第22日目 リアル・悪役令嬢の脱出ゲーム開始②

「な・・何でなの・・?何で私がこんな目に遭わなければならない訳・・・?いや、そもそもどうして私は簡単にオリビアに捕まってしまったのよ?一緒にいた3人のナイト達は?私がオリビアに捕まるのをみすみす黙って見ていたって言うの?

ハッ!そ、それとも・・・はじめからグルだった・・・?仲良くなったと見せかけて私をオリビアに突き出したとか・・・?」


考えれば考えるほど、その可能性が高まって来た。そういえばあの3人は好感度が見えなかった。最初から彼等のステータスをオープンにしておけば良かったのかもしれないが、大体いつもそんな事をしなくても好感度が表示されるようになっていたから、すっかり油断していたのだ。


「お・・・覚えていなさいよ・・・アドニス、エディ、エリオットめ・・・ここを無事に出られたら、私の必殺技『害虫駆除』の<神の裁き>を一発お見舞いしてやるんだからね・・・!」


おまけに・・・何故ゲーム制作会社も私が脱出する為のアイテムを部屋の何処かに隠すのよ。そんなまどろっこしい事をするくらいなら、チョイチョイとプログラムをいじって出口の一つや二つ作ってくれればいいじゃないの!


「あ~駄目だ、嘆いていてもしょうがない・・・。ここは一刻も早くアイテムを見つけ出して脱出するしかないな・・・・。」



溜息をつくと、またピロリンと音が鳴って液晶画面が表示され・・私は思わず切れそうになった。


『リアル・悪役令嬢の脱出ゲーム プレイしますか?』


 1 はい

 2 いいえ



ムッカ~ッ!!


「な・・・何なの・・・!わ、私をおもちゃにして遊びたいわけ・・・?私を助ける気がある訳?もはやここまでくると意図的な悪意を感じる・・いや、悪意しか感じないわっ! 『はい』に決まってるでしょーっ!!」


すると・・私の返事と共に・・・不思議な事が起こった。それまで広かった大理石の部屋の広さが突然小さくなった。例えば30畳ほどの広さの部屋が・・・突如8畳位の大きさになった・・・感じ?あれ程大きかったベッドも1人用のシングルベッドのような大きさに変化しているし・・・。ははあん・・・これは・・きっと彼等なりの気遣いなのかもしれない。余りにも部屋が広すぎると何処を探して良いか分からなくなるから。部屋の広さを縮めてくれたのだろうか・・・?


すると液晶画面が表示された。


『これよりリアル・脱出ゲーム<大理石の部屋からの脱出>のプレイを開始して下さい。尚、使用できるアイテムは手に入れた時に液晶画面が表示され、役立たないアイテムの場合は液晶画面が表示されません。アイテムの中には単独で使用する場合と、組み合わせで使用する場合があります。一度使用したアイテムは消えてしまいます。それではこれより出口を発見し、部屋から脱出して下さい。健闘を祈ります。』


「いよいよ・・・ゲーム開始って訳ね・・・。それじゃまずは・・・手始めに・・。」


当たりをキョロキョロ見渡すと、クローゼットを発見した。


「そうよ!まず最初は着替えよっ!パジャマ姿では脱出出来ても恥ずかしいもの。」


バタンとクローゼットを開けるも中は空っぽ。え・・・?その代わり、発見したのはドアの持ち手の部分だった。

すると液晶画面がピロリンと開く。


『ドアの持ち手を手に入れた』


そして液晶画面の右端にアイテムボックスと言う表示が現れ、ドアの持ち手のアイコンがボックスの中に収まった。え・・?

だけど私の手にはドアノブは握りしめたまま。そうか、手に入れたアイテムは液晶画面に吸い込まれる訳では無いのか。これは単に何を手に入れたのか、分かりやすくするためなのか。

「よ、よし・・・片っ端から調べて、どんどんアイテムを手に入れなければっ!」


次に私が目を付けのはベッドの下。大抵こういう隠れた場所に何かものが隠されているんだよね・・。そして出てきたのは何故か・・・・・。


「うん?脚立・・?」

はて?こんなもの・・・ほんとに役立つのだろうか?しかし、その心配は稀有だった。

液晶画面が表示されて、アイテムボックスに脚立が収納されたからだ。


「よ、よし・・・。この脚立をベッドの下から引っ張り出して・・・・。しかし、重たいな・・・。」

ブツブツ文句を言いながらも何とか脚立をベッドの下から引っ張り出すと、その下になんと収納扉らしきものが見えた!


「あ!あれは・・・ひょとして凄い何かが入っているのかもしれない!よし!ベッドを動かしてみれば・・・・!」


グヌヌヌ・・・・。ハアハア・・・。


「だ・・・駄目・・。ベッドが重すぎて動かせない・・。何でこんなに重いの・・・。ん・・・?」


その時、私ベッドの足部分を見て衝撃を受けた。


「う、嘘ッ!大理石の床に固定されている?!」


なんとこのベッドはよく見ると足の部分と大理石がしっかり固定され、とてもうごかせる代物では無いことが分かった。


「な・・・成程・・・ひ、人をここまで疲れさせておいて・・こんな小癪な真似をしてくれるのね・・・。」


ハーハと荒い息を吐きながら悔しそうにベッドを見つめる。

こうなったら・・・意地でもあの収納扉を開けてやるからね!

ベッドの布団やらシーツやらをまくって、収納扉の様子をよく見ると持ちて部分に丸い輪っかがついている。ははあん・・・多分あの輪っかに長い棒か何かを通して上に持ちあげれば開けられるかもしれない。

よし・・・それなら・・・


「棒!長い棒の様な物は何処っ?!」


しかし、いくら探しても棒らしきものは見つからない。


「ふう・・・無いなあ・・。」


その時、何気なく壁に掛けてある風景画が斜めになっている事に気が付き、直そうと壁から絵を外した時に、何と扉を発見したのである。しかし、扉になってはいるものの、肝心の持ち手が無い。


「あ!もしかしてこれを使うのかな?!」


私は最初に手に入れた持ち手を部屋に備え付けてあったテーブルの上から持って来ると、よく観察してみた。

この持ち手はネジのようになっていて、グルグル回しながら差し込めるようになっている。


よ、よし・・・試してみよう。

ごくりと息を飲むと私は持ち手をネジ穴に差し込んでグルグル回していく・・・。

おおっ!ネジ穴に入って行く!ビンゴだっ!

そしてついに壁と一体化している扉に持ち手を付ける事が出来た。

ドキドキしながら開けてみる。


カチャ・・・・。


「ん?中に何か入ってる・・・?」


何やら二つに折りたたまれた紙切れが入っているので取り出してみる。ひょっとして暗号かな・・・・?

ぺら

そこには大きく、こう書かれていた。


『ハズレ』


ブルブルブル・・。

思わず怒りで全身が震えてきた。何、これ。信じられない。脱出ゲームでこんな展開ありえないんですけどっ!人が真剣にアイテムを探しているのに、おちょくって・・・!


私は思わず真上を見て叫んでいた。


「覚えていなさいよーっ!!このゲームをクリアしてこの世界から抜け出したら訴えてやるんだからねーっ!!」


と、その時・・・天井に近い壁に細長い棚が付いているのが目に入った。うん?あれは何だろう・・・?


「う~ん・・・とてもじゃないけどあんな高い場所、届かないな・・・。あ!そういえば・・・脚立があったじゃないっ!」


重たい脚立を棚が見える位置まで運ぶと、早速脚立を広げて、おっかなびっくり上る私。


「う・・・こ、怖いな・・・。気を付けて登らないと・・。」


慎重に上って、ようやく棚が見えた。一体この棚の上には何が乗っているんだろう?

するとそこには柄の長いマジックハンドが乗っているではないか!


「あ・・・あったああっ!これ、これを探していたのよ!マジックハンドーッ!!」


マジックハンドを握りしめると、ピロリンと音楽と同時に液晶画面が表示され、アイテムボックスにマジックハンドのアイコンが映し出される。


「よし、早速・・・ベッド下の収納棚を開けるわっ!」


そしてそろそろとマジックハンドを持ちながら慎重に脚立を降りると、早速ベッドの下に潜り込む。

マジックハンドをあの輪っかに引っ掛けて・・・。よし!引っかかった!

そして蓋を外し、念の為に蓋も手元に引き寄せてみる。


「うん・・・?何、これ?」


見ると蓋部分には矢印が描かれている



「何?これ・・・暗号・・・?まあ、いいや。それよりも収納庫の中身はっ?」

マジックハンドを収納庫の下に入れてハンドルをカチカチ握って中をあさってみる。

お?何か手ごたえありっ!

マジックハンドをしっかり握りしめ、ゆっくりベッドの下から引き抜くと、きんちゃく袋が掴まれいる。


「さてさて、中身はなんだろな~。」


するとそこには4方向に押せる押しボタンがついたリモコン?らしきものが中に入っていた。


「え・・?何だろう・・?どこかで見たような・・・。あ!これって・・・!」


先ほどの収納庫の蓋をよく見てみる。


「ひょっとして・・・この押しボタンは・・・この蓋の順番通りの矢印の方向に押せって事なのかな?!」


よ、よし・・・やってみよう。

ゴクリと息を飲むと私は、ボタンを順番に押していく-。

すると背後の壁がガコンッと動く音が聞こえた。


ひょ・・・ひょっとして・・・?

ゆっくり後ろを振り向くと、すると今まで壁だった部分がドアになっており、しかも大きく開け放たれていた!


「やったー!つ、ついに・・・脱出成功だーっ!」


私は両手を上げて、外へ飛び出した先は・・・何と男性用更衣室だったのだ―。

しかもよりにもよって『白銀のナイト』が勢ぞろいして正に着がえの真っ最中。


「「「「「「「エリス・・・・・?」」」」」」」


7人全員が突然現れた私を見て呆然としている。

え・・・?私に注がれる14個の視線・・・。


「し・・・・失礼しましたーっ!!」


私は裸足にパジャマのまま、その場を逃げ出したのは言うまでもない!

駄目だ駄目だ駄目だっ!きっと痴女に間違われたに違いないっ!しかもあの場にはエリオットもいたッ!今度こそ・・罰を与えられるかもしれない・・・。

うう~っ!!どういう事よッ!きっとこれは・・・


オリビアの仕業に違いないーっ!!


そして私は自分の部屋に辿り着くまで走り続けた-。



『リアル・脱出ゲームクリア成功おめでとうございます!報酬として、メイドレベルが30に上がります。スキルポイントを10000ポイント差し上げます。お疲れさまでした』

















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