして・・・目にゴミでも入ったのか?」
ジョージが不思議そうに尋ねてくる。
「い、いえ。何でもありません。」
「いや。ちょっと俺に見せてみろよ。」
そう言うと、ジョージは私の顎を掴むとグイッと上に向けて自分の顔を近づけてきた。
う・・・。きょ・・・距離が近い・・っ!
その時・・・前方から何やら強い視線を感じ、思わずそちらを見ると、何とフレッドがオリビアとデートの真っ最中であった。
そして何故かフレッドは怒りを込めたような目で私を見つめている?ような・・・。
ひょっとすると・・・完璧にフレッドに勘違いされているかもしれないっ!
これを吉ととらえるか、凶ととらえるか・・・。
その時、ジョージが言った。
「う~ん・・・。別に目にゴミは入っていないようだが・・・?」
そこまで言いかけて、突然ジョージの顔がトマトのように真っ赤に染まる。
「うわあああっ!す、すまんっ!エリスッ!」
慌てて私の顎から手を放すジョージ。
「いえ、大丈夫です・・・。お気になさらずに。」
言いながら先ほどのフレッドとオリビアのいた場所をちらりと見ると、2人の姿は消えていた。
よし・・・どのみちきっと今日もコンピュータウィルスは出現するに決まっている。
オリビアとフレッドの後を追うんだっ!
しかし、後を追うと言っても2人の姿を見失ってしまったし・・・。
一体2人は何所へ行ってしまったのだろう?私はこの場所は全く初めて来た場所なので、この広い園内の何所へフレッドとオリビアが向かったのか、皆目見当がつかない。よし、かくなるうえは・・・・。
私はまだ顔を赤くしているフレッドを見上げると言った。
「ジョージ、ここのデートスポットの定番と呼べる場所へ急ぎましょうっ!」
きっと、ジョージなら2人の行きそうな場所の心当たりがありそうだ。
「な・・何だって?エリス・・・。そ、そんなに俺とデート気分を味わいたいんだな・・・?よ、よし!それじゃ今すぐ恋人たちの定番のデートスポットへ向かおう!今すぐにっ!」
そして私の右手を再びホールドすると、ジョージが足早に歩き始めた。
う~ん・・・どうやらジョージに思い切り勘違いされているようだ・・・。
何とかジョージの好感度をマックスにする前に、フレッドの好感度を奪い返さなければ・・・。
先行きが不安になる私であった-。
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